元
半側空間無視は脳卒中の一般的な後遺症であり、対側空間への注意の障害を特徴とする。
現在のところ、無視からの回復の程度と時間経過は明確に確立されていない。
そこで、脳卒中後の半側空間無視の標準治療による回復の軌跡を明らかにするべくメタアナリシスをこころみたそうな。
PsycInfo、Embase、MEDLINEで脳卒中後の半側空間無視の回復率を報告した論文を検索した。
脳卒中からの期間は、初期(0~3ヵ月)、中期(3~6ヵ月)、後期(6ヵ月以上)の回復期に分類した。
各回復期における回復率のランダム効果モデルを作成し、潜在的な異質性の原因をメタ回帰を用いて探索した。
次のことがわかった。
・4130件の論文が検索され、111件のフルテキストレビューが実施された。
・半側空間無視を有する脳卒中生存者839人のデータを報告した合計27件の研究が解析の対象となった。
・メタアナリシスの結果、初期段階での回復率は42%であり、中期段階では53%に増加した。
・後期の回復はわずかで、回復率は56%と推定された。
・研究ごとの異質性は、回復の3段階すべてにおいて高かった(I2>75%)。
・とくに、左半球病変を有する患者で有意に大きな回復を示した。
半側空間無視からの回復の大部分は最初の3ヵ月で起こるが、脳卒中後6ヵ月まではさらなる回復が期待できる。回復する患者の割合は多いものの、40%以上の患者は症状が持続する、
というおはなし。
感想:
脳卒中で失われた機能の70%はなにもしなくても3ヶ月以内に自然回復するいわゆる「
比例回復則」は、
運動機能のみならず、半側空間無視や失語症でも報告されている。