元
脳卒中は全世界で多くの人々に影響を与える重大な健康問題であり、その予防と管理が重要である。
食事や栄養素の摂取が脳卒中のリスクに与える影響は広く研究されてきたが、観察研究には「交絡因子」や「逆因果関係」の影響を受けるという限界がある。
これらの問題を克服するために、最近の研究では「メンデルランダム化(MR)解析」という手法を用いて、栄養素の摂取と脳卒中リスクとの因果関係を明らかにしようとしている。
そこで、脳卒中予防に関係するとされる4つのマクロ栄養素と14のミクロ栄養素についてMR解析をこころみたそうな。
MR解析は、遺伝的な変異が個々の栄養素摂取に影響を与えるかどうかを調べることで、観察研究の限界を克服する。遺伝的変異は出生時にランダムに決まるため、まるでランダム化比較試験(RCT)のように、交絡因子の影響を受けずに因果関係を推定できるという特長がある。
以下の栄養素について調査が行われた。
マクロ栄養素(4種類):
タンパク質 (Protein)
炭水化物 (Carbohydrates)
糖類 (Sugar)
脂質 (Fat)
ミクロ栄養素(14種類):
ビタミンA (Vitamin A)
ビタミンB6 (Vitamin B6)
ビタミンB9(葉酸) (Vitamin B9, Folic Acid)
ビタミンB12 (Vitamin B12)
ビタミンC (Vitamin C)
ビタミンD (Vitamin D)
ビタミンE (Vitamin E)
カルシウム (Calcium)
銅 (Copper)
鉄 (Iron)
マグネシウム (Magnesium)
リン (Phosphorus)
セレン (Selenium)
亜鉛 (Zinc)
これらの栄養素に関するデータは、複数の異なるゲノムワイド関連解析(GWAS)から取得され、それぞれの栄養素の遺伝的に予測されるレベルが脳卒中リスクに与える影響を解析した。
次のことがわかった。
・18の栄養素のうち、以下の4つの栄養素が脳卒中リスクに対して有意な因果関係を持つことが判明した。
心原性脳卒中(cardioembolic stroke)のリスクを有意に低下させることが示された。また、虚血性脳卒中全体や脳卒中全般のリスクを低減する可能性もある。
小動脈脳卒中(small-vessel stroke)のリスクを減少させることが示された。これは、ビタミンB9がホモシステイン濃度を低下させる作用に関連していると考えられる。
心原性脳卒中のリスクを低下させることが示された。その具体的なメカニズムについてはさらなる研究が必要である。
大動脈脳卒中のリスクを増加させることが示唆されているが、サンプルサイズや遺伝的多様性の制限があるため、さらなる研究が求められる。
・他の栄養素については、因果関係は認められなかったが、ビタミンやミネラルの摂取が健康に重要であることには変わりはない。
MR解析により、マグネシウム、ビタミンC、ビタミンB9の摂取が脳卒中予防に有効である可能性が示された。一方で、ビタミンB6については注意が必要であり、さらなる検証が求められる、
というおはなし。
感想:
ビタミンCで因果関係は新鮮!とおもったらすでにあった↓。