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2018年12月31日

夜間の頻尿、なかなか出ない、キレがわるい


Post-stroke lower urinary system dysfunction and its relation with functional and mental status- a multicenter cross-sectional study
2018  12月  トルコ

夜間頻尿や切迫感、失禁、残尿などをともなう「下部尿路機能障害」は末梢神経や脊髄 中枢神経系の健全性と関連があり、脳卒中経験者のおおくがその症状をもつという。

これら症状の有無と認知機能およびQoLの関連をくわしくしらべてみたそうな。


2015-2016 トルコ6箇所の病院での脳卒中患者260人について、

下部尿路症状のアンケートおよび生活自立度(Modified Barthel Index)、QoL(Incontinence Quality of Life Questionnaire),認知機能検査(Mini Mental State Examination)をおこなったところ、


次のことがわかった。

・93.5%が少なくとも1つ以上の下部尿路症状を報告していた。

・もっともおおかった症状は 夜間頻尿(nocturia)の75.8%だった。

・下部尿路症状でとくに失禁をともなう患者の生活自立度、QoL、認知機能検査はあきらかに低い評価だった。

下部尿路機能障害は脳卒中患者にとてもありふれていて、認知機能や生活自立度 QoLの不良と関連があった、

というおはなし。

図:下部尿路症状
Hesitancy:出るまでに時間がかかる。 Straining:腹圧をかけないとでない。Dysuria:排尿時の痛み。 Terminal dribbling:だらだらと長く続く。


感想:

上の表が症状リスト。さいきんきになってきた。3-4つあてはまる。
隣に人が立つとでにくくなってしまうことがもともとあった。
慢性期脳卒中の下部尿路症状について

2018年12月30日

若年脳梗塞の1年後 男女のちがい


Sex differences in clinical characteristics and 1-year outcomes of young ischemic stroke patients in East China
2018  12月  中国

若年者の脳梗塞発生率は上昇傾向にあり、長期的な死亡率は同年代の一般人にくらべてかなり高いという。

彼らの長期的回復の男女差の研究は少なく、ある調査では死亡率は男性が高く、別の調査では女性の回復不良がおおいとする相反する結果がえられている。
しかも中国人での調査はまだない。

そこで中国人について脳梗塞男女の長期の回復度のちがいをしらべてみたそうな。


南京第一病院での50歳未満の脳梗塞患者228人について、
12ヶ月後に死亡または重い障害を負っているリスクを男女別に比べてみたそうな。


次のようになった。

・入院時の収縮期血圧は 130 vs. 138mmHg で女性があきらかにひくかった。

・mRSスコア3-6の回復不良患者は女性におおく、

・脳卒中歴、入院時の神経症状の重さ、肺炎などの合併症で調整したあとの回復不良リスクは男性の3.45倍だった。

若年脳梗塞患者の長期の回復度には男女でおおきなちがいがあり、12ヶ月後の回復不良可能性は女性で高かった、


というおはなし。

図:若年脳梗塞患者の回復不良要因


感想:

理由はわからないけど若い中国人女性には心房細動がおおい(14.8%  vs  5.4%)から ではないかっていってる。

2018年12月29日

身長と脳卒中 まとめ


Sex-specific relationship between adult height and the risk of stroke- A dose-response meta-analysis of prospective studies
2018  12月  中国

身長は遺伝のほかに環境要因として栄養状態や社会経済的状況を反映すると考えられ、これまでもおおくの研究で健康マーカーとして扱われてきた。

身長と脳卒中リスクについてもいくつもの研究があるが かならずしも一致した結論がえられていないので、メタアナリシスをこころみたそうな。


関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・成人の男性200万人と女性75万人をふくむ20の研究がみつかった。

・身長と脳卒中リスクは逆相関にあり、身長が5cm高くなると脳卒中リスクは男性で0.93倍、女性で0.88倍になった。これは非線形の用量関係にあった。

・男女のあきらかな脳卒中リスクの差は確認できなかった。

・脳卒中の種類別にも同様だったが 脳梗塞よりは脳出血でやや関連がつよかった。

身長が高いほど脳卒中リスクが男女ともにあきらかに低くなった、


というおはなし。

図:身長と脳卒中

感想:

身長的にはリスクひくいはずなのに脳が血を吹いたわ。

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2018年12月28日

若い経験者の長期的な死亡 再発リスク


Young Stroke Survivors With No Early Recurrence at High Long-Term Risk of Adverse Outcomes
2018  12月  カナダ

脳梗塞の発生率はぜんたいとして低下傾向にあるものの、45歳未満での脳卒中発生率は上昇傾向にあり8-21%におよぶという。

彼らは早期の高い死亡率や再発率が注目されているが、再発もなく退院できた患者の長期的な悪化の可能性についてはよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


カナダオンタリオの患者データベースから、
脳卒中で再発もなく退院できた44歳以下の患者13410人と45歳以上の250250人および、
それぞれの10分の1の人数の年齢や性別 収入などの一致する他の病気の患者を抽出して、

1,3,5,年後の死亡または再発など心血管疾患との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・若年脳卒中経験者の長期的な死亡や再発の率は高齢者よりもあきらかに低かったが、

・脳卒中経験のない同じ若年者と比べたときの1年後の死亡や再発リスクは7.3倍で、

・5年後でもそのリスクは血管疾患リスクを調整しても5.2倍に及んだ。

・高齢の脳卒中経験者と非経験者の比較では5年後のリスクは1.3倍だった。

若年脳卒中で再発もなく退院できた患者であっても、長期的にみると死亡や再発のリスクは、高齢者どうしの比較ではみられないほどに非常に高かった、


というおはなし。

図:若年脳卒中の長期死亡リスク

感想:

がん細胞は若い人ほど増殖が盛ん、っていうのとおなじように脳卒中に関係する何かの進行が速いとかあるのかな。

2018年12月27日

失語症は女性がなりやすいのか?


Sex differences in post-stroke aphasia rates are caused by age. A meta-analysis and database query
2018  12月  デンマーク

脳卒中患者の失語症の率は調査により15-68%と幅がある。さいきんのメタアナリシスでは約30%が失語症になるという。

これには男女のちがいも影響すると考えられている。いっぱんに女性の脳卒中のほうが重症であることから失語症は女性におおいとする考えと、言語機能がいっぽうの脳半球に偏る程度が男性のほうが強いことから失語症は男性におおくなるとする仮説があるがじっさいのところはよくわかっていない。

これを確認するべくこれまでの研究のメタアナリシスと、アメリカの公開データベースをつかってくわしくしらべてみたそうな。


失語症の性差に関係する研究論文を厳選してデータを統合 再解析した。

また、約200万人の脳卒中のアメリカ人患者を含む健康データベースをつかって、年齢や重症度を加えた解析をおこなったところ、


次のことがわかった。

・脳卒中で失語症の48362人をふくむ25の研究がみつかった。

・いずれの解析でも失語症率は男性より女性のほうが高かった。(約1.1倍)

・脳卒中の発症年齢で調整すると失語症率の有意な性差は確認できなかった。

脳卒中後の失語症率は女性で高かった。これは女性の言語機能のいっぽうの脳半球への偏りが小さいとする仮説に反するものだった。このような性差は患者の発症年齢のちがいで説明できそうだった、


というおはなし。

図:失語症年齢の男女の差

感想:

女性におおいにはおおいけど、女性だからなりやすいわけではなくて、長生きゆえにより高齢で脳卒中になるから症状が重くなって そのついでにってことなんだな。

2018年12月26日

てんかんを防ぐ補陽還五湯(ほようかんごとう)


The effects of Bu Yang Huan Wu Tang on post-stroke epilepsy- a nationwide matched study
2018  12月  台湾

脳卒中のあとのてんかん発作は患者の6-12%に起こるという。

伝統中国医学のうち漢方薬は台湾ではよく用いられ、とくに「補陽還五湯(ほようかんごとう)」はもっともおおく処方されている。

補陽還五湯の抗てんかん効果についてはよくわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


台湾の健康保険記録から脳卒中のあとの補陽還五湯の使用者、非使用者について他の条件がそろうようにそれぞれ8971人ずつ抽出した。

てんかん発作の有無を5-9年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・補陽還五湯グループはてんかん発作リスクが0.69倍だった。

・この関連は、脳出血、脳梗塞、TIAなどで同様だった。

・補陽還五湯の使用量とてんかん発作リスクには用量関係があり、多く使用する者ほどリスクは低かった。

脳卒中のあと補陽還五湯を使うことでてんかん発作のリスクが長期にわたり低下した。この関連は脳卒中の種類によらなかった、


というおはなし。

図:補陽還五湯のてんかん予防効果

感想:

補陽還五湯はなんどかでてきた↓。検索すると通販サイトで買えるようだ。
脳卒中治療にもっともよく使われる漢方薬が明らかに

脳梗塞実績No.1漢方薬 → ほようかんごとう

2018年12月25日

生まれたときの体重と脳内出血&くも膜下出血


Early Life Body Size in Relation to First Intracerebral or Subarachnoid Hemorrhage
2018  12月  デンマーク

いっぱんに脳内出血は男性におおく、くも膜下出血は女性におおい。またいずれも脳梗塞にくらべると若年者におおい。

出生時体重および子供時代の体重と脳梗塞リスクとの関連が確認されている。しかし脳内出血やくも膜下出血についてのそれはよくわかっていないのでしらべてみたそうな。


1936-1989に生まれた240234人について、出生時体重と7-13歳のBMIおよびその後の脳内出血やくも膜下出血との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・出生時体重が500g増えると、女性のくも膜下出血リスクが10%低下し、男性の脳内出血リスクが10%低下した。女性の脳内出血と男性のくも膜下出血との関連はなかった。

・男性では子供時代のBMIが平均を下回っていると脳内出血リスクが高かった。これは7歳よりも13歳のときの影響がおおきかった。女性での関連はみられなかった。

・子供時代のBMIとくも膜下出血との関連は男女ともになかった。

出生時や子供時代のボディサイズはのちの脳内出血やくも膜下出血のなりやすさと関連があり、男女でことなっていた、


というおはなし。
図:脳内出血とくも膜下出血の男女差
脳内出血とくも膜下出血の年齢と男女別 発生率


感想:

上のグラフ(右)みるとくも膜下出血はぜんぜん高齢者の病気じゃないんだな。

ついでに脳内出血が男におおい(左)こともいまさらながらに知ったよ。

2018年12月24日

くも膜下出血で認知障害がおきる条件


Predictors of cognitive function in the acute phase after aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2018  12月  ノルウェー

