元
動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)の治療において、破裂の高リスク因子がわかっていない患者に対する適切なスクリーニングについては依然として論争がある。
そこで、性別がaSAHの発症と治療成績にどのような影響を及ぼすかをくわしくしらべてみたそうな。
12年間(2007年8月1日~2019年7月31日)に単一施設でaSAHの治療を受けた全患者の記録を対象に研究を実施した。
追跡調査時の神経学的転帰不良(modified Rankin Scale[mRS]スコア>2)の、高リスク因子を有する女性と有さない女性の解析を行った。
次のことがわかった。
・1014例のデータが解析された(69%[n = 703]が女性)。
・女性は男性より有意に高齢であった(56.6歳 vs 53.4)。
・タバコの使用歴がある女性の割合は男性より有意に低かった(36.6% vs 46%)。
・aSAHの高リスク因子を持たない女性の割合は男性より有意に高かった(10% vs 5%)。
・最終フォローアップ時にmRSスコアが2以上であった女性の割合は、高リスク因子を有さない者(34%)に対して高リスク因子を有する者(53%)で有意に低かった。
・その後の傾向調整分析(年齢、HuntおよびHessグレード、Fisherグレードで調整)では、aSAHの高リスク因子の有無は転帰不良と関連がみとめられなかった。
脳動脈瘤の破裂について高リスク因子を持たない女性の割合が男性よりも高いことから、未破裂動脈瘤を有する女性のより積極的なスクリーニングと管理が支持される、
というおはなし。
感想:
論文はこう言ってる
「くも膜下出血の高リスク因子が女性患者であきらかにすくなかった。しかもそれら高リスク因子の数と転帰に関連がなかった。」
しかしくも膜下出血は女性におおく、これら高リスク因子は再出血のリスクでもあるわけだから転帰不良の原因になりうる。
なのに、高リスク因子と転帰不良には関連がなかった。
この矛盾は、くも膜下出血のリスクを動脈瘤のリスクと混同していることから生じると考える。
動脈瘤性くも膜下出血が動脈瘤からの出血であると考えるのは勘違いである、とすれば矛盾は解決する。