元
Noninvasive Vagus Nerve Stimulation Prevents Ruptures and Improves Outcomes in a Model of Intracranial Aneurysm in Mice
2019 4月 日本
脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は死亡率が非常に高く 重い障害を残す可能性がある。
脳動脈瘤の発生から成長、破裂その後の回復には炎症反応がおおきく関与していると考えられている。
薬物的に炎症を抑えて動脈瘤の生成を抑える動物実験はあるものの、臨床応用には至っていない。
いっぽうてんかんやうつの治療に用いられている迷走神経刺激(Vagus nerve stimulation:VNS)療法には抗炎症効果が期待できることがわかっている。しかし刺激装置を体内に埋め込む必要があったため臨床応用の壁になってきた。
さいきんになって非侵襲的に皮膚のうえから頸部の迷走神経を刺激する装置が認可された。
そこでこの装置をつかってVNSが頭蓋内脳動脈瘤の破裂と予後におよぼす影響を動物でくわしく実験してみたそうな。
軽症高血圧と重症高血圧にしたネズミについて、
タンパク質分解酵素を脳脊髄液に注入して脳動脈瘤の発生をうながした。
並行して経皮的な頸部迷走神経への電気刺激VNSを20日間おこなった。
VNSは1日に2分間の刺激を5分あけて2回おこなった。
コントロールとして同様の刺激を大腿神経に対して行いFNSとした。
脳動脈瘤の破裂率、生存率、などをくらべたところ、
次のことがわかった。
・軽症高血圧では破裂率は29% vs. 80%でVNSが非常に低かった。
・くも膜下出血の重症度もまたVNSが低かった。
・重症高血圧では破裂率は77% vs. 85% でいずれも高かった。
・しかし生存日数の中央値は 13日 vs. 6日と、あきらかにVNSが長く、くも膜下出血の重症度によらなかった。
・VNSを継続することにより脳動脈瘤の発生要因の1つと考えられるタンパク質分解酵素MMP-9の発現がFNSよりも減少していた。
迷走神経刺激は脳動脈瘤の破裂率を低下させ 破裂後の生存率をも改善できる、
というおはなし。
感想:
迷走神経刺激方法として、頸動脈洞マッサージ、ヴァルサルヴァ手技、冷たい水で顔を洗う、眼球を押す、などがある。
副交感神経を支配していることから、深呼吸や瞑想でリラックスしても似たような効果が得られるんじゃないかと思う。
もしくは今回使用した装置↓をつかう。
gammaCore device (electroCore, BaskingRidge, NJ).
これほどまでに破裂を防げるのなら、命がけでクリップやコイル手術を受ける必要ないね。
Stroke誌:高齢重症くも膜下出血を手術する理由?
Stroke誌:クモ膜下出血で手術をしなかったときの死亡率
[迷走神経刺激]の関連記事