くも膜下出血経験者の65%は認知機能の低下をしめすという。たとえ身体機能になんの障害も残らなかった者であっても慢性期には認知障害になることがある。

急性期での認知障害の予測因子についての研究はおおくないのでくわしくしらべてみたそうな。


脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で手術をした急性期患者51人について、

認知障害テスト(global cognitive impairment index)をおこない、認知機能が良好(スコア0.75未満)と不良の患者を分類した。

関係するパラメータおよび退院時の生活自立度mRSスコアとの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・57%の患者が認知機能が不良だったが、そのおよそ半数はmRSまでが不良というわけではなかった。

・ほとんどの患者で遅延記憶(すこしまえの記憶)に影響があった。

・水頭症とあらたな脳梗塞が認知障害との関連がつよく、

・脳脊髄液の排出量が2000mlを超える場合はリスク6倍で、あらたな脳梗塞がおきた場合はリスク11倍だった。

急性期くも膜下出血患者の半数以上が認知障害を示した。これはかならずしも身体機能には反映しなかった。水頭症とあらたな脳梗塞が認知障害の予測因子と考えられた、


というおはなし。

図:認知障害テストとmRSスコア

感想:

くも膜下出血は脳梗塞とはちがって、頭痛や吐き気をがまんできるものならがまんして できるだけ病院にいかないほうがいいと考えている。

なぜなら治療と称しておこなわれる再出血予防のためのクリッピングやコイリング手術にはそのリスクに見合う効果があるとはとても思えないから。
※根拠↓

1) 再出血予防のクリッピング手術のRCTは存在しない。(by 治療ガイドライン(pdf))→60年代のCTもMRIもないころに得られた知見を検証しようともせずに盲信し続けているということ。

2) がまんして入院が遅れるほど死亡率は劇的に下がる。→手術を逃れて入院を2週間がまんした場合死亡率は 86→49%に、1ヶ月がまんで13%にまで下がる。

3) もっとも再出血しやすい24時間以内の手術にまったく効果がない。→「再出血が起きるから命が危険」理論はぜんぜんアテにならないってこと。


うかつに脳をいじらせないようにすれば水頭症やあらたな脳梗塞もおきず認知障害も減るんじゃないのかな。

2018年12月23日

NEJM誌:成人の4人に1人はいつか脳卒中 世界的に


Global, Regional, and Country-Specific Lifetime Risks of Stroke, 1990 and 2016
2018  12月  アメリカ
脳卒中による死亡や障害での全世界的負担の7-8割は中低所得国で発生しているという。これらの国々での脳卒中予防策は高所得国のそれとおおきくことなる。

ある年齢以上の成人が残りの人生で脳卒中になる確率を他の病気で死亡する可能性も考慮にいれて評価した「生涯リスク」がわかれば予防戦略の助けになる。

そこで195ヶ国で328の疾病について研究する「世界の疾病負担(Global Burden of Disease : GBD)スタディ2016」のデータを使って世界の脳卒中生涯リスクを評価してみたそうな。

2018年12月22日

Stroke誌:くも膜下出血の1年後を推定する方法


Home-Time as a Surrogate Marker for Functional Outcome After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
2018  12月  スイス

くも膜下出血の長期的な予後予測はむつかしく評価する者によっておおきくことなる。

いっぽう脳梗塞については 発症後一定期間内に自宅で過ごした時間がその後の回復度を反映し客観性のある評価を可能にするという報告がある。

これをくも膜下出血にたいしても応用してみたそうな。


スイス国内8病院のくも膜下出血患者1866人について、

発症後90日間に自宅で過ごした日数を調査し、退院時と1年後の生活自立度mRSスコアとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・自宅日数と退院時のmRSスコアは明らかな関連があり、特にmRSが0-4の範囲ではっきり区別ができた。

・同様に1年後のmRSスコアは0-3の範囲で自宅日数とあきらかに関連した。mRS4-5の範囲は区別はできなかった。

くも膜下出血のあと90日間に自宅で過ごした日数をみれば1年後の状態を、とくに回復良好者について簡単かつ正確に予測できた、


というおはなし。

図:自宅時間とくも膜下出血の1年後mRS


感想:

ようするに回復良いほど早く退院して家にもどるってことなんだけど、病院に残ってリハビリがんばる人もいれば病院にいても仕方がないので家に帰される人もいる。
だからこれで重症者をこまかく区別するのはむつかしい。

1年後mRSが2以下の回復良好者の条件は、上の図みると90日内の自宅日数がだいたい30日以上あることだから、入院後2ヶ月で退院できていないと望み薄いってこと。

2018年12月21日

昼寝リハビリの効果を検証


Can Daytime Napping Assist the Process of Skills Acquisition After Stroke?
2018  11月  ドイツ

脳卒中患者の運動学習は機能回復のための重要なテーマの1つである。

これまで夜間の睡眠のあとにつよい運動学習効果があらわれることがわかっている。日中の睡眠についても同様の効果が若年者や高齢者でも報告されている。

脳卒中患者についても日中の睡眠で運動学習がすすむものか、実験してみたそうな。


慢性期脳卒中患者30人について、
昼寝時間が a)なし、b)10-20分、c)50-80分 の3グループにわけた。

麻痺手をつかった視覚運動課題を計3セッションおこない、各前後でパフォーマンスを評価した。
セッション1と2の間に昼寝を、2と3の間に夜間睡眠をはさんだ。
睡眠状態は脳波をもって確認した。

その後、健常者30人の非利き手についても同様の実験をおこない比較した。


次のようになった。

・患者の運動パフォーマンスはセッションごとに向上したが、途中の睡眠による効果はまったくみられなかった。

・健常者との比較についても同様で、昼寝の効果はみられなかった。

運動課題のあとの1回の昼寝によるパフォーマンス向上効果は確認できなかった、


というおはなし。

図:昼寝の脳卒中リハビリ効果

感想:

実験室で「さぁ昼寝してください」って言われても眠れるかね? 脳波的には眠っていてもいつもの眠りではないわな。

これおもいだした。↓
ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ

2018年12月20日

Stroke誌:デュアルタスクで転倒を防ぐ


Dual-Task Exercise Reduces Cognitive-Motor Interference in Walking and Falls After Stroke
2018  12月  香港

脳卒中経験者では運動と認知機能が同時要求される二重課題のパフォーマンスが低下することがわかっていて、転倒との関連も指摘されている。

つまり脳卒中経験者の転倒はバランス能力の問題ではなく二重課題下での注意リソースの配分に原因がある可能性がある。

二重課題訓練が歩行パフォーマンスを改善するとするこれまでの研究のおおくは運動機能に重点をおいたものがおおく、歩行バランス能力が向上したのか単に注意の優先度を変えたのか区別がつかないうえにサンプル数も少なかった。

そこで、二重課題訓練による歩行および認知機能の両方を評価して おおくの被験者でくらべてみたそうな。


軽中程度の運動麻痺のある慢性期の脳卒中経験者84人をつぎの3グループに分けた。

*単一課題訓練(通常の歩行リハビリ)
*二重課題訓練(注意配分しながらの歩行)
*比較グループ(上肢訓練)

これを1回60分x週3回x8週間おこない、

この前後および8週間後に

歩行課題テスト:前方歩行、タイムアップアンドゴー、障害物ありの前方歩行および

認知課題テスト:言語流暢性テスト、連続引き算 、

の各組み合わせをおこなった。

歩行時間短縮効果と、単位時間あたりの正答率を評価 比較した。
その後6ヶ月間の転倒回数や社会参加、QoLも調査した。


次のようになった。

・二重課題訓練グループでのみ歩行タイムの短縮があった。とくに前方歩行+流暢性テストで9.5%、前方歩行+連続引き算で9.6%、TUG+流暢性テストで16.8% 改善した。

・この改善効果は8週間後も続いていた。

・認知機能テストは二重課題訓練による正答率のあきらかな変化はなかった。

・二重課題訓練により転倒数が22.2%減少し、25.0%の転倒リスク低下につながった。

・社会参加やQoLに変化はなかった。

歩行中の注意配分をうながす訓練により、二重課題時の移動能力および転倒数が減少した、


というおはなし。

図:転倒の原因
転倒の原因


感想:

すでにこの事実に気づいていたので、外出時には常にスマホONにしてポケモンを狩りながら歩くようにしている。そのおかげで現在トレーナーレベル32 まできた。
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2018年12月19日

地域の緑と脳卒中メカニズム


Association Between Residential Greenness and Cardiovascular Disease Risk
2018  12月  アメリカ

脳卒中など心血管疾患は居住する地域の住民の質や道路との位置関係に影響をうけることがわかっている。

いっぽう居住地域の草木の緑の多さは心血管疾患や呼吸器死亡率をさげるとする報告がいくつかあるが関連は低くメカニズムもあきらかでない。

そこで、居住地域の緑の多さと心血管疾患との関連をくわしくしらべてみたそうな。


ケンタッキー州ルイビルの住民408人について、
血液と尿サンプルを採り心血管疾患関連のバイオマーカーをしらべた。

かれらの居住する地域250m四方の植生指標を衛星データから求め、関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・年齢、性別、喫煙、貧困度、スタチン、道路状況を考慮にいれてなお、居住地区の植生指標と尿中アドレナリンレベルと脂質酸化指標であるF2-isoprostaneは逆相関にあった。

・特に尿中アドレナリンレベルとの関連は女性に顕著だった。

・また血中の血管新生細胞の15種類中11種類で植生指標と逆相関にあった。

居住地域に緑がおおいと交感神経の活動や酸化ストレスがさがり、血管新生能力が高まる、


というおはなし。

図:衛星センシングによる植生調査

感想:

しばらく東京に住んで勤めていたことがあるけど いつも緑に「飢えていた」。近所のゴミだらけの狭く汚い公園であっても木や草を見るだけで癒やされる感覚があった。

2018年12月18日

脳内出血がとまりにくい血液型


ABO Blood Type and Hematoma Expansion After Intracerebral Hemorrhage- An Exploratory Analysis
2018  12月  アメリカ

脳内出血で血腫増大があると予後がよくない。その要因には抗凝固薬の使用や個人ごとの血液の凝固しやすさの違いが考えられる。

ABO式血液型と脳卒中との関連はいくつもの報告があり、フォン ヴィレブランド因子(vWF)と血液凝固Ⅷ因子との関連が指摘されている。

そうであるなら、O型患者は他の血液型(A,B,AB)にくらべvWFが少なく凝固しにくいので血腫増大リスクが高いことになる。

このあたりを確かめるべく 脳内出血患者の血液型と血腫増大との関連をくわしくしらべてみたそうな。


脳内出血患者272人の血液型を調べ、
CT画像から確認した血腫の33%以上の増大ケース
および3ヶ月後の回復度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者内訳は、O型54%、A型30%、B型13%、AB型3%で、

・B型のみ血腫増大リスクがあきらかに高く、関連要因を調整しても他の血液型のおよそ2.8倍だった。

・3ヶ月後の回復度や死亡リスクとの関連はみられなかった。

血液型Bの脳内出血患者はあきらかに血腫増大しやすかった、


というおはなし。

図:

