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脳卒中後の回復や予後には、さまざまな要因が影響を与えるが、その中で「安静時心拍数(Resting Heart Rate, RHR)」が重要な指標であることが示されている。
特に、高い安静時心拍数(HRHR)は、交感神経の活動亢進や心理的・身体的ストレスの指標として知られており、心筋酸素消費の増加、血液粘度の上昇、炎症反応の増加といった複数の生理的影響を反映する。
これらの影響が重なることで、心血管イベントや死亡リスクが増加する可能性がある。
近年、若い女性における心血管リスクの増加が報告されており、特に脳卒中患者においても、女性は男性よりも高い安静時心拍数を持つ傾向があることが知られている。
これまでの研究では、女性の脳卒中患者の機能的予後が男性よりも悪いことが報告されている。
これらの背景を踏まえ、高い安静時心拍数(HRHR)が女性の脳卒中患者における予後にどのような影響を与えるのかくわしくしらべてみたそうな。
1998年から2004年にかけて「The Virtual International Stroke Trials Archive (VISTA)」に登録された急性脳梗塞患者のデータを用いた。
対象患者は、脳卒中発症から24時間以内に入院し、心房細動のない6,024人の患者で、年齢、性別、安静時心拍数(RHR)などの情報が含まれている。
安静時心拍数(RHR)は、入院時に患者を仰臥位(横になった状態)で5分間安静にさせた後に、12誘導心電図(ECG)で測定された。
先行研究に基づき「86 bpm」以上をHRHRとした。
主な評価項目は、90日以内の再発性脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、心筋梗塞、心血管死の複合エンドポイント、ならびに90日後の機能的障害(改訂Rankinスコア, mRS)である。
次のことがわかった。
・高い安静時心拍数(HRHR, >86 bpm)を持つ患者は女性が多く、また年齢が若く、高血圧や糖尿病の割合も高いことが明らかになった。
・HRHRの患者群では、90日以内の心血管イベント(再発性脳卒中、TIA、心筋梗塞、心血管死)の発生率が有意に高く、特に心血管死と心筋梗塞のリスクが増加していた。
・また、90日後の機能的回復を示す改訂Rankinスコア(mRS)もHRHR群で悪化していることがわかった。
・特に女性に焦点を当てた分析では、HRHRが高い女性患者は、男性患者と比較して予後が悪化する傾向があるが、心血管イベントの発生率自体は男性と差がなかった。これは、女性特有の自律神経系の反応やホルモンの影響が関与している可能性があるが、詳細は不明である。
安静時心拍数(RHR)が高いことは、脳卒中後の心血管リスクや機能的予後に重要な影響を与えることが確認された。特に女性の脳卒中患者においては、HRHRがより多く見られるが、心血管イベントのリスクが必ずしも男性より高いわけではなかった、
というおはなし。
感想:
安静時の心拍数がけっこう高いんよ。↓