元
頸動脈解離(Carotid Artery Dissection, CAD)は、特に若年層で脳卒中を引き起こすおもな原因であり、重大な合併症や社会経済的な負担をもたらす。
通常、CADに対しては抗血栓療法が標準的な治療法とされているが、再発や症状が悪化した場合の最適な治療法については明確に定まっていない。
そこで、保存的治療(薬物療法)または手術治療(外科的治療)を受けたCAD患者の特徴と治療結果を比較し、どちらの方法がより効果的であるかをしらべてみたそうな。
2014年11月から2021年12月までの期間にCADを発症した23人の患者を対象に、後ろ向きにデータを収集した。患者の年齢や性別、血管リスク因子、症状、画像検査結果、治療内容、フォローアップの情報を収集し、分析を行った。治療群間の比較を公平にするために、傾向スコアマッチング(Propensity Score Matching, PSM)という手法を用いて、患者の基礎情報の違いを調整した。
次のことがわかった。
・患者の平均年齢は46.4歳で、フォローアップ期間は中央値で12ヶ月(3〜90ヶ月)であった。
・23人の患者のうち、7人は保存的治療に反応しなかったため、血管内治療(ステント留置など)または開放手術を受けた。
・手術を受けた患者では、100%の血管開存率が確認され、症状の改善が見られた。
・傾向スコアマッチングにより、治療群間の基礎データの違いを調整したが、脳卒中の再発率に関しては保存的治療と手術的治療の間に有意な差は見られなかった。
頸動脈解離に対しては、保存的治療と手術治療のいずれも良好な結果が得られる可能性がある。保存的治療が初期の治療として有効である一方、反応しない場合には手術が安全かつ効果的な選択肢となる可能性がある。しかし、この結果を確定させるためには、より大規模で無作為化された臨床試験が必要である、
というおはなし。
感想:
頸部動脈解離の手術根拠になるまともな前向き研究は世にほとんど存在しない。
起きるかもしれない脳卒中の危機をあおられ予防的に行う治療として、手術ほど危険で分の悪い選択肢はない。
ちなみにステント留置すると脳卒中または死亡が『7%』に起きる↓。