感想:

どういうメカニズムかは不明だが、じぶんもB型の脳内出血経験者だから他人事ではない。

いっぽう脳梗塞はAB型?↓
[血液型]の関連記事

2018年12月17日

Stroke誌:右の脳卒中は車にはねられやすい


Increased Risk of Traffic Injury After a Cerebrovascular Event
2018  10月  カナダ

脳卒中経験者の交通事故の遭いやすさは脳の損傷位置と関連すると考えられるがよくわかっていない。

そこで、重大な交通事故への遭遇と左右脳半球の損傷との関連を大規模にしらべてみたそうな。


脳血管イベント(TIAまたは脳卒中)の経験者26144人について6年間ほどフォローして、

*自動車運転中の事故で救急救命要請が必要になったケース または
*歩行中に自動車に接触して救急搬送されたケース、もしくは
*道路で自然に転倒して骨折や捻挫するケースを抽出した。

これらと脳血管イベントによる左右の脳損傷との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・運転中の事故は377件あり、率は年間1000人あたり2.2人で(一般人は1.7人)、損傷脳半球の左右でのちがいはなかった。

・歩行中に自動車に接触する事故は327件あり、年間1000人あたり1.9人で(一般人は0.4人)、その率は右脳損傷者におおく 2.1 vs. 1.7人で、

・関連要因を調整したリスクは左脳損傷者の1.27倍だった。

・転倒骨折等での脳半球の差はなかった。
脳卒中経験者は歩行中に自動車にはねられやすく 特に右脳損傷で顕著だった。彼らには運転教習レベルの歩行指導が必要だろう、


というおはなし。

図:交通事故 右脳左脳の脳卒中


感想:

右脳損傷で とくに車にはねられやすいのは、都会に住む若年者で神経症状が軽く障害の残らなかった人なんだって。

認知やられてる自覚がないままに歩行を舐めてるんだとおもう。もっと緊張感を持て ということかな。

2018年12月16日

慢性期脳卒中への幹細胞治療 その後


Two-year safety and clinical outcomes in chronic ischemic stroke patients after implantation of modified bone marrow–derived mesenchymal stem cells : a phase 1/2a study
2018  11月  アメリカ

日本企業が開発した幹細胞治療薬を患者に移植してから2年間が経ったそうな。


ドナーの骨髄から採取した幹細胞に遺伝子改変処理をして、慢性期の脳梗塞患者18人へ定位脳手術的に移植した。

このときの有害事象と機能改善効果を2年間フォローしたところ、

2018年12月15日

上肢麻痺へのミラー療法と振動療法


Mirror and Vibration Therapies Effects on the Upper Limbs of Hemiparetic Patients after Stroke- A Pilot Study
2018  11月  ブラジル

脳卒中患者の上肢麻痺の改善は日常生活上のもっともおおきなテーマである。その治療法としてミラー療法と振動療法がある。

おのおの治療メカニズムは異なると考えられるので、その効果をくらべてみたそうな。


脳卒中から12ヶ月未満で上肢麻痺のある21人について、

ミラー療法、振動療法(電動マッサージ器をつかう)、比較グループの3つにわけ、

1回15分間x週3回x4週間のセッションののち、
上肢の運動機能を3つの指標で評価 比較したところ、


次のようになった。

・3つの評価 Mobility Index Rivermead, Motor Function Wolf Test, Jebsen Taylor Test のいずれもミラー療法と振動療法でおおきくスコアが改善した。

ミラー療法と振動療法により脳卒中片麻痺患者の上肢運動機能がおおきく改善した、


というおはなし。

図:Wolf test MT VT 脳卒中


感想:

療法士さんが鏡に向かってブツブツ言ったり、電動マッサージ器をあちこちに当てたりすると「なにか特別なことをしてくれているんだなぁ」と察する。
そして機能テストを普段よりがんばってあげる。
だからスコアが伸びる。

治療に携わる方々は患者のやさしさに支えられていることを忘れないでほしい。

2018年12月14日

脳の損傷部位にあらたな神経細胞を誘導する方法


New neurons use Slit-Robo signaling to migrate through the glial meshwork and approach a lesion for functional regeneration
2018  12月  日本

動物にもとからそなわっている神経新生能力をもちいた脳損傷治療が注目されている。

成長がおわった動物でも脳室下帯ではあらたな神経細胞の産生がつづいていて、たとえば脳卒中がおきると脳室下帯から神経の前駆細胞(神経芽細胞)が脳の損傷箇所へ移動する。

このときグリア細胞であるアストロサイトが構成する細胞骨格がその移動を制限するためじゅうぶんな神経新生をおこなうことができていない。

これまで神経芽細胞がだすSlitタンパク質とアストロサイトのRobo受容体間のシグナル伝達で神経芽細胞の移動が誘導されると考えられてきた。

この神経芽細胞が移動しやすくなることで脳卒中の神経新生と機能回復をうながすことができるものか、実験してみたそうな。

2018年12月13日

施設送りにされないために必要な能力は


Executive function subdomains are associated with poststroke functional outcome and permanent institutionalization
2018  11月  フィンランド

脳卒中患者の認知機能の低下はじつにありふれていて、とくに実行機能(遂行機能)の障害は問題で、身体が順調に回復できた患者であっても34%が実行機能に障害を持つという報告がある。

実行機能はいくつもの認知機能が関わる前頭葉の高度なはたらきを指すと考えられていて、単一のテストでは評価することはできない。

たとえば、Trail making test は処理速度、Wisconsin card sorting test は注意切り替えと戦略立案、Stroop testは行動抑制、Verbal fluency test は想起検索、に関係するとされ実行機能の評価に用いられる。

そこで実行機能を構成するサブドメインのうち脳卒中患者の機能回復度と関係のふかい要素をみつけるべく くわしくしらべてみたそうな。


脳卒中患者62人について、
発症後3ヶ月と15ヶ月時点での実行機能に関連する7種類のテストをおこない、
生活自立度 mRS, IADLおよび その後の施設送りの有無との関連を解析して
健常者39人の結果と比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中患者は複数の認知機能テストで健常者よりもスコアが低かった。

・行動抑制、注意切り替え、想起検索、戦略立案、処理速度の各項目は患者の生活自立度スコアと相関があった。

・行動抑制、注意切り替え、処理速度は機能回復度と関連が強く、

・とくに 行動抑制力の低さは施設送りとの関連が強かった。

実行機能は脳卒中患者の機能障害と強く関連していた。とくに行動抑制力が低いばあい早くに施設送りになりやすかった、


というおはなし。

図:実行機能のサブドメインとテスト

感想:

行動抑制はストループテストで、たとえば ←の色を問われて「あお」と言いたいところをぐっとこらえて「あか」と答える能力。

これができないと 家族にうとまれ施設に入れられてしまうということか。

2018年12月12日

中低所得国で成果をあげている脳卒中リハビリとは


A systematic review of physical rehabilitation interventions for stroke in low and lower-middle income countries
2018  12月  アイルランド

脳卒中による障害や早死による世界全体の人的損失年数の78%は中低所得国で発生しているという。

これらの国々では脳卒中リハビリにあてられるあらゆるリソースが限定的であり高所得国の真似をすることができない。

そこで中低所得国で効果的とされる脳卒中の身体リハビリテーションの種類についてこれまでの成果をまとめてみたそうな。


中低所得国の成人脳卒中患者を対象とした身体リハビリテーションに関係する質の高い研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者2115人を含む62の研究がみつかった。大半はインドのものだった。

・内訳は、上肢関連が26件、下肢22件、その他14件だった。

・研究の質的には、強7件、中16件、弱39件と分類でき、

・全体として身体リハビリテーションにより患者の回復が促された。

・特にエビデンスレベルが高かったものは、CI療法とミラーセラピーによる上肢リハビリおよび、

・運動イメージ訓練による歩行リハビリだった。

・次いで、立ち上がり訓練(sit-to-stand training)でのバランス改善効果だった。

中低所得国の脳卒中リハビリ研究の結果、ミラーや運動イメージによる脳内トレーニングおよび上下肢の繰り返し運動が効果的でかつ低コスト シンプルな方法として評価されていた、


というおはなし。

図:中低所得国の脳卒中リハビリ


感想:

むしろこういう環境でこそ真の実力が試される。

CI療法(=課題指向型訓練)はナンセンスであることが最近あきらかになったので除外するとして、

ミラーセラピーの発案者はインド人だから一番人気は納得。

そして安定のメンタルプラクティス(運動イメージ訓練)か。

2018年12月11日

メンタルプラクティスの上肢リハビリ効果


Mental practice for upper limb motor restoration after stroke- an updated meta-analysis of randomized controlled trials
2018  12月  中国

脳卒中上肢麻痺のリハビリにはいくつもの方法がある。
しかしこれまでもっとも頼りにされてきた特定動作の繰り返し(課題指向型訓練)には効果がないことが最近わかってきた。

メンタルプラクティスは実際の動作を行う必要がないことから重症患者にも適用でき、安全かつ簡単で退院後も続けることのできるリハビリ方法として期待されている。

過去のメタアナリシスでは評価方法のばらつきがおおきくその効果をあきらかにできていなかった。

そこで最新の研究をふくめてメンタルプラクティスのメタアナリシスを再度こころみたそうな。


メンタルプラクティスによる脳卒中上肢リハビリの論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者268人を含む12の研究がみつかった。

・Egger's testでは出版バイアスは見られなかった。

・メンタルプラクティスにより上肢運動機能FMAスコアがあきらかに向上していた。

・同様に上肢機能ARATスコアもおおきな改善をしめした。

・これらの関連は任意の研究データを除外しても影響を受けず保たれていた。

メンタルプラクティスは脳卒中上肢麻痺のリハビリに有効である。ぜひ推奨したい、


というおはなし。

図:

感想:

メンタルプラクティスと運動イメージ訓練(motor imagery)は同じ。これに場の雰囲気やじぶんの気持ちを加えた脳内リハーサルを総称して「イメージトレーニング」とよぶ。


これまでも上肢リハビリがいろいろあるなかで唯一まともそうなのがメンタルプラクティスだった。↓
Stroke誌:上肢リハビリ 良い方法 & ダメな方法

2018年12月10日

禁煙効果があらわれるまでの年数


Association of smoking with risk of stroke in middle-aged and older Chinese- Evidence from the China National Stroke Prevention Project
2018  11月  中国

