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2017年11月30日

黒人の障害が重いのはリハビリが少ないから?


No Racial Difference in Rehabilitation Therapy Across All Post-Acute Care Settings in the Year Following a Stroke
2017  10月  アメリカ

アメリカでは黒人の脳卒中発生率は悪化の一途である。しかも黒人脳卒中経験者の日常生活動作上の障害は白人よりも25%以上多いという報告もある。

脳卒中後の障害の重さが人種間で違う原因として リハビリ時間の差が考えられる。これを確かめてみたそうな。


メディケアの記録から黒人および白人の高齢脳卒中患者186168人を抽出して、1年間に受けた理学療法、作業療法、言語聴覚療法の時間(分)とリハビリ強度、施設の種類(院内リハビリ、介護施設 など)を集計した。

そして人種との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・PT,OT,STいずれも黒人のほうが受ける時間が長かった。

・しかし年齢や合併症、重症度、血栓溶解療法などの違いを考慮にいれるとリハビリの量に有意な差はなかった。

・ただし黒人のほうが転院回数はおおかった。

脳卒中後のリハビリ量に黒人と白人とであきらかな差はなかった。黒人の障害がおおきい理由はリハビリ量の違いではないようだ、


というおはなし。
図:黒人と白人 脳卒中リハビリ時間の違い

感想:

「脳卒中からの回復度」が「脳卒中リハビリにかける時間」に比例すると思い込んでいるから はなしがおかしくなる。

2017年11月29日

くも膜下出血への遠隔虚血コンディショニング


Limb remote ischemic post‑conditioning reduces injury and improves long‑term behavioral recovery in rats following subarachnoid hemorrhage: Possible involvement of the autophagic process.
2017  10月  中国

くも膜下出血の死亡率は先進国で25-35%、途上国で48%にのぼる。発症後数日間のダメージが死亡率にもっとも影響し、さらに1-2週間後にも血管攣縮に関連した脳虚血のリスクがのこる。

両腕の血流を止めたり解放したりを繰り返す遠隔虚血コンディショニングは簡単にかつ長期に実行可能な回復方法の1つである。

くも膜下出血への遠隔虚血コンディショニングについてはあまり例がないので、メカニズムの解明を兼ねて細胞内タンパク質分解機能であるオートファジーに着目して実験してみたそうな。


人為的にくも膜下出血にしたネズミに、その直後から両前脚の動脈をクリップして10分、解放して10分のサイクルを1日に3回くりかえし、3日間続けた。

このあと脳浮腫の程度や行動検査、記憶力 およびオートファジー関連タンパク質の測定を1ヶ月間フォローした。


次のことがわかった。

・遠隔虚血により脳浮腫が改善し、組織の細胞死が減った。

・短長期的な神経機能と記憶力も改善し、

・皮質のオートファジー関連タンパク質が増加してオートリソソーム量が1ヶ月後も増えたままだった。

くも膜下出血直後の遠隔虚血コンディショニングは神経保護と回復をうながす非侵襲的な方法であり、オートファジー機能が関係していると考えられた、


というおはなし。
図:

感想:

遠隔虚血コンディショニングにはプレとポストがある。なにかイベントのまえに行うのがプレコンディショニングで、脳卒中リハビリに応用されるのはポストの方。

[遠隔虚血コンディショニング]の関連記事。

2017年11月28日

たった3日間 高脂肪食にしただけで脳梗塞が拡大


Acute high-fat feeding leads to disruptions in glucose homeostasis and worsens stroke outcome.
2017  11月  イギリス

高脂肪の食事をつづけることは肥満のもとであり健康上のリスクになる。さらに高脂肪食による記憶力への影響がほんの数日で現れることも動物実験で報告されている。

そこで、高脂肪食を長期および短期に摂った時の脳卒中ダメージへの影響を実験してみたそうな。


通常食(脂肪由来のカロリー12%)のネズミと、高脂肪食(カロリーの60%が脂肪由来)のネズミを7ヶ月半飼育した。
そして通常食グループの一部に3日間だけ高脂肪食を摂らせた。

その後人為的に脳虚血にしたところ、


次のようになった。

・長期高脂肪食グループにくらべ 3日間の短期高脂肪食グループでは体重増加や脂肪組織、脂質異常や炎症マーカーに変化はなかった。

・しかし短期高脂肪食グループでは耐糖能やインスリンへの反応、糖輸送体タンパク質GLUT-1の発現が低下して、

・脳の梗塞サイズは48%増大した。これは虚血脳半球でのGLUT-1のさらなる低下と関連していた。

たった3日間の高脂肪食がグルコース恒常性を崩し脳梗塞を悪化させた、


というおはなし。
図:短期脂肪食で脳梗塞が拡大

感想:

