元
脳動静脈奇形(AVM)は、脳内の血管が異常に絡み合った状態で、時に破裂して脳出血を引き起こす危険がある。
多くのAVM患者は、破裂のリスクを軽減するために手術や放射線治療を受けるが、一部の患者は保存的治療、つまり治療を行わずに経過を観察するという選択肢が取られる。
そこで、治療を受けずに経過観察を選択した患者がどのような経過をたどったのかをくわしくしらべてみたそうな。
これは。脳動静脈奇形の治療を調査するTOBAS(Treatment of Brain Arteriovenous Malformations Study)という大規模なプロジェクトの一部である。
TOBASはランダム化比較試験(RCT)と複数の前向きレジストリを組み合わせたもので、すべてのAVM患者が参加できる。治療を行わず保存的に経過観察をされた患者のデータが対象となった。
主な評価項目は、AVMに関連した死亡や日常生活に支障をきたす依存状態(modified Rankin Scale [mRS] > 2)が10年内に発生するかどうかである。副次的な評価項目には、脳出血と非出血性の神経症状が含まれている。
次のようになった。
・2014年6月から2021年5月までに、1010人の患者が研究に参加し、そのうち49%(498人)は経過観察として登録された。最終的に434人の患者が解析対象となり、その87%(378人)が未破裂のAVMであった。
・また、52%(195人)は低グレード(Spetzler-MartinグレードIまたはII)の未破裂AVMを持つ患者であった。
・平均3.2年間の追跡期間中、主な評価項目である死亡または依存状態は434人中23人(5%)に発生し、発生率は100人年あたり1.7件であった。未破裂AVMの患者では100人年あたり1.1件、低グレードの未破裂AVMでは0.6件と、比較的低いリスクを示している。
・一方、脳出血は434人中35人(8%)に発生し、100人年あたり2.6件の発生率であった。破裂したAVMを持つ患者、または高グレードのAVMを持つ患者では、出血のリスクが高かった。
保存的に経過観察された未破裂AVM患者の多くは、10年以内に大きな問題を経験することなく経過している。しかし、過去に破裂経験がある患者や、AVMが脳の深部にある場合はリスクが高まることが明らかになった。この研究は、AVMの治療選択を検討する際に、保存的管理が有効な選択肢であることを示唆しているが、個々のリスク要因を考慮した判断が重要である、
というおはなし。
うごくよ
感想:
私『ARUBAトライアルはAVMの手術介入に確かな根拠がないことをあきらかにしました。今回の結論もそれを補強するものですね。』
AI『その通りだ。ARUBAトライアルは、未破裂脳動静脈奇形(AVM)に対する手術介入に確かな根拠がないことを示す重要な研究であり、今回のTOBAS研究の結果もその結論を補強する形となっている。
ARUBAトライアルでは、未破裂AVM患者に対して手術を行った場合、短期的には手術がかえって脳卒中や重大な障害リスクを高めるという結果が出ており、保存的治療が推奨された。この結果は、特にリスクが低い未破裂AVM患者においては、手術介入の効果に対する疑問を強く投げかけるものだった。
今回のTOBAS研究でも、未破裂AVM患者を保存的に経過観察した際の出血リスクは年間約2.6%と示されており、これは高リスクではあるが、手術介入による即時的な合併症リスクや障害リスクを考慮すると、慎重な治療方針が必要であることを再確認させるデータといえる。』