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Procedural Clinical Complications, Case-Fatality Risks, and Risk Factors in Endovascular and Neurosurgical Treatment of Unruptured Intracranial Aneurysms: A Systematic Review and Meta-analysis
2019 3月 オランダ
未破裂脳動脈瘤は一般人の3%にみつかり、画像診断技術の進歩であらたに発見される未破裂脳動脈瘤の数は増加傾向にある。
脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血になる。このときの平均年齢は60歳で 致命率はおよそ35%である。
未破裂脳動脈瘤を治療することでくも膜下出血を防ぐことができると信じられている。
その方法には 血管内治療(endovascular treatment:EVT)と神経外科治療(neurosurgical treatment:NST)がある。
EVTはコイルやフローダイバーターを、NSTはクリッピングを指す。
これらの治療には合併症のリスクが伴うため 未破裂脳動脈瘤の治療は破裂リスクと治療合併症のリスクとのバランスで決定される。
これら合併症のリスクを評価したメタアナリシスは2013年が最新で、当時はEVTが少なくNSTと区別して評価していなかった。
そこで、EVTとNSTをわけてそれら合併症率と致命率についてのメタアナリシスをあらためて試みたそうな。
2000 Jan.以降の関係する論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、
次のことがわかった。
・被験者106433、脳動脈瘤108263個を含む114の研究がみつかった。
・EVTの74の研究から、合併症率は4.96%、致命率は0.30% となった。
・EVTの合併症関連要因は、女性、糖尿病、高脂血症、ネックの広い動脈瘤、後方循環動脈瘤、ステント使用、だった。
・NSTの54の研究から、合併症率は8.34%、致命率は0.10% となった。
・NSTの合併症関連要因は、年齢、女性、抗凝固薬、喫煙、高血圧、糖尿病、後方循環動脈瘤、動脈瘤の石灰化、だった。
未破裂脳動脈瘤をコイルやクリップで治療するばあいの合併症率と致命率をそれぞれあきらかにすることができた、
というおはなし。
感想:
コイル致命率はクリップの3倍で、クリップは12人に1人が重い合併症を負うってこと。
ところで、
1999年のStroke誌に日本の研究が載っている。↓
Risk of subarachnoid hemorrhage after surgical treatment of unruptured cerebral aneurysms
未破裂脳動脈瘤をクリップ治療した100人以上を長期フォローした結果、くも膜下出血の発生率が20年間で12.4%あったという内容。
これは直線近似すると年率0.6%に相当して、未破裂脳動脈瘤の自然破裂率とほとんど変わらない。
つまり未破裂脳動脈瘤をクリップ治療したところでくも膜下出血が防げるわけでもなんでもなく、むしろ手術による合併症のリスクがあるぶん治療行為は「まったくの損」であると考えることもできる。