喫煙の健康への影響はよく研究されている。

しかし中高年の東アジア人についての喫煙と脳卒中との関連はほとんどわかっていないので、くわしくしらべてみたそうな。


2013-2015に中国の深セン市で40歳以上の男女12704人についてアンケート調査したところ、


次のことがわかった。

・85.08%は喫煙経験の無い者で、12.10%が現在喫煙者だった。

・524人が脳卒中経験者で、男性の4.06%、女性の2.95%に相当した。

・喫煙者の脳卒中リスクは非喫煙者の1.67-1.93倍で、

・一日の喫煙本数が10本以下→21本以上のとき、リスクは1.48→2.37となった。

・喫煙年数は、20年未満→40年以上のばあい、リスクは0.51→2.01となり、

・禁煙年数との関連は、5年未満→5-19年→20年以上のばあい、リスクは3.47→3.37→0.95となった。

喫煙による脳卒中リスクは本数に従い上昇した。禁煙期間が20年を超えるとそれまでの影響を相殺できた、


というおはなし。

図:喫煙と脳卒中


感想:

中国人はみなタバコ吸いまくってる印象があったけど喫煙率低くておどろいた。

いまや健康リスク承知のうえで吸っているってことだから、すきにさせてあげたらいいとおもう。

2018年12月9日

高齢の高血圧のうち薬の効かない患者の割合


Prevalence and characteristics of apparent treatment-resistant hypertension in older people in China- a cross-sectional study
2018  12月  中国

中国では18歳以上の高血圧は23.2%で、65-74歳の高齢者に限ると55.7%が相当する。

3種類以上の薬を飲んでも血圧をじゅうぶんに下げることのできない患者を治療抵抗性高血圧(treatment-resistant hypertension:TRH)とよぶ。

これまでの調査からTRHは、18歳以上では13-16%に見られる。しかし高齢者ではよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2012-2015の60-75歳の高血圧患者3774人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・彼らの75.1%は降圧治療を受けており、40.7%が降圧目標を達成できていた。

・TRHは5.97%だった。

・TRHで かつ降圧薬4種類以上は3.29%いた。

・TRH患者は、非TRHにくらべ 肥満(29.61% vs 20.53%)、高脂血症(26.03% vs 19.26%)、糖尿病(34.31% vs 25.64%)、脳卒中(26.03% vs 19.26%)がいずれもおおかった。

・とくに男性または糖尿病がTRHのリスク要因だった。

・定期的な運動をしている患者のTRHリスクは低かった。
高齢者の高血圧のうち、治療抵抗性のある者は5.97%いた。男性または糖尿病がそのリスク要因だった。彼らには定期的な運動がのぞましい、


というおはなし。

図:治療抵抗性高血圧のリスク

感想:

降圧薬を4種類も積まれて平気なのか? そのメンタルこそが要治療だとおもうぞ。

2018年12月8日

ランセット誌:脳卒中の抗うつ薬は役に立たない


Effects of fluoxetine on functional outcomes after acute stroke (FOCUS)- a pragmatic, double-blind, randomised, controlled trial
2018  12月  イギリス

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチンは脳卒中患者への抗うつ薬としてよく用いられている。

これまでのいくつかの研究で、フルオキセチンが患者の脳の可塑性を高め神経新生をうながし機能回復が進むとする報告がなされている。2011年には100人規模の臨床試験も行われていて期待できる結果が得られている。

脳卒中患者への抗うつ薬フルオキセチンがほんとうに機能回復に役立つものかどうか、大規模にしらべてみたそうな。


2012-2017の急性脳卒中患者1564人にフルオキセチン20mg/日を与え、同人数の偽薬グループと6ヶ月後の生活自立度mRSスコアを比較したところ、

2018年12月7日

後方循環系の脳梗塞の予後


Is Functional Outcome Different in Posterior and Anterior Circulation Stroke
2018  11月  オーストリア

後方循環系の脳卒中(posterior circulation stroke:PCS)は脳梗塞全体のおよそ20%をしめる。前方循環系のそれ(anterior circulation stroke:ACS)との予後比較の良し悪しは調査の規模や血栓溶解治療の有無によりことなる。

これを大規模にしらべてみたそうな。


オーストリアの脳卒中患者データベースからPCS4604人、ACS4604人を抽出して、3ヶ月後の回復度mRSを比べた。

各グループともに477人ずつr-tPA治療を受けた者を含めた。


次のことがわかった。

・3ヶ月後の回復度は 有意にACSグループが良かった。

・とくに発症時間不明または発症から入院まで4時間半以上経ったPCSグループの回復度は悪かった。

・しかしrt-PA治療に間に合った患者についてはACSとPCSで回復度に差はなかった。

後方循環系の脳卒中でrt-PA治療に間に合わなかったもしくは発症時間が不明の患者は前方循環系患者よりも回復がよくなかった、


というおはなし。

図:mRS PCS ACS

感想:

ほんのちょっとの違いだな。↑

2018年12月6日

Stroke誌:太い動脈がキッチリ詰まっているときの2症状


Large Vessel Occlusion in Acute Stroke - Stroke
2018  10月  ドイツ

主幹動脈の閉塞でアルテプラーゼをつかった血栓溶解治療をおこなったあと、残った血栓を掻き出す機械的血栓除去術をおこなうことがある。

しかし機械的血栓除去術ができる施設は限られているので、救急搬送まえにその必要の有無を判定できることが望ましい。

主幹動脈の閉塞と機械的血栓除去術の必要性を入院まえに判定する方法がいくつも提案されてきた。おおくは運動機能に着目したものであるがその精度は低い。

今回、運動機能によらず皮質症状である失語と空間無視からその判定ができるものかくわしくしらべてみたそうな。

2018年12月5日

若年患者の認知能力


Prevalence and short-term changes of cognitive dysfunction in young ischemic stroke patients
2018  11月  オーストリア

55歳未満の若年脳卒中患者は増加傾向にあり、脳卒中ぜんたいの18.6%をしめている。

かれらの回復は身体機能的には良好なものの、認知機能や神経心理的にはかならずしも順調とはいえない。

そこで若年脳卒中患者の認知障害の率とその後をくわしくしらべてみたそうな。


2016-2018に18-55歳で脳梗塞入院した患者114人について、

入院時(BaseLine)と3ヶ月後(FollowUp)での次の各検査をおこない比較した。

認知障害度 Montreal Cognitive Assessment (MoCA)
情報処理速度と注意力 Symbol Digit Modalities Test (SDMT)
遂行機能 Comprehensive Trail Making Test(CTMT)
言語流暢性 Regensburger Wortflüssigkeitstest(RWT)


次のようになった。

・入院時、半数前後が情報処理スピード、遂行機能、注意力、認知機能全般のあきらかな低下をしめした。

・3ヶ月後、言語流暢性を除く認知機能のおおくは改善した。

・しかし3分1のに相当する患者はいまだ認知障害レベルにあり、

・とくに遂行機能、情報処理スピード、注意力に障害が残った。

若年の脳卒中患者には認知機能の低下が高率にみられた、


というおはなし。

図:若年脳卒中の認知症者率
入院時と3ヶ月後の認知障害者率


感想:

でも本人には自覚がないからすぐに自動車運転をはじめる。しかも手足がよわったぶんを補うべく車格アップをこころみる。なんとおそろしいことか。

2018年12月4日

グーグル:8ミニッツ

いわゆるGoogle八分(はちぶ)を大好きな映画 ミッション:8ミニッツにかけてみた。この映画は列車爆破テロを防ぐために人生最後の8分間をくりかえし何度も経験するはなし。


今日は脳卒中記念日なので自分語りにつかう。

発症からまる10年経った。ブログは1年後に始めたので今日でちょうど9年間つづいたことになる。


忘れもしない昨年の12月6日、Googleがのちに「健康アップデート」と呼ばれる検索アルゴリズムの大幅な変更をおこなった。そして医療健康情報を発信する個人のサイトが検索順位の奥底に沈められた。

医療関連ワードのおおいこのブログもターゲットになり、たった一晩で来訪者の3分の2が消えた。

これは医療や健康にかんする検索結果の上位が広告収入を目的とするアフィリエイトサイトで独占されたことへの対策だった。

このアップデートにより医療キーワードの検索結果の上位には国の研究機関や製薬会社のページが優先的に表示されるようになった。


ここまでは世の流れとしてただしい。あるていどは予測できていたことでもあった。



ところがGoogleは息の根をとめにきているようなのである。

下のグラフはGoogleにインデックスされているこのブログのURLパターン数の最近1年間の推移である。

図:

12/6以降、数ヶ月間で100分の1になりさらにゼロを目指している様子がわかる。検索順位を下げるだけではなくその存在を抹消しようとしているとしか考えられない。


さすがにキーワード「ゼンデラ」で検索するとトップにはでるが、いまや「脳卒中関連」ワードでは検索結果の末尾にすら載ることはなくなった。

Yahooの検索エンジンもGoogleのそれと共通なので影響はおおきい。
まもなく検索経由で新たにこのブログと出会うひとはいなくなるだろう。


こういった状況に絶望した同様のニュースサイトを運営するおおくの個人やベンチャー企業がすでに更新をあきらめた。

アクセスがないから広告がつくはずもなく、自己承認欲求すら満たすことができないのだから無理もない。


脳がやられているせいかあまり気にもせずほぼ1年が経ってしまったが、いまさらながらに文章にして客観視するとかなり深刻な事態であることを実感する。


ここまでハブられるとは予想できなかった。気持ちが折れるのも時間の問題だろうか。



さきに紹介した映画はパラレルワールドがテーマ。

この状況をうまく乗り切れるじぶんがどこかの世界にいるはず。だから失敗してもつづきはそいつがやってくれると信じている。

2018年12月3日

JAMA Neurol.:小脳への磁気刺激で歩行リハビリ


Effect of Cerebellar Stimulation on Gait and Balance Recovery in Patients With Hemiparetic Stroke- A Randomized Clinical Trial
2018  11月  イタリア

脳卒中患者の歩行リハビリを促すあきらかに有効な方法はいまだ存在していない。

近年、動物実験で小脳への刺激が歩行能力の改善につながることが示されている。
また人のfMRIで麻痺側の小脳の活動と歩行の改善度が正の相関をもつことがわかってきた。

そこで脳卒中患者の小脳に、rTMSの一種でシナプスの長期増強をもたらすとされる間欠的シータバースト磁気刺激(iTBS)を与えたときの歩行能力の変化をくわしくしらべてみたそうな。


中大脳動脈域の脳卒中で慢性期の片麻痺患者34人について、
損傷脳半球と対側の小脳へiTBSを3週間継続した。

偽刺激グループにはコイルを90度傾けて対応した。

さらに3週間後までバランスや歩行能力、皮質活動をフォローしたところ、


次のようになった。

・リアル刺激グループで、バランス能力を示すBBSスコアが 34.5→43.4→47.5とおおきく改善した。

・運動機能(FMA)や生活自立度(BI)には変化はなかった。

・麻痺していない足の横方向への歩幅があきらかに減少した。

・後頭葉の活動が高くなった。

小脳への間欠的シータバースト磁気刺激で脳卒中片麻痺患者のバランス能力と歩行パラメータが改善した、


というおはなし。

図:小脳 間欠的シータバーストTMS

感想:

