元
脳卒中後のリハビリテーションでは、運動機能の回復が重要である。特に、麻痺した手足の動きを取り戻すためには、反復的な運動トレーニングが効果的であるとされる。
近年、運動イメージ(MI: Motor Imagery)と呼ばれる方法が注目されている。MIとは、実際には動かさなくても、頭の中で運動をイメージすることで、運動神経を刺激し、回復を促進する手法である。
しかし、MIの効果は個人差が大きく、経験や年齢、脳卒中の影響などにより、運動イメージの鮮明度や効果が異なるという問題がある。
この課題を解決するために、振動誘発による錯覚運動(VIM: Vibration-Induced Illusory Movement)という新しいリハビリ手法が注目されている。
そこで、VIMの方法とその効果についてくわしくしらべてみたそうな。
脳卒中による片麻痺を持つ患者14名を対象に、VIMタスクの効果を検証した。
VIMタスクは、手や指、手首の腱に特定の振動刺激を与え、運動の錯覚を引き起こすことで、実際の運動を伴わないリハビリを行う方法である。
振動刺激は、筋肉や腱に約80Hzの振動を加え、筋肉が動いているように感じさせる。
この錯覚により、脳の運動関連領域が活性化し、運動機能の回復を促進する効果が期待される。
具体的な介入手順は以下の通りである:
期間:2週間
頻度:週に6回、1回あたり60分のセッション
手順:
患者は椅子に座り、麻痺した手や腕をリラックスさせた状態で、目を閉じるか視覚を遮断する。
セラピストが麻痺した側の手や指、手首の腱に対して振動刺激を与える。
1セットは10秒間の刺激と10秒間の休止で構成され、各関節ごとに10セットを行う。
刺激中、患者は麻痺側で感じる運動錯覚に意識を集中させる。
次のことがわかった。
・VIMタスクを実施した患者は、従来の作業療法のみを行った場合に比べて、運動機能と運動イメージの再現能力が有意に向上した。具体的には、以下のような改善が見られた:
・運動機能の向上:Wolf Motor Function Test (WMFT)、Fugl-Meyer Assessment (FMA)、およびMotor Activity Log (MAL)の評価項目において、VIMタスク後に有意な改善が見られた。特に、上肢の運動機能が大幅に向上した。
・運動イメージの鮮明度の向上:Kinesthetic and Visual Imagery Questionnaire (KVIQ)による評価で、VIMタスク後に視覚イメージと運動感覚イメージの鮮明度が有意に向上したことが確認された。
・脳の活動の変化:運動イメージ中の脳波のイベント関連脱同期(ERD)強度が、麻痺した半球でVIMタスク後に増加したことが観察された。これは、脳の運動関連領域が活性化されていることを示している。
振動誘発による錯覚運動(VIM)が、運動イメージ(MI)の効果を補完する新しいアプローチとして有効であることを示唆している。VIMタスクは、麻痺した手足の運動機能の回復を促進するだけでなく、運動イメージの鮮明度を高め、リハビリの効果を最大化する可能性を持つ。今後、VIMタスクを取り入れたリハビリテーションの実践が、脳卒中患者の生活の質をさらに向上させるための重要な手段となるだろう、
というおはなし。
うごくよ
感想:
わかるような気がする。
オレは、麻痺側と健常側の手のひらをぴたりとあわせて、
ハエが手をこするような動作をいつも無意識にやっていた。
こうしていると、健常側の触覚や運動感覚の「位置」が麻痺手に重なって、あたかも麻痺手に感覚がもどったような錯覚があってとても気持ちが落ち着いたものだった。