炭水化物の代わりに脂肪を摂るケトン食で脳梗塞が小さくなったっていう報告もあるから、不安定なのは高脂肪食に切り替えた直後だけなんだろうね。
糖質制限ダイエットで脳梗塞に強くなる理由

2017年11月27日

脳卒中リスク要因ランキング


Prevalence of stroke and associated risk factors among middle-aged and older farmers in western China.
2017  11月  中国

中国では経済や社会の急速な発展とライフスタイルの西洋化にともない脳卒中も増え、いまでは年間10万人あたり157人が発症し 160万人が死亡している。

中国での脳卒中リスク要因をしらべてみたそうな。


中国西部の陝西省、四川省の40歳以上の農民20525人に面談して病歴、高血圧、肥満、脳卒中家族歴、を調査したところ、


次のことがわかった。

・中国西部の中高年農民の脳卒中罹患率は10万人あたり1380人だった。

・高血圧や脳卒中の家族歴は男性におおく、

・年齢、性別、高血圧、肥満、脳卒中の家族歴はあきらかに脳卒中のリスク要因であり、

・そのオッズ比は、脳卒中の家族歴7.177、肥満4.389、高血圧3.647の順だった。

中国西部の中高年では脳卒中の家族歴がもっとも強い脳卒中のリスク要因だった、


というおはなし。
図:脳卒中のリスク要因第一位は家族歴

感想:

政治家の世襲もFamily historyといえるな。

2017年11月26日

脳卒中で低下した学習記憶力が運動で回復するメカニズム


Physical Exercise Promotes Novel Object Recognition Memory in Spontaneously Hypertensive Rats after Ischemic Stroke by Promoting Neural Plasticity in the Entorhinal Cortex.
2017  11月  中国

脳卒中後の積極的な運動には肥満防止や心血管機能の改善効果があり、さらに梗塞の拡大を抑え神経症状の回復をうながす効果も報告されている。

最近では 運動によって脳卒中後の認知学習記憶の障害を改善できるとする報告もあるが、脳のどの部位に影響して どのようなメカニズムによるものなのかはわかっていない。

そこで動物で確認してみたそうな。

2017年11月25日

牛乳を毎日飲むと脳卒中で死ぬ 中東では


Whole milk consumption and risk of cardiovascular disease and mortality: Isfahan Cohort Study.
2017  11月  イラン

牛乳は栄養が豊富なため健康維持に推奨されることもすくなくないいっぽう、飽和脂肪酸を多く含むことから心血管疾患リスクを懸念する見方もある。

牛乳の脳卒中など心血管疾患の予防効果についてはいまだ結論がなく、最近のメタアナリシスでは東アジアでのみ摂取量とそのリスクに逆相関が認められ 地域や民族の違いが影響すると考えられている。

中東地域についてこの種の研究がほとんどないのでしらべてみたそうな。


イランの健康な男女5432人を対象に食事調査をしておよそ11年間心血管疾患の発生をフォローした結果、


次のことがわかった。

・この間に564件の冠動脈疾患と141件の脳卒中があった。

・牛乳(成分無調整)をまったく摂らない者にくらべて 毎日というほどではない程度にそこそこに摂る者の心血管疾患リスクは0.80倍で、脳卒中リスクは0.79倍だった。

・いっぽう牛乳を毎日頻繁に飲む者の心血管疾患リスクは1.25倍で、総死亡率は1.54倍だった。

牛乳を毎日というほどではない程度に飲むと脳卒中など心血管疾患リスクが低かった。いっぽう毎日頻繁に飲むとむしろ死亡率が高かった、


というおはなし。
図:牛乳頻度と脳卒中死亡リスク

感想:

さいきん明治のおいしい牛乳がとつぜん量を減らされて衝撃をうけた。そして森永に変えた。

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2017年11月24日

TIAやTNAのあと遂行機能が低下する


Executive Function Declines in the First 6 Months After a Transient Ischemic Attack or Transient Neurological Attack
2017  11月  オランダ

脳の局所的な虚血による一時的な神経症状を一過性脳虚血発作(TIA)とよび、局所症状を伴わない神経症状(軽いせん妄や失神)で他に原因が見当たらないものを一過性神経発作(TNA)という。

