元
くも膜下出血(aSAH)を防ぐためのコイルやクリップによる侵襲的な脳動脈瘤治療のベネフィットは、治療による後遺症や死亡のリスク(最大8%)を上回ることはない。
そのため、ほとんどの脳動脈瘤は治療されないままになっている。
一般的に処方されている薬で、くも膜下出血の発生率を低下させうるものがあるならば、それらを新たな予防薬として再利用することも考慮できる。
そこで、一般的に処方されている薬とくも膜下出血の発生率との関連を系統的に調査するために、薬物の広範な関連研究(drug-wide association study :DWAS)をこころみたそうな。
Secure Anonymised Information Linkage データベースを使用して、2000年から2020年の間に発生したすべてのくも膜下出血症例を対象とした。
各症例は、年齢、性別、データベースへの登録年に基づいて、9人の対照群とマッチングさせた。
対象者の2%以上に処方されている薬について、指標日(すなわち、aSAHの発生)の直前の処方から3つの暴露期間を定義した。:現在(3か月以内)、最近(3~12か月)、過去(12か月以上)とした。
次のことがわかった。
・4,879人のaSAH患者(平均年齢61.4歳、61.2%が女性)と43,911人の対照群を対象に、一般的に処方されている205種類の薬剤への曝露を調査した。
・降圧薬のリシノプリルとアムロジピンの現在使用がaSAHリスクの低下と関連していた。
・また、脂質を下げるシンバスタチン、血糖を下げるメトホルミン、および膀胱筋を弛緩させるタムスロシンの現在使用が、動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)のリスクを低減した。
・一方、抗凝固薬ワルファリン、抗うつ薬ベンラファキシン、抗精神病薬プロクロルペラジン、鎮痛薬ココダモールの使用で、aSAHのリスクが高まることが判明した。
動脈瘤性くも膜下出血に関連する複数の薬剤を特定できた。そのうち5つの薬剤(リシノプリル、アムロジピン、シンバスタチン、メトホルミン、タムスロシン)ではくも膜下出血リスクの低下が認められた、
というおはなし。
感想:
イントロで、「動脈瘤治療には手術のリスクに見合う効果がない」、と言い切っていたので好感をもった。
脂質異常症や糖尿病にたいする他の薬ではこのような関連は認められなかったので、上に挙げた薬剤に特異的な効果かもしれないと言ってる。