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くも膜下出血のクリッピングとコイリング治療についてのランダム化比較試験ISATで、コイリング優位が示されたのち欧米ではコイリング治療がおおはばに増加した。
そこで、日本でのクリッピングとコイリング治療の過去6年間の推移と、高度医療を提供する病院としての能力と患者転帰との関連をくわしくしらべてみたそうな。
J-ASPECT Diagnosis Procedure Combinationデータベースをもちいて、緊急入院したくも膜下出血患者45011人の記録を特定し解析した。
次のことがわかった。
・2010-2015年の院内死亡率は低下傾向にあったが、機能的転帰不良の割合は変わっていなかった。
・クリッピング患者は46.6%から38.5%に減少し、コイリング患者は16.9%から22.6%に増加した。
・クリッピングもコイリングもしない未治療患者は35.4%から38%に増加した。
・院内死亡率はコイリングと未治療患者では低下したが、クリッピング患者では変わらなかった。
・包括的脳卒中センターとしての病院の能力はCSCスコアはコイリングの増加とともに改善したが、患者の転帰とは関連しなかった。
2010→2015年の日本のくも膜下出血治療ではクリッピング割合は減少した。クリッピングの院内死亡率は変わらなかった。病院能力の向上はコイリング増加と関連していたが、院内転帰の改善には影響しなかった、
というおはなし。
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感想:
未治療患者の統計を示している例はあまり見ないので関心をもった。
どの報告もそうだけど、未治療群は重症度が高い、超高齢、手術困難で治療する意義なしと判断された、もしくは治療寸前で亡くなってしまった患者の寄せ集めになるので転帰は最悪のはず。
そのわりには、上のグラフみると死亡を含む転帰不良(mRS3-6)の割合が、未治療群と治療群でおおきな違いが感じられない。
くも膜下出血で動脈瘤を治療したほうが良いことを証明するためのランダム化比較試験をいまだに実施せず避け続けているのだから、
そういうことなんだとおもう。