これらの症状は24時間以内に収まることになっているが、認知機能の低下は長く続く という報告がふえてきた。

そこでTIAとTNA患者について急性脳梗塞のサインである拡散強調MRI(DWI)の結果もふくめて認知機能の長期変化をしらべてみたそうな。


45歳以上で平均年齢65のTIAまたはTNAの患者121人について 認知機能検査で6ヶ月間フォローしたところ、


次のことがわかった。
・患者の60%がTIAで、40%がTNAだった。このうち26%にDWIで病変箇所がみつかった。

・6ヶ月間で遂行機能は低下した。いっぽう注意力は向上し

・処理スピードとエピソード記憶力には変化がなかった。

・DWIで病変の見つかった患者の遂行機能はずっと低いままだった。

・TIAとTNAの区別は認知機能の変化と関係しなかった。

TIAやTNA患者はその後6ヶ月間にわたり遂行機能が低下した。DWIで病変の見つかった患者は遂行機能が低いままだった、


というおはなし。
図:TIAとTNAの見分け方

感想:

TNAはじめて聞いたよ。そもそもDWI+だったら脳梗塞じゃあないのかね。

2017年11月23日

鍼の脳卒中治療メカニズムと人気のツボランキング


Mechanisms of Acupuncture Therapy in Ischemic Stroke Rehabilitation: A Literature Review of Basic Studies.
2017  11月  台湾

鍼治療はWHOもすすめる脳卒中の代替療法の1つである。おおくの臨床試験で脳卒中患者のバランスや痙縮、筋力、生活の質の改善効果が示されているものの そのメカニズムはよくわかっていない。

これまでの研究から 鍼治療の脳卒中リハビリテーションメカニズムとよく使われるツボの種類についてまとめてみたそうな。


関係する40の研究内容を分析したところ、


次のことがわかった。

・鍼刺激による5つの脳卒中回復メカニズムがあきらかになった、

1)神経新生と細胞増殖の促進
2)虚血領域への血流改善
3)細胞死の抑制
4)神経化学物質のコントロール
5)長期増強効果による学習改善

・よく使われるツボは、百会(GV20)、足三里(ST36)、風池(LI11)、水溝(GV26)、大椎(GV14)、合谷(LI4)の順だった。

鍼治療は脳卒中患者の中枢神経系にたいし 異なるメカニズムの様々なはたらきをとおして改善効果をもたらす、


というおはなし。
図:脳梗塞の鍼治療メカニズム

感想:

鍼のような信念体系にいまだおおくの支持があり かつエビデンス主義の世界で生き残っていること自体に強い関心がある。

2017年11月22日

ピーナッツの脳卒中予防効果があきらかに


Nut Consumption and Risk of Cardiovascular Disease.
2017  11月  アメリカ

ナッツは不飽和脂肪酸や食物繊維、ミネラル、ビタミン、他の生理活性物質をたくさん含む食物であり、脳卒中など心血管疾患の予防効果があるとおおく報告されている。

しかしこれらの調査はナッツの種類を区別していないものがほとんどで、とくにピーナッツは豆科であり他のナッツのように木の実ではない。

そこでピーナッツを区別してナッツと脳卒中など心血管疾患との関連をしらべてみたそうな。


1980-2012および1991-2013の看護師健康調査から健康な女性76364人と92946人、
さらに1986-2012の医療従事者健康調査から健康な男性41526人について、

4年ごとに取得された食事内容調査の結果と心血管疾患との関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・およそ25年のフォロー期間中に脳卒中5910件を含む心血管疾患14136件がおきた。

・ナッツ全体の摂取量がおおいと心血管疾患はすくなかったが、脳卒中との関連はあきらかでなかった。

・1回28グラムのナッツを週に5回以上摂るグループの心血管疾患リスクはほとんど摂らないグループよりも14%低く、

・ピーナッツを週2回以上で脳卒中リスクは10%低下、くるみを週に1回以上摂ると脳卒中リスクは17%低下した。

・ピーナッツバターと脳卒中リスクの関連はなかった。

3つの大規模調査からピーナッツやくるみをよく摂ると脳卒中など心血管疾患の予防になることがわかった、


というおはなし。
図:ピーナッツと脳卒中リスク

感想:

いままで以上にピーナッツをたべようと思う。

2017年11月21日

脳卒中から4年後の認知障害の割合


Determinants, Prevalence, and Trajectory of Long-Term Post-Stroke Cognitive Impairment: Results from a 4-Year Follow-Up of the Auckland Stroke Regional Outcomes Study-IV Study.
2017  11月  ニュージーランド

脳卒中は認知機能におおきく影響し、その急性期ではおよそ70%が認知障害をしめす。数週間から数ヶ月で症状が回復する者がいるいっぽう半数以上で長期にわたり影響がのこる。

また 初回脳卒中のあとの10% および1/3以上が再発後に認知症になるという報告もある。

脳卒中患者の認知障害は集計方法や評価方法のもんだいから過小評価されている可能性があるので、
脳卒中後の認知障害の割合と関連要因をきっちりと調べてみたそうな。


2096人の初回脳卒中患者について
認知障害検査" Montreal Cognitive Assessment "(MoCA)を2週間、1,6,12,48ヶ月後におこなった。