15年ほど前に じぶんの右手の指をうごかしたときのfMRI(←動画)。右の小脳がおおきく反応していて「こういうものなのか、、」とおもった。

[シータバースト]の関連記事

2018年12月2日

脳卒中のあとの3つの精神症状


Association Between Anxiety, Depression, and Post-traumatic Stress Disorder and Outcomes After Ischemic Stroke
2018  11月  アメリカ

脳卒中患者の精神症状については数多くの報告がある。うつや不安 PTSDの症状は4分の1~3分の1の患者が示すという。

これら3つの症状のうちうつに限定した報告はおおいが、3つすべてを扱ったものはすくないのでくわしくしらべてみたそうな。

2018年12月1日

コーヒーやお茶とくも膜下出血


Coffee and tea consumption and the risk for subarachnoid hemorrhage- A meta-analysis
2018  7月  中国

コーヒーには血圧や不整脈に影響するカフェインと抗酸化物質がふくまれていて、お茶にはさまざまなポリフェノール類が含まれていて降圧作用や抗血栓作用が期待されている。

コーヒーやお茶の摂取とくも膜下出血との関係についていくつもの研究があるものの、それらの結論はおおきく異なっているのでメタアナリシスをこころみたそうな。


これまでの関係する論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・コーヒーについて7件、お茶について5件の研究成果がみつかった。

・摂取量のもっとも少ないグループに対するもっとも多いグループのくも膜下出血リスクの比は、コーヒー1.31、お茶0.83 だった。

・エビデンスの異質性はコーヒーの研究に大きかった。

・用量反応解析では1カップ増えるごとにくも膜下出血リスクがコーヒー1.00、お茶0.97倍になった。

コーヒーやお茶とくも膜下出血との関連はみられなかった、


というおはなし。

図:コーヒー

感想:

いっぽう緑茶と脳内出血はポジティブな報告がおおい。だから毎日抹茶飲んでる。
緑茶を飲まないと脳内出血リスク1.24倍

毎日4杯以上の緑茶で脳内出血の予防になることが判明

緑茶とコーヒーを飲むと相互作用で脳出血リスクが3割減ることが判明

2018年11月30日

脳卒中後うつで抗うつ薬飲んでいる割合


Depression treatment use among stroke individuals with depression- A cross-sectional analysis of the Medical Expenditure Panel Survey
2018  11月  アメリカ

脳卒中患者のおよそ3分の1はうつ症状をしめし、うつがあると死亡率が50%高くなるという。

この対策として抗うつ薬や認知行動療法が適用されることがあるが その頻度はよくわかっていないのでしらべてみたそうな。

2018年11月29日

HIV感染者の脳卒中リスク


Cardiovascular disease and diabetes in HIV-positive and HIV-negative gay and bisexual men over the age of 55 years in Australia: insights from the Australian Positive & Peers Longevity Evaluation Study
2018  11月  オーストラリア

HIVの流行から時間がたち、感染者の40%以上が高齢化している。HIV感染者のおおくはゲイやバイセクシャルの男性(Gay and Bisexual Men : GBM)である。

また、抗レトロウイルス治療が脳卒中など心血管疾患や糖尿病リスクを上げるという報告もある。

そこで、HIVに感染した高齢GBMの心血管疾患リスクをくわしくしらべてみたそうな。


55歳以上のGBMで、HIV感染のある228人と、非感染の218人について病歴を調査したところ、


次のことがわかった。

・合併症の割合はいずれもHIV感染者におおく、心臓病(19.5 vs. 12.2%)、脳卒中(5.5 vs. 4.2%)、血栓症(10.5 vs. 4.2%)、糖尿病(15.0 vs. 9.0%)だった。

・このなかでも特に、心臓病と血栓症のリスクがあきらかに高かった。

高齢のHIV感染者は脳卒中や糖尿病との関連は見られなかったが、心臓病や血栓症リスクの上昇が確認できた、


というおはなし。

図:エイズウイルス

感想:

中国で受精卵にゲノム編集を施してHIV耐性のある双子を作ったというニュースがあったので関心をもった。

これ↓おもいだした。
性的少数者の脳卒中リスク

レズ、ゲイ、バイセクシャルは脳卒中になりやすいの?

2018年11月28日

家族歴 父 母 兄弟 リスク最強は?


Different Types of Family History of Stroke and Stroke Risk- Results Based on 655,552 Individuals
2018  11月  中国

家族歴は脳卒中リスクのおおきな要因の1つである。2004年のメタアナリシスでは家族歴があると脳卒中リスクが30%高くなることはあきらかになった。

その家族の内訳が父方、母方、兄弟でどれがいちばんハイリスクなのかについては調査により結論がことなっている。

そこでこれまでの研究をまとめてみたそうな。


1990-2017の関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者655552人を含む16の研究がみつかった。

・年齢、性別、他の関連要因で調整した脳卒中相対リスクは、父方で1.40、母方が1.36、兄弟1.44だった。

・コホート研究に限定して解析すると、相対リスクはそれぞれ、1.33、1.28、1.24で、

・サンプル数のおおきな研究に限定すると、それぞれ、1.30、1.30、1.26となった。
父方、母方、兄弟の脳卒中歴があるといずれも脳卒中リスクは高くなりそれぞれのあきらかな差は認められなかった、


というおはなし。

図:脳卒中の家族歴と相対リスク

感想:

じぶんは maternal history が豊富。

2018年11月27日

運動イメージ訓練に適した時間の長さ


Does the duration of motor imagery affect the excitability of spinal anterior horn cells?
2018  11月  日本

実際の運動をしなくても頭のなかで動作を思い描くだけで脳の関連領域が活性化し、神経伝達路の興奮性がたかまることが報告されている。これは運動イメージ訓練とも呼ばれ脳卒中患者のリハビリにも用いられている。

運動イメージ訓練のもっとも効果てきな時間については報告によりことなる。20年前のメタアナリシスによると、長ければ良いというわけでもなく20分程度が適当と結論している。

そこで、末梢神経を電気刺激したときに脊髄前角で返ってくるF波の観点から運動イメージ訓練に適した時間をしらべてみたそうな。


健常者11人について、左腕の正中神経を刺激して運動イメージ中のF波を測定した。

この間、母指球筋に力を込めるイメージを5分間継続した。


次のことがわかった。

・運動イメージ開始1分から3分後のF波はあきらかに増強していた。

・5分後にはそのレベルは低下し、主観的なイメージの質も大きく低下した。

運動イメージ訓練の継続時間は1-3分が適当であろう、


というおはなし。

図:

感想:

これは同感。具体的にイメージするほど頭がハンパなく疲れる。

2018年11月26日

日本人の脳梗塞とむずむず脚症候群


Restless legs syndrome and its variants in acute ischemic stroke
2018  11月  日本

日本でのむずむず脚症候群の有病率は1.8%で欧米の7-10%にくらべ低い。また、むずむず脚症候群は脳卒中との関連が疑われてもいる。

そこで日本人の脳梗塞患者についてむずむず脚症候群との関連をくわしくしらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者104人について、

むずむず脚症候群とその変異型(脚以外の部位のむずむず)の有無と脳の損傷位置を確認したところ、


次のようになった。

・計8人(7.7%)が該当した。(2人は変異型)

・脳卒中のあとに発症した者は3人で、脳卒中の2日以内に症状がでていた。

・脳卒中まえから症状がでていた者の40%は脳卒中後に症状が悪化していた。

・むずむず脚症候群では寝付きが悪かったが、日中の眠気、合併症や回復度に差はなかった。

・脳の損傷部位は延髄(25%)、橋(15.4%)、放射冠(14.8%)、基底核(3.8%)の順におおかった。

むずむず脚症候群は急性脳梗塞患者の8%にみられた、


というおはなし。

図:むずむず脚症候群


感想:

名前のひびきがおもしろいだけでチヤホヤされている病気。深刻さがまったく感じられない。

[むずむず脚症候群]の関連記事

2018年11月25日

マグネシウムと脳卒中後の認知障害


Low levels of serum magnesium are associated with poststroke cognitive impairment in ischemic stroke patients
2018  11月  中国

脳卒中後の認知障害はリスク要因として年齢や性別が挙げられるがこれらは対策のしようがない。

いっぽう急性脳梗塞患者では血中のマグネシウム濃度のあきらかな低下と回復不良との関連が報告されている。

動物実験でマグネシウムが学習や記憶力の改善効果をしめすことから脳卒中患者の認知機能にも関係していることが推測できる。

そこで、脳卒中後の認知障害と血中マグネシウム濃度との関連をくわしくしらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者327人の入院時の血中マグネシウム濃度と、1ヶ月後の認知症検査(MMSE)スコアとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・1ヶ月後32.1%の患者が認知障害と診断された。

・認知障害グループも非認知障害グループいずれも健常者よりもマグネシウム濃度があきらかに低かった。

・さらに認知障害グループは非認知障害グループよりもマグネシウム濃度がひくかった。

・マグネシウム濃度が0.82mmol/L以下だと認知障害になるリスクが高齢者と同様に高かった。
脳梗塞患者のうち入院時の血中マグネシウム濃度が低い者は1ヶ月後に認知障害になりやすかった、


というおはなし。

図:マグネシウムと脳卒中後の認知障害


感想:

マグネシウムは葉緑素を多く含むほうれん草などに多く、スパイスやナッツ、豆、ココア、全粒穀物にも含まれる。

これ↓おもいだした。
マグネシウムが少ないと脳動脈瘤が破裂する?

マグネシウムと脳卒中後うつ

食事から摂るマグネシウムの脳卒中予防効果

2018年11月24日

仕事での運動は脳卒中予防になる?


Occupational and leisure-time physical activity differentially predict 6-year incidence of stroke and transient ischemic attack in women
2018  11月  アメリカ

余暇時間の強い運動で心血管疾患リスクが低下することはあきらかになっている。

いっぽう仕事での運動強度と心血管疾患リスクとの関連はかならずしもあきらかでなく、最近のレビューでは仕事の運動強度が高いほど心血管疾患になりやすいという結論がでている。

これらの研究はおもに男性についてのもので、女性を対象とした調査はほとんどない。

そこで、仕事の運動強度と脳卒中やTIAとの関連を女性についてくわしくしらべてみたそうな。


35-74歳の女性31270人についてアンケートをとり、
仕事の運動強度を6段階に分類した。

脳卒中やTIAの発生を約6年間フォローして関連を解析したところ、


次のようになった。

・この間に 脳卒中441件、TIA274件があった。

・現在の仕事またはこれまででもっと長く勤めた仕事の運動強度が高いほど、立ち時間が長いほど脳卒中やTIAのリスクが高かった。

・ほとんど座っている仕事にくらべ現在仕事の運動強度が高いとTIAリスクが1.57倍で、

・もっとも長く勤めた仕事の強度が高いと脳卒中リスクは1.44倍だった。

・心血管疾患の既往のある者のリスクは座り仕事でも立ち仕事でも2倍近かった。

・余暇時間の運動強度は逆相関にあった。

女性は仕事での運動強度が高いほど脳卒中やTIAのリスクが高かった。心血管疾患の既往がある場合リスクはさらに高かった。いっぽう余暇時間の運動はリスク低下になった、


というおはなし。

図:仕事の運動強度レベル6つ

感想:

仕事ではじぶんのすきなタイミングでやすみを入れられず疲れきってしまう。そのけっか炎症がすすみ ついにはアテローム性動脈硬化になるから、っていってる。
ランセット誌:通勤や家事は脳卒中予防にならないの?

