元
非外傷性くも膜下出血(SAH)は脳卒中全体の5%を占める。
そのおおくは脳動脈瘤の破裂によるもので、他に動静脈奇形などを含む。
そこで、動脈瘤性および非動脈瘤性のくも膜下出血に関する過去10年間の傾向をくわしくしらべてみたそうな。
2011年1月から2020年12月までに発症した、イタリア中部ラクイラ地区住民の初回SAH患者を対象とした。
脳動脈瘤の有無と位置を評価し、非動脈瘤性SAHの種類も同定した。
発生率は2011年のヨーロッパ人口で標準化した。
SAH後の30日および1年致死率も推定した。
次のことがわかった。
・194例(女性60.8%;平均年齢62.5歳)が対象となった(動脈瘤性76.8%149人、非動脈瘤性23.2%45人)。
・発生率は10万人年当たりSAH全体 6.5人、動脈瘤性SAH5.0人、非動脈瘤性SAH1.5人であり、経時的に安定していた。
・非動脈瘤性SAHは動脈瘤性SAHと比較して、年齢が高く、喫煙率が低く、心房細動が多かった。
・30日以内と1年以内のSAH致死率はそれぞれ28.4%と37.1%であった。
・動脈瘤性と非動脈瘤性SAHの、30日以内と1年以内のSAH致死率に有意な差はなかった。
・非動脈瘤性SAH全体の45人のうち、中脳周囲タイプが17人、非中脳周囲タイプは28人であり、致死率は非中脳周囲タイプのほうがあきらかに高かった。
・動脈瘤性SAH全体の149人のうち103人が手術を受け、クリッピング53人、コイリング50人だった。
・手術を受けた患者の割合は経時的に変化しなかった。
2011年から2020年にかけてくも膜下出血の発生率は低く安定していた。非動脈瘤性のくも膜下出血は依然としてまれであった。動脈瘤性と非動脈瘤性とでくも膜下出血の致死率に有意な差はなかった、
というおはなし。
感想:
大事なことがわかった。
非動脈瘤性SAHは、アンギオ検査でコブ状の構造物(動脈瘤)が見つからなかった場合を指す。
治療ターゲットとなる動脈瘤がないため、クリップやコイルの手術はおこなえない。
にもかかわらず、ほとんどが治療手術をした動脈瘤性SAH患者と致死率に差がなかった。
クリップやコイル治療にほんとうに効果があるのなら、動脈瘤性SAH患者の致死率は非動脈瘤性SAH患者よりもあきらかに低いはず。年齢も若いし。
動脈瘤のクリップやコイル治療はまったく役に立っていない可能性が高いと考える。
じっさい、動脈瘤治療により再出血率や致死率が下がったとするまともな研究成果は、この世のどこを探しても見当たらない。