MoCAスコアは30点満点中、26点未満を認知障害とした。


次のことがわかった。
・途中脱落者や死亡者を除き、257人(平均年齢68)でフォローアップが完遂した。

・ぜんたいとしてMoCAスコアは12ヶ月後に0.98ポイント低下し、48ヶ月後では2.8ポイント低下した。

・4年後、84%の脳卒中患者が認知症レベル(MoCAスコア平均20点)の認知障害を示していた。

・認知機能が低下する関連要因として、男性、冠動脈疾患、不整脈、社会からの孤立、非就労、があげられた。

脳卒中後の認知機能の低下は長期的にみて解消や安定したりするものではなかった。社会要因、心血管要因が関連しているので早い対策が望まれる、


というおはなし。
図:脳卒中後の認知障害要因

感想:

認知障害問題は脳卒中経験者の最大のテーマだな。

[認知障害]の関連記事

2017年11月20日

犬が脳梗塞になる季節がわかった


The Effects of Various Weather Conditions as a Potential Ischemic Stroke Trigger in Dogs.
2017  11月  アメリカ

犬がなんらかの神経症状を示すばあい、その3%は脳卒中によるものと考えられている。

人間同様 犬が脳卒中を起こす要因は 高血圧、糖尿、肥満、腎臓病などいくつもあるが、「いつ」どんなきっかけで起こるかについてはわかっていない。

気象条件は脳卒中のきっかけになりうる要因の1つと考えられるので、この関連をしらべてみたそうな。


アメリカのマサチューセッツにあるペット動物病院でMRIにより脳梗塞が確認された犬15頭について、発症の直前7日間の気象条件(気温、気圧、湿度)を調査し 関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳梗塞の発生は秋(9-11月)にあきらかなピークがあり、

・気温、気圧、湿度および体感温度の急な変動の直後に起きた。

犬の脳梗塞は秋におおかった。より規模のおおきい調査が期待される、


というおはなし。
図:犬の脳梗塞の季節

感想:

よくみるとMRIのフルコース検査(3方向のT1 T2 FLAIR 造影)がされてる。しかもアメリカだし 犬だから保険も効かないハズで、、、スーパーリッチ向けの病院?
小脳梗塞になった御犬様の症状とは

右脳梗塞の犬は余命が極端に短いことが判明!(∪^ω^) わんわん

2017年11月19日

脳卒中に影響ある食物 まとめのまとめ2008-2015


Stroke and food groups: an overview of systematic reviews and meta-analyses.
2017  11月  中国

これまで脳卒中と食物との関連を調べた研究が数多くなされてきた。

各食物についての研究内容を厳選 吟味して得られたシステマティックレビューを さらにあつめて脳卒中リスクに影響する食物の種類をまとめてみたそうな。


13種類の食物:ナッツ、豆、果物や野菜、精製穀物、全粒穀物、乳製品、玉子、チョコレート、赤肉や加工肉、魚、お茶、加糖飲料、コーヒー
と脳卒中リスクについてのシステマティックレビューやメタアナリシス論文を厳選して内容をまとめたところ、


次のことがわかった。

・2008-2015の論文が18件みつかった。

・ナッツ、果物や野菜、乳製品、魚、お茶、コーヒー、チョコレートを多く摂ると脳卒中予防になった。

・いっぽう、赤肉(家畜肉)や加工肉を多く摂ると脳卒中リスクが高かった。

・精製穀物、加糖飲料、豆、玉子、全粒穀物は脳卒中に影響なかった。

こんかいのシステマティックレビューのまとめにより、脳卒中に影響のある食物の種類を高エビデンスレベルであきらかにすることができた、


というおはなし。

図:ミルクと脳卒中

感想:

ピーナッツは豆科だからたくさんたべても意味ないかもね。


追記:
ピーナッツの脳卒中予防効果があきらかに

2017年11月18日

Neurology誌:亜急性期患者へのVR上肢訓練の成果


Virtual Reality Training for Upper Extremity in Subacute Stroke (VIRTUES)
2017  11月  ベルギー