2018年11月23日

ビタミンEの脳卒中予防効果は?


Vitamin E intake and risk of stroke- a meta-analysis
2018  11月  中国

さいきんのメタアナリシスではビタミンEサプリメントは脳卒中予防に効果なしと結論がでている。
しかしこれらの研究で用いられたビタミンEは量がおおく調査期間も短かった。

食事から摂るビタミンEについても脳卒中との関連は調査によって異なっている。

そこで食事から摂るビタミンEと脳卒中との関連をメタアナリシスしてみたそうな。


関係する研究報告を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・3156の論文から9の研究(脳卒中3284件、被験者220371人を含む)を選んだ。

・ビタミンEの摂取量がおおいほど脳卒中リスクはさがった。とくにフォロー期間10年未満のグループで顕著だった。

・この関連は非線形で、どれか1つの研究を除いても結論は変わらなかった。

・脳出血リスクの上昇はなかった。

食事から摂るビタミンEと脳卒中リスクは逆相関にあり、おおく摂るとリスクは下がった、


というおはなし。

図:


感想:

だいぶんまえだけどこういう↓報告があった。
ビタミンEサプリで脳出血リクスアップ!

追記:

栄養素つながりで。

数日前のためしてガッテンで「エゴマ油の心血管疾患予防効果」が話題になった。翌日スーパーからエゴマ油が姿を消したという。

エゴマ油はω3脂肪酸であるαリノレン酸を多く含みシソ油ともよばれ、亜麻仁(アマニ)油も成分はおなじ。

ω3脂肪酸を多く含む魚油サプリメントをつかった最新の大規模実験では、、、↓
NEJM誌:魚油サプリメントの脳卒中予防効果
エゴマ油は予防ではなく脳ダメージの回復によいようだ。↓
これまでの[関連記事]

2018年11月22日

脳梗塞の回復不良と関係の深い遺伝子を特定


PATJ Low Frequency Variants Are Associated with Worse Ischemic Stroke Functional Outcome- A Genome-Wide Meta-Analysis - Circulation Research
2018  11月  スペイン

脳梗塞の予後は神経症状の重さや脳梗塞の種類、その他血管リスク要因を考慮にいれても個人によってかなりことなる。

その回復には遺伝的な要因も考えられるが どの遺伝子が関与しているのかは未だあきらかになっていない。

そこで、DNA配列1文字ぶんの変異(SNP)と疾病との関連を調査する「ゲノムワイド関連解析」のデータをつかって脳梗塞の回復に関係する遺伝子をさがしてみたそうな。

2018年11月21日

脳卒中になるライフスタイルのうち特に危険なもの


Prevalence of five lifestyle risk factors among U.S. adults with and without stroke
2018  11月  アメリカ

心血管代謝リスクになる5つのライフスタイル(栄養不足、運動不足、喫煙、飲酒、肥満)が、脳卒中経験者にどのくらい特徴的なのか 最新の大規模データからしらべてみたそうな。


アメリカの健康状態および健康行動についての電話調査データ(Behavioral Risk Factor Surveillance System)2015-2017を用いて、

脳卒中経験者と非経験者のライフスタイル上の違いを解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者37225人、非経験者851607人のデータがみつかった。

・運動不足(56.5% vs. 49.5%)と現在喫煙(30.1% vs. 16.6%)があきらかに脳卒中経験者に多く、

・大量飲酒者は(5.4% vs. 6.1%)脳卒中経験者に少なかった。

・野菜や果物を多く摂る食生活と肥満は関連要因を考慮に入れるとグループ間で有意な差はなかった。

・リスク要因を4-5つ持つケースは(9.0% vs. 5.3%)脳卒中経験者に多かった。

運動不足と喫煙、4-5個のライフスタイルリスクを持つ者が脳卒中経験者におおかった、


というおはなし。

図:脳卒中の5つのライフスタイルリスク


感想:

脳卒中をライフスタイルのせいにはしたくないけれど、運動不足とタバコだけは言い訳のしようがないみたいだ。

脳卒中は遺伝とライフスタイルのどっちが影響大?

2018年11月20日

遠隔虚血コンディショニングはいつはじめたらいいの?


Very Delayed Remote Ischemic Post-conditioning Induces Sustained Neurological Recovery by Mechanisms Involving Enhanced Angioneurogenesis and Peripheral Immunosuppression Reversal
2018  10月  ドイツ

脳卒中のあとに腕や脚の血流を一時的にとめて虚血状態にすることで脳神経を保護できるとする考え方があって、「遠隔虚血コンディショニング」とよばれ おもに動物実験で成果が得られている。

これら実験のおおくは脳卒中のあと24時間以内に虚血コンディショニングがおこなわれているが、臨床応用を考えると早期の適用は現実的ではない。

そこで有効なタイムウィンドウをしらべるべく120時間遅らせた場合で実験してみたそうな。


人為的に脳梗塞にしたネズミについて、
12時間、24時間、5日(120時間)後に両後脚を止血帯で10分しばり10分開放を3サイクルおこない、2週間ほど継続した。


次のようになった。

・梗塞のおおきさは、24時間以内に開始したグループではとても小さくなったが、5日後のグループではそれほどでもなかった。

・しかし神経症状の回復は24時間以内グループでは一時的なのにたいし、5日後グループは長期(3ヶ月間)に持続した。

・24時間以内グループでは熱ショックタンパク質HSP70が関与し、プロテアーゼの働きを弱め、炎症をおさえていた。

・5日後グループでは血管新生がふえ、各種の神経栄養因子、成長因子があきらかに増加していた。

脳卒中後の遠隔虚血コンディショニングはそのタイミングがおおはばに遅れても効果があった。大規模な臨床試験を期待する、


というおはなし。

図:遠隔虚血コンディショニングの長期効果

感想:

たいして危険そうでないので、臨床報告が待ちきれないひとは自分でやるか近所の加圧トレーナーにでも相談してみるといい。

[遠隔虚血]の関連記事

2018年11月19日

nature.com:急性期の脳機能結合と予後


Cerebral Motor Functional Connectivity at the Acute Stage- An Outcome Predictor of Ischemic Stroke
2018  11月  台湾

脳卒中の回復予測は神経症状の重さや梗塞の体積 位置をもとにしておこなわれているがあまりあてにならない。梗塞がちいさいからといって回復良好になるともかぎらない。

いっぽう安静時fMRIは通常のMRI検査に付け加えることができ、被験者に検査中の課題をあたえる必要がない便利なツールである。

安静時fMRIをつかうと脳の異なる部位どうしが同期して活動している程度(Functional Connectivity:機能結合)を評価することができる。

運動ネットワークの機能結合が脳損傷後の数時間内に低下することや運動障害の回復にともない変化することがわかっている。

これまで脳卒中の機能結合にかんする研究は急性期のものがほとんどなくサンプル数もとてもすくなかったので、急性期の患者をたくさんしらべてみたそうな。

2018年11月18日

前兆つき片頭痛は心房細動をまねく?


Migraine with visual aura a risk factor for incident atrial fibrillation- A cohort study
2018  11月  アメリカ

これまでの調査から片頭痛に視覚的な前兆(閃光や暗点、波線、視野のぼやけ)をともなうタイプは心原性の脳梗塞と関連があることがわかっている。

心房細動は心原性の脳梗塞の原因の1つでもあることから、前兆つき片頭痛で心房細動がおきやすくなっているものか くわしくしらべてみたそうな。


心房細動や脳卒中歴のない11939人について片頭痛と前兆、脳卒中を20年間ほどフォローしたところ、


次のことがわかった。

・426人が前兆つき片頭痛を経験し、1090人が前兆なしの片頭痛、1018人は片頭痛以外の頭痛、9405人は頭痛なしだった。

・心房細動は、片頭痛のあった1516人の15%に、頭痛のない9405人の17%にそれぞれみられた。

・前兆つき片頭痛の心房細動リスクは、頭痛なしにくらべて1.30倍で、

・前兆なしの片頭痛とくらべると1.39倍だった。

前兆つき片頭痛があると心房細動リスクが高かった。心房細動が片頭痛と脳梗塞を媒介しているのかも、、


というおはなし。

図:前兆つき片頭痛と心房細動 脳梗塞との関係


感想:

身近にいるので関心をもった。

[前兆 片頭痛]の関連記事

2018年11月17日

NEJM誌:ビタミンDサプリメントの脳卒中予防効果


Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease
2018  11月  アメリカ

日照量のおおい地域では脳卒中など心血管疾患やがんでの死亡が少ないという報告がいくつもある。

ビタミンDの関与が考えられるが因果関係はあきらかでない。ビタミンDサプリメントをつかった実験でも被験者1万人を超えるものはまだない。

そこでビタミンDサプリメントと心血管疾患やがんとの関連を大規模にしらべてみたそうな。


50代以上の男女25871人をサプリメント(1日2000IU)と偽薬グループにわけた。

心筋梗塞や脳卒中、さらにがんの発生を5.3年間フォローしたところ、


次のようになった。
・この間に心血管疾患はサプリメントグループで396件、偽薬グループで409件あった。

・がんはそれぞれ793件、824件だった。

・サプリメントによる心血管疾患リスクは0.96倍(脳卒中は0.95)、がんの死亡リスクは0.83倍で偽薬と有意な差がなかった。

ビタミンDのサプリメントを摂っても脳卒中やがんの予防にはならなかった、


というおはなし。

図:ビタミンDサプリメントと脳卒中リスク

感想:

うつ対策にはいいかも。
脳卒中後のうつと季節 日光浴のすすめ

2018年11月16日

上肢感覚リハビリの方法と効果予測


Initial severity of somatosensory impairment influences response to upper limb sensory retraining post-stroke
2018  10月  オーストラリア

脳卒中患者のおよそ半数は触覚や深部感覚の障害を経験する。しかしリハビリテーションはおもに運動機能にフォーカスしているため感覚障害はあつかわれないことがすくなくない。

上肢の運動機能障害に関しては Proportional Recovery Rule(比例回復則)があって、初期の障害程度に比例した自発的回復が予想できる。
しかし重度の障害患者ではこのルールに則らないことがわかっている。

そこで感覚障害患者に積極的な感覚リハビリをおこなったときに、その回復が初期の障害程度に比例するものか実験してみたそうな。


感覚の弁別能と認識能を再訓練するための方法 "SENSe therapy" (→7つの原理の 詳しいYoutubeリンク)を用いた2つの臨床試験のデータを用いた。

脳卒中で上肢感覚麻痺の80人の患者について、感覚訓練の効果を質感弁別、手首の深部感覚、触覚による物体認識について訓練前後で評価したところ、


次のことがわかった。

・訓練後の感覚障害の回復は訓練まえの障害程度に比例していた。

脳卒中で上肢感覚麻痺患者への感覚訓練の効果は、訓練まえの障害程度と比例関係にあり予測が可能だった。この感覚訓練は重度の感覚障害にも期待できる、


というおはなし。

図:脳卒中感覚障害の比例回復

感想:

比例回復則からのおちこぼれ(non-fitter)を救えるんだね この感覚リハビリは。
感覚障害も比例回復則するの?

