元
現在の米国心臓協会/米国脳卒中協会のガイドラインによると、重度の小脳腫脹を示す小脳梗塞患者には減圧手術がすすめられている。
しかし、腫脹および梗塞容積の定義はなく、手術を行うかどうかの明確な判断材料が存在しない。
そこで、小脳梗塞患者の機能的転帰を保存的治療と比較してみたそうな。
2008年から2021年の間にドイツ国内の5つの三次紹介病院または脳卒中センターで治療を受けた小脳梗塞患者の記録を対象とした。
外科的治療(後頭蓋減圧術) vs 保存的管理(内科的治療)。
退院時および1年追跡時の修正ランキンスケール(mRS)による機能的状態を評価した。
解析には傾向スコアマッチングを用い、年齢、性別、入院時のGlasgow Coma Scaleスコア、脳幹浸潤、梗塞体積で調整した。
次のようになった。
・531例の小脳梗塞患者のうち301例(57%)が男性で、平均年齢は68歳であった。
・傾向スコアマッチングの結果、外科的治療を受けた患者71人と、保存的治療を受けた患者71人を比較した。
・退院時の良好な転帰(すなわち、mRSスコアが0~3)において、外科的治療を受けた患者と保存的治療を受けた患者で有意差はなく、
・小脳梗塞容積が35mL以上の患者では、外科的治療が1年後の追跡調査における良好な転帰の有意な改善と関連していた、一方、梗塞容積が25mL未満の患者では、保存的治療が1年後の良好な転帰と関連していた。
小脳梗塞患者において減圧手術は保存的治療と比較して転帰の改善とは関連していなかった。しかし、梗塞体積の大きい患者では外科的治療が有益であるように思われた、
というおはなし。
感想:
手術することを生業とする神経外科医の書いた論文。
これまで手術適用の詳細なガイドラインがなかったわけだから、患者選別にさいして当然おおきな偏りが生じていたはず。
たとえば、瞳孔が開いてまちがいなく死にそうな患者は保存治療にまわし、体力のありそうな患者を積極的に手術する。
治療成績が上がるからそうする。
また、傾向スコアマッチングではこの種の極端な症例をマッチさせることは困難である。
つまり圧倒的に手術群に有利な結果が出る状況にもかかわらず、両群の転帰に有意差がなかったことから、いかに減圧術がひどい治療であったかがうかがい知れる。
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