脳卒中で上肢麻痺リハビリへのバーチャルリアリティの応用が期待されている。

これまでの研究は慢性期患者を対象とした小規模なものがおおく、さらに健常者向けのゲーム機の利用が主だった。

こんかい、亜急性期の患者について上肢リハビリ専用に開発されたバーチャルリアリティシステムをもちいて 大規模にその可能性を検証してみたそうな。


5病院で 発症から12週以内の脳卒中患者120人について、バーチャルリアリティ(VR)と通常訓練グループにわけた。

VRグループでは "YouGrabberシステム"を使用して1回60分間のセッションを4週間に16回実施し、
通常訓練グループは課題志向型でおこなった。

3ヶ月後までフォローして3種類の指標で上肢機能を評価 比較したところ、


次のようになった。

・介入前、直後、3ヶ月後で両グループの上肢機能にあきらかな差はなかった。

・上肢麻痺の度合いを軽 中 重症の別に比較しても違いは確認できなかった。

亜急性期の脳卒中患者へのバーチャルリアリティ訓練に従来リハビリを凌ぐ効果はなかった、


というおはなし。
図:バーチャルリアリティ訓練と通常訓練

YouGrabberシステム↓


感想:

上のビデオだととても役立ちそうにみえない。同レベル判定された従来法がかわいそうだ。

2017年11月17日

2時間で指の動きがよくなる電気刺激方法とは


Effects of somatosensory electrical stimulation on motor function and cortical oscillations.
2017  11月  アメリカ

脳卒中経験者のおよそ半数は上肢機能になんらかの麻痺がのこるという。

げんざい上肢麻痺のリハビリには有効な方法がない。最近のメタアナリシスでは動作の繰り返し訓練にもまったく効果がないことがあきらかになった。

体性感覚電気刺激(SES)は上肢麻痺の改善に期待されている手法で、とくに経皮的に刺激するものをTENSと呼び専用の刺激装置が商品化されている。

これまでSES効果は手のおおざっぱな動きや機能についての研究がおもだったが、こんかいSESの効果を指の運動力学および脳波の点からしらべてみたそうな。


慢性期脳卒中で上肢麻痺のある8人について、SES前後でのアクションリサーチアームテスト(ARAT)、指のカップリング指数(FCI)、つまみ力、筋緊張スケール(MAS)および脳波を測定した。

SESは麻痺手前腕の尺骨神経、正中神経、橈骨神経上に電極を貼り、痛みや筋収縮を伴わない強度の10Hz電気パルス刺激を2時間継続した。


次のようになった。

・SESのあとARAT,MAS,FCIがあきらかに改善した。

・さらにSESで損傷脳側の頭頂葉のδ波が減少し、

・同側運動皮質のθ波 α波強度が指の分別能とあきらかな相関をみせた。

SESにより麻痺手の指の個別運動能力に改善がみられ、特徴的な脳波パターンも観察できた、


というおはなし。
図:体性感覚電気刺激と脳波

感想:

低周波治療器もってるならさっそく実験してみるといい。

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2017年11月16日

脳動脈瘤の破裂は経済格差と関連があった


Socioeconomic Disadvantage Is Associated with a Higher Incidence of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
2017  11月  オーストラリア

これまでのくも膜下出血の研究では動脈瘤破裂のものとそうでないものを区別していないケースがすくなくない。

さらに動脈瘤性のくも膜下出血はその特殊さゆえに通常の脳卒中研究に含まれないこともおおい。

動脈瘤性のくも膜下出血と社会経済状況との関連がまだわかっていないのでしらべてみたそうな。


2010-2014の非外傷性のくも膜下出血患者237人のうち脳動脈瘤破裂と確認された159人について、
居住地ごとの社会経済スコア対応させた指標 "Socioeconomic Index for Areas" (SEIFA)および田舎度スコア(ARIA)との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者の70%は女性だった。

・動脈瘤性くも膜下出血発生率は10万人あたり年間9.99だった。

・居住エリアの社会経済スコアと発生率はあきらかに相関しており、

・貧乏地域では金持ち地域よりも動脈瘤性くも膜下出血発生率が1.40倍だった。

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は貧困地域で起きやすかった、


というおはなし。
図:社会経済スコアとくも膜下出血リスク

感想:

脳動脈瘤ってクリップでつまんだりコイルで埋めたりして治療するから もっぱら力学的な問題の印象がある。けど 喫煙や経済格差でも破れちゃうんだよな。

どうやら貧乏地域は喫煙率が高いから、、、ってことみたい。

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2017年11月15日

退院後の栄養不良と予後


Malnutrition Increases the Incidence of Death, Cardiovascular Events, and Infections in Patients with Stroke after Rehabilitation.
2017  11月  日本

脳卒中は死亡率が低下傾向にあるものの 日本では依然として死亡原因の第4位である。

脳卒中の急性期に栄養不良の患者は予後がよくなといわれている。いっぽう栄養不良は急性期よりもリハビリ期におおくなるが、予後への影響はよくわかっていない。

そこで脳卒中患者のリハビリ退院直後の栄養状態と死亡 再発 感染症との関連をしらべてみたそうな。


平均年齢64の高齢脳卒中患者138人についてリハビリ退院直後の栄養状態を "geriatric nutritional risk index"(GNRI)で評価した。