2018年11月15日

NEJM誌:魚油サプリメントの脳卒中予防効果


Marine n-3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer
2018  11月  アメリカ

魚油におおくふくまれるn-3(オメガ3)不飽和脂肪酸は脳卒中など心血管疾患の予防に期待できるとされている。

その効果について小-中規模の臨床試験はあるが結果がまちまちである。

そこで、n-3不飽和脂肪酸サプリメントの心血管疾患予防効果を大規模にしらべてみたそうな。


50代以上の男女25871人をサプリメント(魚油1日1g:n-3不飽和脂肪酸840mg+EPA,DHA)と偽薬グループにわけた。

心筋梗塞や脳卒中、さらにがんの発生を5.3年間フォローしたところ、


次のようになった。

・この間に心血管疾患はサプリメントグループで386件、偽薬グループで419件あった。

・がんはそれぞれ820件、797件だった。

・サプリメントによる心血管疾患リスクは0.93倍(脳卒中は1.04)、がんのリスクは0.97倍で偽薬と有意な差がなかった。

n-3不飽和脂肪酸のサプリメントを摂っても脳卒中やがんの予防にはならなかった、


というおはなし。

図:n-3不飽和脂肪酸サプリの脳卒中予防効果

感想:

これ摂りすぎると心房細動からの脳梗塞になりやすいってはなしをおもいだした。↓
魚でふせげる脳梗塞と増える脳梗塞

2018年11月14日

脳動脈瘤が成長する条件


Risk factors for growth of conservatively managed unruptured intracranial aneurysms
2018  11月  アメリカ

未破裂の脳動脈瘤は成人の2-3%にみられる。かならずしも積極的に治療する必要はなくて、定期的にMRAなどで動脈瘤の成長を観察することになる。

未破裂脳動脈瘤の成長可能性と関連要因についてはよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


未破裂脳動脈瘤のある1532人のうち、
過去にくも膜下出血がなく、保存的に経過観察中で、
最後の画像診断から2年以内の349人の385個の脳動脈瘤について、

瘤の成長を6年半ほどフォローした記録を解析したところ、、


次のことがわかった。

・この間に64個の動脈瘤がおおきくなった。これは1年間あたり脳動脈瘤ぜんたいの2.9%に相当した。

・とくに発見された直後の3年間の成長が著しく年率7.5%におよび、その後は2.7%だった。

・瘤がおおきくなる要因として、サイズ(5mm以上)、位置(椎骨動脈の尖部)、体重減少(BMI低下)、があきらかに関連していた。

保存的に観察中の未破裂脳動脈瘤は年間2.9%がおおきくなった。これにはサイズ、位置、体重減少が関連し、発見直後の数年間に成長する瘤がおおかった、


というおはなし。

図:未破裂脳動脈瘤の成長率

感想:

「発見直後に成長」と「体重減少」がユニークでおもしろい。

たぶんこういうこと↓。

動脈瘤がみつかるとビビって急に摂生に努め食事を減らす。
栄養不足で血管壁がよわり動脈瘤がふくらむ。

数年経つと身体がなれて瘤が安定する。

2018年11月13日

脳卒中後のうつと季節 日光浴のすすめ


Impact of seasons on stroke-related depression, mediated by vitamin D status
2018  11月  中国

脳卒中後のうつは、さいきんのメタアナリシスによると5年以内に29%が経験するという。

いっぽうビタミンDは神経ステロイドともよばれ脳の発達や可塑性 保護 免疫と関係していて、
血中ビタミンDの低下とうつとの関連をしめす報告がふえている。

また 季節変化とうつとの関連をしめす報告もおおく、夏季にくらべ冬季にうつがふえる。

そこで、脳卒中後のうつの季節変化とビタミンDとの関連をくわしくしらべてみたそうな。

2018年11月12日

脳のここをやられると時間がわからなくなる


Does the insula contribute to emotion-related distortion of time- A neuropsychological approach
2018  11月  スイス

時間の認識には脳のひろいはんいがかかわっていると考えられている。その箇所の1つとして島皮質があげられるが どう働くのかはよくわかっていない。

これを脳卒中患者でしらべてみたそうな。


左または右の島皮質を損傷した脳卒中患者21人について、

主観的な時間間隔の識別能をしらべるために音響刺激をつかった時間二等分課題(temporal bisection task)をおこなった。

さらに音源として子供の泣き声などの感情をともなう刺激や中立的なものを使用してそれらの違いも観測した。


次のようになった。

・右島皮質の損傷患者は左損傷もしくは健常者にくらべ時間感度があきらかに低かった。

・感情音源による違いは健常者と差がなかった。

右の島皮質には時間を認識するとくべつなはたらきがあると考えられた。しかし感情の影響をうけるものではなかった、


というおはなし。

図:島皮質の損傷

感想:

いちばんひどいときに右の島皮質への直撃をくらってたから理解できる。音楽がわからなくなってたよ。
右の島皮質の梗塞は死亡率が高い その理由とは

失音楽症と関係する脳の場所がわかった

2018年11月11日

脳卒中をふせぐ昼寝時間がわかった


Joint effect of less than 1 h of daytime napping and seven to 8 h of night sleep on the risk of stroke
2018  5月  中国

いっぱんに昼寝は とくに高齢者にとって健全なライフスタイルの1つと考えられている。

これまでの研究から昼寝時間がながいと心血管疾患リスクが上がるとするメタアナリシスがある。

しかし脳卒中に限定して昼寝との関連をしらべた研究はほとんどないので大規模にやってみたそうな。


20-74歳の7887人を約5年間フォローしたところ、


次のことがわかった。

・昼寝なしで夜間の睡眠が7-8時間にくらべて、昼寝1時間以上では脳卒中リスク1.94倍、夜間睡眠9時間以上だと脳卒中リスクは2.24倍だった。

・さらに昼寝なし夜間睡眠7時間未満では 脳卒中リスクは2.61倍、

・昼寝1時間以上でかつ、夜間睡眠が7時間未満、7-8時間、8-9時間、9時間以上での脳卒中リスクはそれぞれ 2.16、2.36、2.41、3.37倍になった。

昼寝なしか1時間未満で夜間睡眠7-8時間のとき脳卒中リスクは低くかった。昼寝1時間以上かつ夜間睡眠9時間以上または昼寝なしか1時間以上でかつ夜間睡眠7時間未満のとき脳卒中リスクがもっとも高かった、


というおはなし。

図:脳卒中予防に適した昼寝時間


感想:

上の図がわかりやすい。

ゼロでも1時間以上でも良くないので、ちょっと昼寝するのがいいみたい。

2018年11月10日

コクランレビュー:動作観察の上肢リハビリ効果


Action observation for upper limb rehabilitation after stroke
2018  10月  ブラジル

脳卒中で上肢麻痺があると日常生活動作や社会参加のさまたげになる。

このリハビリ方法として「動作観察」がある。

健常者の動きを直接もしくはビデオで観察することでミラーニューロンシステムが刺激され、実際の運動動作とおなじ脳の活動をしめすようになるという。

動作観察療法は安全でかつ特別な装置やセラピストの監督も必要でないことからとても期待されている。

その効果をこれまでの研究からまとめてみたそうな。


脳卒中患者の手や腕の機能と動作観察療法に関係する2017年10月までの研究を厳選して、データを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者478人を含む12の研究がみつかった。

・ほとんどがビデオを観たあとに実際の動作をおこない、徐々に難度を高めてゆくものだった。

・おおむねポジティブな結果で、腕よりも手の機能改善効果が顕著だった。

・日常生活動作の改善効果もみられた。

・サンプルサイズが小さいなどエビデンスレベルは低かった。

動作観察で上肢運動機能や日常生活動作の改善がみられた。エビデンスの質が良くないのでしばらく見守りたい、


というおはなし。

図:動作観察

感想:

インド映画みてると一緒に踊りたくてそわそわしてくる感じがそれなのかな、、、とおもう。

2018年11月9日

魚でふせげる脳梗塞と増える脳梗塞


Substitution of Fish for Red Meat or Poultry and Risk of Ischemic Stroke
2018  11月  デンマーク


魚をおおくたべることは脳梗塞予防によいと考えられている。しかしこれまでの研究はトータルのエネルギー収支を考慮にいれていないことがおおかった。つまり魚を増やせば他の食材を減らさなくてはならない。

そこで、牛や豚、鶏といった家畜肉の代わりに魚を摂ったばあいの脳梗塞リスクを大規模にしらべてみたそうな。


50-65歳の57053人に食事アンケートをとり、脳梗塞の有無を13.5年間フォローした。

家畜肉を魚の等重量でおきかえた場合のモデルで脳梗塞リスクを原因別に解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に1879の脳梗塞があり、そのうち319はアテローム血栓性、102は心原性、844は小血管病変 だった。

・家畜肉を魚で置き換えることは脳梗塞のトータルの発生率には影響しなかったが、アテローム血栓性の脳梗塞リスクはあきらかに低下し、

・とくに脂肪のおおい魚で家畜肉を置き換えると、ラクナ梗塞リスクが低下した。

・しかし心原性の脳梗塞リスクだけは上昇した。とくに鶏肉を魚に替えた場合のリスクは1.42倍に跳ね上がった。

牛や豚 鶏の代わりに魚を摂ると、脳梗塞全体には影響なかったが、アテローム血栓性脳梗塞が減り、脂肪のおおい魚でラクナ梗塞も減った。しかし鶏肉を魚に替えると心原性脳塞栓症は増えた、


というおはなし。

図:肉を魚にしたときの脳梗塞リスク

感想:

魚に含まれるn-3不飽和脂肪酸をおおく摂りすぎると心房細動が増えるんだって。

2018年11月8日

性的少数者の脳卒中リスク


Cardiovascular Disease Disparities in Sexual Minority Adults- An Examination of the Behavioral Risk Factor Surveillance System (2014-2016)
2018  11月  アメリカ

