元
脳内出血(ICH)は、脳卒中の一種であり、血管が破れて脳内に出血が起こる状態を指す。
この脳内出血において、アルコール使用障害(AUD)がある患者は、特に「血腫拡大」と「長期的な機能障害」のリスクが高いことが近年の研究で示されている。
AUDとは、いわゆる「アルコール依存症」や「アル中」とも呼ばれる状態を含むもので、アルコールの過剰摂取や依存によって健康や日常生活に支障をきたす症状を指す。
例えば、毎日のように飲酒しないと落ち着かない、飲酒を止められない、あるいは飲酒によって仕事や人間関係に問題が生じるといったケースがAUDに該当する。
そこで、脳内出血を経験した若い男性患者を対象に、AUDがどのように病状に影響を与えるのかをくわしくしらべてみたそうな。
2013年1月から2022年3月までの期間に入院した脳内出血の若い男性患者を対象に行われた。
研究対象者はアルコールの飲酒パターンに基づいて、次の3つのグループに分けられた:アルコール使用障害(AUD)を持つグループ、時々飲酒するグループ(Occasional Drinking)、および飲酒しないグループ(Non-Drinking)。
それぞれのグループ間で、臨床的特徴と予後(長期的な機能回復の状況)を比較した。また、血腫がどの程度拡大するか(血腫拡大)や、長期間の機能障害に対するAUDの影響を調べるために、回帰モデルを用いて分析を行った。
さらに、AUDと血腫拡大の関係において、血腫内の密度の不均一性がどのように影響を与えるかを検討するため、媒介分析という手法を用いた。
次のことがわかった。
・222例の脳内出血の若い男性患者が含まれ、その平均年齢は54.16歳であった。
・AUDを持つ患者は、時々飲酒する患者や飲酒しない患者と比べて、血腫拡大のリスクが高く、長期的な機能障害のリスクも高いことが示された。具体的には、AUD患者の血腫拡大のオッズ比は時々飲酒する患者と比較して約2.97倍(p=0.028)、飲酒しない患者と比較して約3.51倍(p=0.011)であった。
・また、長期的な機能障害のリスクに関しても、時々飲酒する患者と比較して約2.62倍(p=0.006)、飲酒しない患者と比較して約2.80倍(p=0.003)であった。
・さらに、媒介分析の結果、血腫密度の不均一性がAUDと血腫拡大の関係を部分的に媒介していることがわかった(媒介割合19.3%)。これにより、AUDによる血腫拡大のリスクの一部は、血腫内の密度の変化に関連していることが示唆された。
脳内出血(ICH)を経験した若い男性患者において、アルコール使用障害(AUD)が血腫拡大と長期的な機能障害のリスクを独立して増加させる要因であった。また、血腫の密度の不均一性がAUDと血腫拡大の関係を部分的に媒介することもわかった、
というおはなし。
感想:
脳内出血患者がアル中の場合、転帰がよくないってこと。