元
脳卒中後の慢性期において、多くの患者は依然として上肢麻痺を抱えており、これが日常生活の自立や生活の質(QoL)に大きな影響を与えている。
従来のリハビリテーション療法は効果が限られるため、新たな治療法が求められている。
そこで、従来の運動プログラムである「段階的反復腕補助プログラム(GRASP)」と比較して、音楽を用いた「強化された音楽支援療法(eMST)」が、上肢機能とQoLの向上において優れているかどうかをくわしくしらべてみたそうな。
慢性期脳卒中患者を対象に、eMSTとGRASPの効果を比較する無作為化比較試験を実施した。
eMSTは、患者が自宅で音楽を演奏しながらリハビリを行うプログラムであり、週4回の個別セッションと1回のオンライングループセッションを10週間にわたり実施した。
セッションでは、鍵盤(キーボード)やタンバリン、マラカスなど複数の楽器を用い、手や腕の運動機能を強化する。
また、タブレットアプリとAIを活用して、患者のトレーニング内容を最適化し、フィードバックを提供した。
対照群のGRASPでは、日常的な物品を用いた運動プログラムを自宅で実施した。
次のようになった。
・eMSTを受けた患者群は、従来のGRASPを受けた患者群と比較して、上肢機能において有意な改善を示した。
・特に、上肢の運動機能評価(Action Research Arm Test)において、eMST群の55%が臨床的に意味のある改善を達成したのに対し、GRASP群では21.6%にとどまった。
・また、eMST群は、感情的な幸福感やQoLの一部の尺度においても改善が見られた。
・さらに、患者はセッション中の楽しさをより多く感じ、リハビリへの取り組みが高まったと報告した。
強化された音楽支援療法eMSTは、従来の運動療法であるGRASPに対して、上肢機能の改善およびQoLの向上において優れた効果を示した。音楽を用いたリハビリテーションは、患者のモチベーションを高め、自己効力感を向上させる要素が含まれており、従来の療法に代わる有力なアプローチとして位置づけられる。慢性期の脳卒中患者に対するリハビリテーションにおいて、eMSTは新たな標準となる可能性がある、
というおはなし。
感想:
入院中にやってみたかったわ。