元
くも膜下出血後の血管攣縮(れんしゅく)と正常圧水頭症の発生率にたいする破裂動脈瘤の治療法の影響については議論がある。
そこで、長崎県のくも膜下出血登録データから、治療法ごとでの血管攣縮と正常圧水頭症の発生率をくわしくしらべてみたそうな。
次のことがわかった。
・2015年1月から2017年12月までに長崎大学関連の18病院から800例のくも膜下出血患者が登録された。
・男性患者は245例(30.6%)、女性患者は555例(69.3%)であった。
・708例(87.5%)で脳動脈瘤が同定され、620例に手術が行われた。
・クリッピング術は416例(67.1%)に、コイル塞栓術は180例(29.0%)に施行された。
・血管攣縮はクリッピング群で118例(28.4%)、コイル群で30例(16.7%)に発現した。
・正常圧水頭症はクリッピング群で148例(35.6%)、コイリング群で42例(23.3%)に発現した。
・血管攣縮および水頭症は、初回出血以外での予後不良要因のもっとも主なものだった。(血管攣縮23例(8.9%)、再出血36例(6.7%)、手術関連合併症33例(6.1%)、水頭症19例(3.5%))
長崎県の多施設研究では、くも膜下出血後の血管攣縮と正常圧水頭症の発生率は、コイリングのほうがクリッピングよりもあきらかに低いことが示された、
というおはなし。
感想:
いつもの血管内治療礼賛レポートかとおもったら、なにげにすごい内容で驚いた。
AI「血管攣縮や水頭症の発生は、くも膜下出血によって漏れ出た血液が原因とされています。
クリッピング手術では、開頭を伴うため、血腫の除去も可能とされるメリットがあります。一方、コイリング手術では血腫の除去は行えません。
それにも関わらず、コイリング手術の方が血管攣縮や水頭症の発生が少ないことが示されました。
この結果から、手術の侵襲度の差が血管攣縮と水頭症の発生率に影響を及ぼしていると考えられます。
さらに深く考察すると、動脈瘤の治療そのものが血管攣縮と水頭症の原因になっている可能性を示唆していると言えるでしょう。」
おもっていたとおりだった。
くも膜下出血死亡率の高さの理由は、動脈瘤治療それ自体にある。
そもそも、くも膜下出血の動脈瘤治療効果を証明できるランダム化比較試験はいまだ世に存在しない。
まともな根拠に基づいた治療ではないため医療事故が絶えず、
こういう↓情報もあった。
「入院時の重症度WFNSグレードは、Iが220例(27.6%)、IIが188例(23.6%)、IIIが29例(3.6%)、IVが116例(14.6%)、Vが243例(30.5%)であった。」
WFNSグレードⅠ~Ⅱの症状はただの頭痛であり、半数以上を占めていた。
頭が痛いくらいでうっかり病院にゆくと、いきなり鎮静薬を打たれて意識不明にされる。そして本人の意思とは無関係に動脈瘤手術をされてしまう。
ここに↓くも膜下出血治療の最新の体験談がある。kindleで読める無料マンガでわかりやすい。
あらすじ)著者が頭痛で病院を訪れると、検査を受けた途端になぜか意識が無くなった。手術などしてほしくなかったにもかかわらず、目が覚めると「希望してもいない」コイルがアタマに詰められていた。後日コイルトラブルで言葉が出なくなり、現在は再手術を勧められているという衝撃のノンフィクション。
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