元
左側空間無視は、右脳卒中患者によく見られる症状で、視覚的注意を左側に向けることが困難になる状態を指す。
これにより、患者は左側の物体や出来事を見逃しやすくなる。
従来の研究では、左側空間無視の原因が主に空間的注意の不均衡にあるとされてきたが、最近の研究は非空間的な注意障害も関与している可能性を示唆している。
そこで、左側空間無視患者の時間的注意のエンゲージメント能力を検討し、その関連性をくわしくしらべてみたそうな。
右脳卒中による左側空間無視患者(N+)、右脳卒中患者だが左側空間無視を持たない患者(N-)、および健常者(C)の3グループを対象とした。各グループは年齢および教育年数でマッチングされた。
実験1: メタコントラストマスキング課題
被験者は、画面中央に表示されたターゲット文字を認識する課題を行った。ターゲット文字は40ミリ秒間表示され、その後ランダムな間隔でマスクが表示された。ターゲットとマスクまでの時間(SOA)は、40、80、120、200、520、1000ミリ秒の6種類であった。被験者はターゲット文字を正確に認識することを求められた。
実験2: アテンショナルマスキング課題
ターゲット文字とマスク文字が異なるもので構成された。ターゲット文字の認識精度を測定し、ターゲット文字がマスク文字に置き換えられてしまう頻度(アテンショナルサブスティチューション率)を評価した。
次のようになった。
・実験1では、左側空間無視患者(N+)は健常者(C)および左側空間無視のない右脳卒中患者(N-)に比べて、ターゲット認識のためのSOAの閾値が有意に大きかった。また、N+グループの認識精度の変化率(スロープ)は他のグループよりも低かった。
・実験2でも、N+グループはCおよびN-グループと比較して、ターゲット認識のためのSOAの閾値が大きく、短いSOAではアテンショナルサブスティチューションが多く見られた。これらの結果は、N+患者が視覚イベントに対する時間的注意のエンゲージメントに遅れを示すことを示唆している。
左側空間無視患者は必要な視覚的注意を得るまでに時間がかかった。この時間的注意のエンゲージメント障害は、右半球の注意ネットワークの機能不全に起因し、空間的注意の欠陥と密接に関連しているとかんがえられる、
というおはなし。
感想:
右脳をやられるとなぜかはわからないけど、あたかも作業メモリが枯渇したように一度に複数のことに注意を向けられなくなる。運転しながらの会話とかムリ。
半側空間無視にも同様の背景があって、一見治ったようにみえても、刺激の量を増やすと再発するし、一時的に視覚を遮断するだけで症状は消える。↓
じつは治っていない空間無視を見つける方法