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルといった性的少数者について関心が高まっている。

彼ら性的少数者と脳卒中など心血管疾患との関連についての研究はすくないのでくわしくしらべてみたそうな。


アメリカでの 電話による大規模な健康行動調査(Behavioral Risk Factor Surveillance System)の40万人近くのデータをつかって解析したところ、


次のことがわかった。

・男性はゲイが2.2% バイセクシュアルは1.5%で、女性はレズビアンが1.3%、バイセクシュアルが2.4% いた。

・性的少数者の男性は強い精神的ストレスやうつの率が高かった。

・異性愛者にくらべ ゲイの男性は現在喫煙者がおおく、肥満はすくなかった。

・性的少数者の女性の場合、強い精神的ストレス、うつ、現在喫煙、大酒飲み、肥満 がおおく、身体活動レベルは高かった。

・レズビアン女性は心臓発作はすくなく、バイセクシュアル女性には脳卒中がおおかった。

性的少数者の心血管疾患リスクは女性におおく、とくにバイセクシュアルの女性は脳卒中になりやすかった、


というおはなし。

図:ゲイ

感想:

LGBTをみとめることが進歩的とするさいきんの風潮にはどうしてもなじめない。

2018年11月7日

コクランレビュー:脳卒中の嚥下治療まとめ


Swallowing therapy for dysphagia in acute and subacute stroke
2018  10月  イギリス

脳卒中患者はしばしば嚥下障害を経験する。

嚥下障害により胸部感染症やQoLの低下、入院がながびくなどの問題が生じる。嚥下治療がこれらのリスクを下げ脳卒中からの回復をうながすと信じられている。

これまでの研究成果から脳卒中の嚥下障害の治療効果をまとめてみたそうな。


2018年6月までの関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者2660人を含む41の臨床試験がみつかった。

・嚥下治療の種類として、鍼、行動介入、投薬、神経筋電気刺激、咽頭電気刺激、物理刺激、tDCS、TMS があった。

・これら嚥下治療は死亡者や障害者数を減らす効果はなかった。

・嚥下機能スコア "Penetration-Aspiration Score" を改善する効果もなかった。

・ しかし、入院日数が短くなったり、肺炎になりにくかったり、嚥下障害が軽くなったりした患者がいないわけではなかった。

・どの治療法がもっとも効果的かはあきらかでなかった。

・エビデンスレベルは非常に低かった。

脳卒中後の嚥下治療にはさまざまな方法があるが、いずれもあきらかな効果は確認されていない、


というおはなし。

図:嚥下障害


感想:

ほとんどお手上げ状態、よくて気のせいレベルの改善。自発的な回復を待つしかないってこと。

このレビューで論文数がいちばん多かったのが「鍼」という時点で推して知るべしか。

2018年11月6日

Stroke誌:超早期リハビリと認知機能


Early Mobilization After Stroke Is Not Associated With Cognitive Outcome
2018  9月  オーストラリア

脳卒中のあとの認知障害や認知症はめずらしくない。

いっぱんに身体活動レベルが高いほど認知機能も良好であると考えられている。脳卒中患者についても同様の傾向がみられるという。

しかし早期リハビリの認知機能への影響はわかっていない。動物実験ではポジティブな報告があるものの、人間では脳循環を低下させ かえって認知機能を悪化させる可能性もある。

そこで、脳卒中患者への超早期リハビリと認知機能の関連をAVERT研究のデータからしらべてみたそうな。


56施設の脳卒中で、認知機能検査スコア(Montreal Cognitive Assessment)30以下の患者2104人について、
24時間以内にベッドから離床させ座位、立位、歩行などを行う「超早期リハビリ」と通常ケアのグループにわけた。

3ヶ月後の認知機能との関連を解析したところ、


次のようになった。

・年齢や脳卒中の重症度で調整したところ、3ヶ月後の認知機能スコアは超早期リハビリグループと通常ケアグループでまったく差がなかった。

脳卒中急性期の患者をできるだけ早い時期に動かしてみたものの、その後の認知機能にはなんの影響もなかった、


というおはなし。

図:超早期リハビリと認知機能

感想:

超早期リハビリは「危険」という報告がおおいなか、認知機能が悪化しなかっただけマシ。
コクランレビュー:超早期リハビリは効果ないし危ない

【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない
ほかにも↓
失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

2018年11月5日

失語症は腕を動かして治す


Robotic Arm Rehabilitation in Chronic Stroke Patients With Aphasia May Promote Speech and Language Recovery (but Effect Is Not Enhanced by Supplementary tDCS)
2018  10月  アメリカ

脳卒中を経験すると運動機能や感覚、認知、コミュニケーションに障害をもつことがある。これらを個別にリハビリしてゆくのはとても骨が折れるので、一石二鳥に回復できる方法が望まれている。

2007年に、ロボット支援の上肢訓練とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)の組み合わせで亜急性期脳卒中の失語症がよくなった、という報告があった。

これを慢性期患者でたしかめてみたそうな。


左脳の脳卒中で失語症の慢性期患者17人について、ロボット支援の右の上肢運動訓練を週3回x12週間おこなった。

訓練前にtDCSについて on/off のグループにわけた。

この間、失語症訓練は行わなかった。

訓練前後の失語症評価を比べたところ、


次のようになった。

・ぜんたいとして運動性発話能力(ディアドコキネシス)があきらかに改善した。

・失語症の 意味カテゴリー語想起(Category naming)と失語症評価(Western Aphasia Battery)スコアも改善した。

・tDCSは失語症の改善度にまったく関連しなかった。

上肢運動訓練がその領域をこえて失語症の回復をも促す可能性を示せた、


というおはなし。

図:上肢リハビリで失語症が回復

感想:

左腕を動かすと半側空間無視が治る、ってはなしと似ている。
左手を動かすと半側空間無視が改善するしくみをしらべてみた

左手を動かしてあげる → 半側空間無視対策

2018年11月4日

歯周病とラクナ梗塞の予後


Periodontitis as a risk indicator and predictor of poor outcome for lacunar infarct
2018  10月  スペイン

壊死組織のおおきさが1.5cm未満であるラクナ梗塞は脳小血管病に分類され 脳梗塞全体の25%を占める。

ラクナ梗塞はおおむね予後良好であるが、3分の1ほどは回復がよくない。そのリスク要因として高血圧や糖尿病が挙げられる。

さいきんのメタアナリシスでは、歯周病があるとアテローム血栓性の脳梗塞リスクが2.8倍になるという。

いっぽう歯周病と脳小血管病とその予後についての関係はよくわかっていない。そこで歯周病とラクナ梗塞についてくわしくしらべてみたそうな。


ラクナ梗塞の120人と健常者157人について歯周病の検査をおこない、3ヶ月後の回復不良者(mRSが2より大)との関連を解析したところ、


次のようになった。

・歯周病はラクナ梗塞患者にあきらかにおおく見られた。

・回復不良はラクナ梗塞の25.8%(31人)にみられ、そのうち90.3%は歯周病だった。

・歯周組織の炎症表面積が727mm2以上だとまずまちがいなく回復不良だった。

歯周病とラクナ梗塞は関連があった。歯周病が重いとラクナ梗塞の回復がよくなかった、


というおはなし。

図:ラクナ梗塞回復不良の歯周病率

感想:

脳内出血も脳小血管病だから関連あるだろね、、
Stroke誌:歯周病のグレードと脳梗塞リスク

2018年11月3日

シータバーストで半側空間無視がよくなる


The effect of theta-burst stimulation on unilateral spatial neglect following stroke- a systematic review
2018  10月  カナダ

半側空間無視の治療には視覚走査訓練、プリズムメガネ、アイパッチ、投薬などの方法があるがいずれも効果が短く、状況限定的である。

いっぽう非侵襲的な脳刺激法として経頭蓋磁気刺激(TMS)が治療に用いられることがある。これは脳半球間の拮抗モデルにもとずいて、片方の脳半球を活性化または抑制することで脳卒中によるバランスの崩れをただすという考え方で 半側空間無視にも期待されている。

さらに初期のTMSでは刺激パルスが単発的だったのにたいし、機器の進歩により高速にパルスを繰り出せるようになった。とくに可塑性が促されるとされる脳波のシータ波(4-7Hz)相当のリズムをもったTMSパルスの群れをシータバースト刺激(TBS)と呼ぶ。

シータバーストを間欠的(iTBS)または連続的(cTBS)にあたえる方法があり、それぞれシナプスの長期増強(LTP), 長期抑制(LTD)効果が得られるとされている。

そこで半側空間無視治療へのTBSの効果をこれまでの研究からまとめてみたそうな。


おもに脳卒中で半側空間無視になった患者へのTBS治療に関する論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者148人を含む9の論文がみつかった。

・8件がcTBSで1件がiTBSによるものだった。

・いずれの刺激法でも半側空間無視がおおきく改善していた。

・TBSに視覚走査訓練を加えてもさらなる改善は見られなかった。

・症状のとらえかたや治療手順に研究ごとのばらつきがおおきかった。

脳卒中の半側空間無視の治療にはシータバースト刺激が有効そうにみえた。しかしエビデンスの質は高いとはいえなかった、


というおはなし。

図:脳の可塑性

感想:

効果あるのかもしれんけど、1日ほんの数10分間の刺激を2週間やってもらうために なん10万円も支払うことが見合うのかどうか、、、が問題。
新しい磁気刺激治療法 シータバーストとはなんなのか

2018年11月2日

睡眠時間と脳卒中のまとめ


Self-Reported Sleep Duration and Quality and Cardiovascular Disease and Mortality- A Dose-Response Meta-Analysis
2018  10月  イギリス

睡眠が脳卒中など心血管疾患のリスク要因であるとする報告が数多くあがってきている。

しかしこれらの結果から適切な睡眠時間をガイドラインで勧めるまでには至っていない。

そこでこれまでの研究をまとめてみたそうな。


関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者300万人あまりをふくむ74の研究がみつかった。

・睡眠7時間にくらべ8時間を超えると総死亡リスクがあがり、

・9時間では1.14倍、10時間で1.30倍、11時間で1.47倍になった。

・7時間未満では脳卒中を含めて心血管疾患死亡リスクに時間ごとでおおきな差はなかった。

・主観的な睡眠の質が良くないと、冠動脈疾患のリスクのみが高かった。

睡眠時間が7-8時間の範囲からはずれるほどに心血管疾患や死亡のリスクが高かった。睡眠時間は短いよりも長いほうが状況は深刻だった、


というおはなし。

図:睡眠時間と総死亡リスク


感想:

これは因果関係をしめすものではない。

睡眠が長いのはべつの病気か、無職で貧困な鬱の引きこもり状態を反映してのこと、と考えることもできる。

だから睡眠時間を調節してもかならずしも問題の解決にはならない。
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