元
A NeuroD1 AAV-Based Gene Therapy For Functional Brain Repair After Ischemic Injury Through In Vivo Astrocyte-To-Neuron Conversion
2019 9月 アメリカ
哺乳類の脳は海馬や脳室下帯をのぞいて神経再生機能をもっていない。そのため虚血で損傷した脳組織が自力で再生できる割合は失われた神経の1%にも満たないとされている。
神経前駆細胞を外部から導入する実験では動物や人で期待できる成果が得られている。
いっぽう神経幹細胞の導入には免疫拒絶や腫瘍化など問題がおおい。
さいきん、脳に豊富にあるグリア細胞(アストロサイト)を神経細胞に変身させる転写因子「NeuroD1」が実験室レベルでみつかった。
これを実際に脳の中で働かせることができれば失われた神経細胞を再生でき、しかももともと周辺にあった細胞なので機能回復に好都合かもしれない。
そのための技術を開発し動物で実験してみたそうな。
望む位置のグリア細胞にNeuroD1を発現させるために 必要なDNA配列をもったベクターウィルス (adeno-associated virus:AAV)を造った。
脳卒中ネズミで実験したところ、
次のようになった。
・目標組織にAAV感染させることで、脳虚血で失われた神経細胞の3分の1を再生することができた。またダメージを受け瀕死のニューロンの3分の1を護ることができ神経の回復につながった。
・アストロサイトから神経細胞への転換はmRNAとプロテインレベルで確認できた。
・2ヶ月後には再生した神経細胞でシナプス反応を確認できた。
・再生した神経細胞からのロングレンジの軸索投射も確認できた。
・運動と認知機能でのあきらかな改善がみられた。
NeuroD1を介した細胞転換による遺伝子治療は、神経を大幅に再生し失われた機能を取り戻すことができるかも、
というおはなし。
感想:
AAV自体はすでにFDA認可のあるウィルスなんだって。
よそから細胞をもってくるのではなく、もともとたくさんあるグリア細胞を利用する戦略がある。↓
脳の損傷部位にあらたな神経細胞を誘導する方法
ミクログリアを味方にして慢性期脳梗塞を治療する方法
刺激豊富な環境っていうけど、どの刺激がいいの?
ダメージを負った脳組織が勝手に再生する仕組みが明らかに