GNRIは体重、身長、血清アルブミン値だけで栄養評価できる指標で 次式で与えられる。
GNRI = [14.89×アルブミン値(g/dL)] + [41.7×(体重/標準BMIに相当する理想体重)]
GNRIが96以下を栄養不良とし、1年間フォローしたところ、


次のことがわかった。

・退院直後の平均GNRIは98.8で、

・患者の27%が栄養不良状態にあった。

・1年間の総死亡率は1%、心血管疾患再発率15%、感染症率15%で、

・これらはGNRIが96以下の患者であきらかに高かった。

リハビリ退院したあとであっても 栄養不良は予後がよくない要因だった、


というおはなし。
図:脳卒中患者の栄養不良と再発

感想:

もともとやせ気味なのに退院した直後は3キロちかく体重減っていた。食事はおいしかったけど量がすくなかった。隣のベッドに配膳された天ぷらそばをこっそり食べてしまいたい衝動に耐えるのがキツかった思い出。

いまにして思うと我慢せずに 売店でパンやおにぎりでも買って食べればよかったとおもう。

2017年11月14日

Stroke誌:朝の牛乳かけシリアルで脳梗塞を防げる


Whole Grain Consumption and Risk of Ischemic Stroke
2017  11月  中国

おおくの健康ガイドラインで全粒穀物が勧められている。しかし全粒穀物と脳卒中との関連についてはいまだ結論がでていない。

そこで男女別にアメリカで行われた2つの健康調査の記録をつかってその関連をしらべてみたそうな。


男性71750人、女性42823人について80年代なかばから25年間ほどフォローした研究のデータを使用して脳梗塞の発生と全粒穀物摂取との関連を解析した。

全粒穀物についてはその種類別に、
コールドシリアル、オートミール、ライ麦パン、玄米、ポップコーン、小麦ブラン、小麦胚芽で分類した。


次のことがわかった。

・この間に2458件の脳梗塞がおきた。

・ぜんたいとして全粒穀物の摂取と脳梗塞の発生に関連はなかった。

・しかしコールドシリアルと小麦ブラン(小麦表皮)に限定するとその摂取頻度が高いほど脳梗塞リスクは低下し、リスクは0.88倍になった。

・ほかの全粒穀物食品は脳梗塞リスクの低下にならなかった。

全粒穀物はぜんたいとして脳梗塞には関連しなかったが、朝食の牛乳がけのシリアルや小麦ブランに関してだけはあきらかに脳梗塞リスクが低下した、


というおはなし。
図:全粒穀物シリアルと脳梗塞

感想:

シリアルには葉酸が強化されていることがおおいからではないか、、、って言ってる。

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2017年11月13日

うつになりやすい脳損傷位置と性別


The association between lesion location, sex and poststroke depression: Meta-analysis.
2017  8月  中国

脳卒中後のうつはおおくの患者でおきる症状で 回復が遅れる原因となる。

これまで脳の損傷部位や性別と脳卒中後うつとの関連についてたくさんの研究がおこなわれてきたがその結果はまちまちである。

そこで これまでの研究をまとめてみたそうな。

2017年11月12日

2週間以降にけいれん発作が起きる頻度


Incidence of poststroke seizures: A meta-analysis.
2017  11月  台湾

脳卒中から1-2週間以降におきる遅発型のけいれん発作は のちの癲癇(てんかん)につながる可能性が高いと考えられている。

これまでの研究をまとめて その頻度をしらべてみたそうな。


1990-2014の関係する研究論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・7件の研究論文がみつかった。

・脳卒中から14日以降を遅発型としたときのけいれん発作の罹患密度は100人あたり年間1.12で、

・脳卒中から7日としたときは3.22だった。

脳卒中から2週間以降にけいれん発作を起こす患者は1年間で1%程度だった、


というおはなし。
図:脳卒中患者の遅発型けいれん発作 罹患率

感想:

意外にすくない。2週間なにもなければほぼセーフってことか。

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2017年11月11日

脳内出血のあとわずか数ヶ月で認知障害になる頻度


Early Cognitive Impairment after Intracerebral Hemorrhage in the INTERACT1 Study.
2017  10月  中国

脳卒中のあとの認知障害はめずらしくない。とくに脳内出血から数年後の認知障害は高率におよぶことがおおく報告されている。しかし数ヶ月後の短期での認知障害についての報告はすくない。

