元
脳動脈瘤は、脳内の血管壁が膨らんでできる病変であり、破裂すると命に関わる深刻な状態を引き起こす。
しかし、未破裂のままであっても、患者に大きな精神的負担を与えることが知られている。
過去の観察研究では、脳動脈瘤を持つ患者がうつ病や不安障害などの精神疾患を発症しやすいとされてきたが、統合失調症との関連性については一貫した結論が得られていない。
そこで、メンデルランダム化(MR)解析を用いた研究を紹介し、脳動脈瘤と統合失調症の因果関係についてくわしくしらべてみたそうな。
MR解析は、遺伝的な多様性を利用して因果関係を推論する方法である。
この手法の強みは、遺伝子が出生前に無作為に配分されるため、環境要因や逆因果関係の影響を受けにくい点にある。
具体的には、脳動脈瘤に関連する遺伝子多型(SNP)を調査し、これが統合失調症のリスクにどのような影響を与えるかを解析した。
次のことがわかった。
・破裂脳動脈瘤(IA)および未破裂脳動脈瘤(UIA)が統合失調症の発症リスクをわずかに低下させる可能性が示された。
・この現象の背後には、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)と呼ばれる、血圧や体内の水分バランスを調整するホルモン系の働きが関与している可能性がある。
RAASは血管の収縮や血圧の上昇に関与しており、このシステムが過剰に働くと脳内の血流に影響を与えることがある。最近の研究では、RAASの調整が統合失調症の症状を緩和する効果も示唆されており、このシステムが脳動脈瘤を通じて統合失調症のリスクに関わっている可能性がある。
破裂脳動脈瘤(IA)および未破裂脳動脈瘤(UIA)が統合失調症(SCZ)のリスクを低減する可能性が示されたが、そのメカニズムや実際の臨床的意義についてはさらなる研究が必要である、
というおはなし。
感想:
脳動脈瘤が統合失調症予防になる、ははじめて。