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くも膜下出血患者の第一度近親者(first-degree relative:親、兄弟、子)に対しての未破裂脳動脈瘤のスクリーニング(健康な人への検査)は有効であると考えられている。
しかし未破裂脳動脈瘤がみつかった患者の第一度近親者に対してもそのスクリーニングが有効であるかどうかは不明である。
そこで、未破裂脳動脈瘤患者の第一度近親者に対するスクリーニングの効率と破裂のリスク、QoLにおよぼす影響をあきらかにするべくくわしくしらべてみたそうな。
動脈瘤性くも膜下出血の家族歴のない未破裂脳動脈瘤患者20~70歳の第一度近親者を対象とした。
かれらは2017年から2021年の間に磁気共鳴血管造影(MRA)でスクリーニングを受けた。
QoLはスクリーニングのあと1年間に6回アンケートで評価した。
次のようになった。
・スクリーニングを受けた461例の第一度近親者のうち23例で24個の未破裂脳動脈瘤が検出され、有病率は5.0%であった。
・動脈瘤サイズの中央値は3mm、PHASESスコアで推定した5年破裂リスクは0.7%であった。
・すべての未破裂脳動脈瘤が画像診断フォローを受け、予防的手術を受けたものはなかった。
・24ヵ月のフォロー期間で、未破裂脳動脈瘤に変化はなかった。
・未破裂脳動脈瘤がみつかるリスクは2.3-14.7%で、喫煙や過度のアルコール摂取がある場合にそのリスクが最も高かった。
・すべての調査時点において、健康関連QoLと情動機能は、一般集団の対照群と同等であった。
・スクリーニングで動脈瘤がみつかった1人は、スクリーニングを受けたことを後悔していた。
未破裂脳動脈瘤患者の第一度近親者へのスクリーニングでは5%に未破裂脳動脈瘤がみつかった。それらはすべて破裂する可能性が極めてひくかったので、このようなスクリーニングが必要であるとは考えられなかった、
というおはなし。
感想:
脳動脈瘤のクリップやコイルの手術を1回おこなうと病院は約1000万円の保険請求ができるという。
おおくの手術をこなしたい病院にとって、くも膜下出血は10万人あたり10人程度という少ない発生率が課題になる。
例えば、人口20万人都市だと年間たった20人の患者を複数の病院で奪い合うことになる。
そこで、ある田舎のクリニックが「脳ドック」と称して、被爆や痛みを一切伴わないMRAサービスを格安で提供する方針を立てた。
健康な人を100人スクリーニングするとすくなくとも3%(3人)に未破裂脳動脈瘤が発見されると考えられる。
彼らの耳元で「ほうっておくと破裂して死にますよ」とささやくだけで、健康でピンピンしていたひとが一転して「どうか手術をしてください」と懇願する患者になる。
圧倒的多数である健康な人々についてMRAを撮れば撮るほど、動脈瘤手術を希望する患者が増えるので、病院の収益は急速に向上すると考えられる。
このビジネスモデルを発明した田舎のクリニック院長は、その後の活躍により日本医師会会長にまで上り詰めた。