そこで脳内出血から90日後の認知障害の割合と予測要因をしらべてみたそうな。


脳内出血患者231人について、90日後にミニメンタルステート検査をおこない24点以下を認知障害とした。


次のことがわかった。

・32.5%が認知障害だった。

・彼らは、高齢で、女性、脳内出血歴、重度の神経症状と

・最初の24時間の収縮期血圧が高い、という特徴があった。

脳内出血の数ヶ月後、3分の1の患者があきらかな認知障害となった。高齢 女性 脳内出血歴 重度の神経症状 発症直後の高血圧が特徴的だった、


というおはなし。
図:脳内出血で認知障害

感想:

ずいぶんおおい。もっと時間かかると思ってた。
脳内出血で早くに認知症になる人の特徴

脳内出血経験者が認知症になる率がわかった

長期的に認知症になりやすい脳卒中の種類は

2017年11月10日

視床梗塞で時間感覚が狂った女性


Time perception impairment following thalamic stroke: A case study.
2017  11月  イギリス

脳卒中がきっかけで時間感覚に障害がおきた女性の報告。

JBは50歳の女性で2011年に脳卒中を患った。右の視床の正中線にちかい位置に梗塞ができた。
それ以来、彼女は今が季節的にいつごろで、今日の日付、現在の行動を何時間続けたのかなど わからなくなった。

そこで彼女の主観的時間感覚をしらべてみたそうな。


1) 時間のことなるリハビリセッションを3つ経験させて 経過した時間を当てさせる。(Retrospective timing)

2) ストップウォッチで5-60秒の時間測定を目の前で実演したのち、同じ時間をストップウォッチを見ずに再現させる。(Interval Reproduction)

3) 口頭で指定した秒数の経過を実演なしでいきなりストップウォッチで実行させる。(Interval Production)

実験中はカウント行動ができないよう、物語を音読させた。実行させる秒数、物語の内容は都度変更した。

これらの実験を健常者4人および同様の脳損傷患者4人でおこない、エラーの大きさを比較したところ、


次のようになった。

・彼女JBは 1)の時間推定と 2)の秒数再現のエラーが非常におおきかった。

・しかし 3)のエラーは比較グループと差がなかった。

これらことから彼女の基本的な時間機能は保たれており、前向記憶の障害が時間感覚に問題をもたらしていると考えられた、


というおはなし。

図:視床梗塞の時間感覚

感想:

ふつうはただの認知障害でかたずけるところだけど 「視床」へのダメージが時間問題を引き起こすっていいたいようだ。

2017年11月9日

こんな頭痛だったら くも膜下出血


Distinguishing Characteristics of Headache in Nontraumatic Subarachnoid Hemorrhage.
2017  11月  アメリカ

くも膜下出血は入院まえに半数の患者が死亡するといわれている。

その主な症状ははげしい頭痛であるが、頭痛はおおくのばあい良性であるため くも膜下出血が見過ごされることがある。

くも膜下出血の頭痛は「雷鳴頭痛」ともよばれるが その詳しい研究はないのでしらべてみたそうな。


頭痛で救急外来を訪れた患者158人に面談したところ、


次のことがわかった。

・このうち20人がくも膜下出血で138人はそうではなかった。

・後頭部の頭痛は 55% vs. 22% でくも膜下出血グループがおおく、

・刺すような痛みも 35% vs. 5% でくも膜下出血でおおかった。

・くも膜下出血には髄膜症の症状 80% vs. 42% を持つ者がおおかったが、

・前兆的な頭痛は 50% vs. 83% で非くも膜下出血グループでおおかった。

・さらに 頭痛発症からピークまでの時間が1秒未満は 65% vs. 10% でくも膜下出血がおおかった。

くも膜下出血の頭痛では、1秒足らずで痛みのピークがあり、後頭部への刺すような痛みが特徴的だった、


というおはなし。
図:くも膜下出血の頭痛の特徴

感想:

1秒未満でピークがくるのか、、、まさに雷鳴だな。
くも膜下出血の頭痛は最短何時間で消えるのか?

くも膜下出血の頭痛の強さ 傾向と対策

2017年11月8日

めまいや突発性難聴は脳卒中のサインなのか?


