元
急に襲ってくる強い頭痛は、多くの人にとって不安の原因となる。
その理由の一つが、「くも膜下出血(SAH)」である。
SAHは、脳の血管が破れて出血し、脳を覆うくも膜の下に血液がたまる状態をさす。
SAHは早期の治療が必要な緊急事態であり、「人生で最悪の頭痛」として表現されることが多い。
しかし、すべての急性頭痛がSAHであるわけではなく、その診断には特別な注意が必要だ。
そこで、一般的な急性頭痛患者におけるSAHの発生率と診断についてくわしくしらべてみたそうな。
ノルウェーの大規模な一般病院において2009年から2020年までの12年間にわたり、急性頭痛を訴えて来院した患者を対象にした。
すべての患者に対して頭部CTスキャンが行われ、くも膜下出血が疑われる場合には、髄液を採取して分析するための腰椎穿刺(LP)が追加で行われた。
特に注目すべきは、多列検出CT(MDCT)の進歩である。MDCTは、従来のCTスキャンに比べてより高い解像度で脳内の異常を検出できるため、診断精度が向上している。
この研究では、発症から6時間以内に撮影されたCTスキャンがどの程度くも膜下出血を検出できるか、また、腰椎穿刺がどのように役立つかが調査された。
次のことがわかった。
・研究には3,227人の急性頭痛患者が含まれ、そのうち5.3%(約20人に1人)が実際にくも膜下出血(SAH)と診断された。
・SAHと診断された患者のうち、91.7%はCTスキャンで陽性と判定された。特に発症から6時間以内に行われたCTスキャンは、実際にSAHがある患者をほぼ100%の確率で検出できた。
・しかし、CTスキャンで陰性だった患者のうち、わずか0.5%が腰椎穿刺による髄液検査でSAHが確認された。
・これにより、腰椎穿刺の追加検査がすべての患者に必須ではないことが示唆されたが、疑わしい症例に対しては重要な確認手段となることも確認された。
急性頭痛の患者におけるくも膜下出血の発生率は約5.3%と比較的低いことがわかった。MDCTを使用した6時間以内の頭部CTスキャンは、非常に高い精度でSAHの存在を否定できる。したがって、すべての急性頭痛患者に対して腰椎穿刺を行う必要性はほとんどない、
というおはなし。
感想:
くも膜下出血の頭痛はひどいとは言われているけれど、「こりゃ病院にゆかないとマズイな」と思うくらいの頭痛はひんぱんに経験されていて、くも膜下出血はそのような頭痛の20人に1人に過ぎないってこと。
ふつうの人は頭痛くらいで病院にかからない。くも膜下出血であってもグレードⅠやⅡの症状は頭痛しかなく、顔腕口のFAST症状は現れないから病院にはゆかず我慢する。
病院にゆかないから彼らはくも膜下出血患者としてカウントされない。
人前で意識を失ったり倒れたりする重症患者がもっぱら病院に担ぎ込まれて来るため見かけ上の死亡率がとても高くなる。
そして、病院にゆかなかったくも膜下出血患者は自然回復して死亡率は極めて低い↓。
頭痛を理由にうっかり脳外科病院にかかると、鎮静剤を打たれて意識障害にされたあげく家族の同意だけで手術されてしまう。
しかもこの手術のポジティブな効果を証明できるランダム化比較試験が世に存在していないためのちにトラブルが多発する。
まさにこの体験をkindleで読める↓。無料マンガでわかりやすい。
あらすじ)
著者が強い頭痛で病院を訪れると、検査中になぜか意識が無くなった。手術などしてほしくなかったにもかかわらず、目が覚めると「希望してもいない」コイルがアタマに詰められていた。後日コイルトラブルで言葉が出なくなり、現在は再手術を勧められているという衝撃のノンフィクション。