Sudden Hearing Loss with Vertigo Portends Greater Stroke Risk Than Sudden Hearing Loss or Vertigo Alone.
2017  11月  台湾

めまいや突発性難聴のおおくは良性と考えられ脳卒中の可能性は見過ごされがちになる。

そこでめまいと突発性難聴が同時期に起きた時の脳卒中リスクを大規模にしらべてみたそうな。


台湾の国民健康保険データベースからめまいと突発性難聴の患者21万人あまりを抽出して次の3グループにわけた。

1)めまい+突発性難聴(前後30日以内に同時発症)
2)突発性難聴のみ
3)めまいのみ

その後の脳卒中をフォローしたところ、


次のことがわかった。
・患者内訳は、めまい+突発性難聴 678人、突発性難聴のみ 1988人、めまいのみ 215980人 だった。

・脳卒中率は、めまい+突発性難聴 5.5%、突発性難聴のみ 3.0%、めまいのみ 3.9% だった。

・突発性難聴のみに比べて めまい+突発性難聴だと脳卒中リスクは1.93倍で、

・同時発生条件を前後3日間に限定するとそのリスクは2.16倍になった。

めまいに突発性難聴が加わるとその後脳卒中になるリスクが高かった、


というおはなし。
図:突発性難聴とめまいと脳卒中

感想:

めまい人口は突発性難聴の100倍か、、、 

[突発性難聴]の関連記事

2017年11月7日

葉酸サプリメントで脳卒中は防げるの?


Folic Acid Supplementation for Stroke Prevention in Patients With Cardiovascular Disease.
2017  10月  中国

葉酸(ビタミンB9)は動脈硬化の原因になるホモシステインの代謝に欠かすことができない。

しかし葉酸サプリメントと脳卒中との関連についてはいまだ結論がでていないので、これまでの研究をまとめてみたそうな。


心血管疾患リスクの高い者を対象にした関連研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者65790人を含む11の研究がみつかった。

・葉酸サプリメントは脳卒中リスクの低下にあきらかに効果があった。

・この関連は、特にホモシステインレベルが25%以上減少した者や、

・1日の葉酸摂取量が2mg未満の者、

・葉酸強化穀物が流通していない地域で 顕著だった。

葉酸サプリメントには高リスク者へのあきらかな脳卒中予防効果があった、


というおはなし。
図:葉酸サプリメントの脳卒中予防効果

感想:

なんどもでてきたけど葉酸サプリは印象わるくない。

[葉酸サプリメント]の関連記事

2017年11月6日

脳内出血の気象条件を地球規模でしらべた


Climatic and Seasonal Circumstances of Hypertensive Intracerebral Hemorrhage in a Worldwide Cohort
2017  11月  ドイツ

脳内出血のおおくは高血圧に原因がある。血圧は気温や季節など気象の影響をうけやすい。

しかし気象条件と脳内出血の関係をしらべたこれまでの研究は限られた地域についてのものばかりで、夏に増えたり季節変動が見られなかったりと互いに矛盾した結果がでていた。

こんかい国際的な他施設間での調査をやってみたそうな。


5大陸22カ国122施設の脳内出血患者841人について、患者を高血圧性(基底核、脳幹、小脳に出血)と非高血圧性(皮質に出血)の脳内出血にわけ、発症2日前からの気温、気圧、季節との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・高血圧性の脳内出血患者にのみ季節変動が見られ、秋にピークがあった。

・高血圧性の脳内出血は若年者におおく 気圧の高い日に発症していた。

・気温の高い日もやや関連していた。

脳内出血の起きやすい気象条件を地球規模で調査したけっか、高血圧性の脳内出血は気温の高さよりも気圧が高い日に起きやすいことがわかった、


というおはなし。
図:世界の気象条件と脳卒中

感想:

いままでの常識と真逆なんだけど、こんご飛行機に乗ってもビビらないですむ理由ができたのは良し。
低気圧が来ると起きやすい脳内出血の種類がわかった

2017年11月5日

高齢くも膜下出血患者の予後


Advanced Age and Post-Acute Care Outcomes After Subarachnoid Hemorrhage.
2017  10月  アメリカ

脳動脈瘤が原因のくも膜下出血は比較的若いひとにおおく、70歳より高齢の割合は15-20%とされている。

高齢くも膜下出血患者の予後要因についての研究はおおくなく よくわかっていないので、大規模にしらべてみたそうな。


431の病院で2008-2010にくも膜下出血で入院してクリップやコイル手術を受けた65歳以上のメディケア患者5515人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。
・退院後30日時点での再入院率は17%、死亡率は8.5%だった。

・病院の年間くも膜下出血手術件数が少ないと再入院率が高く、その差は最大でオッズ比2.10倍、

・同様に手術件数の少ない病院にかかると死亡率も高く、その差はオッズ比1.52倍におよんだ。

高齢くも膜下出血患者が手術件数の少ない病院にかかると 退院後の再入院率および死亡率がとても高い、


というおはなし。
図:高齢くも膜下出血患者の再入院 死亡率

感想:

クリニックの脳ドックでなんの症状もないひとにクリップをすすめるくらいに簡単 安心な手術のはずなのに 結局は慣れや技量の差が生死におおきく影響する。

しかも上の表みると白人以外の人種はやたら死亡率高い。

「再出血予防手術はやらないほうが長生きするんじゃない?」←じつはこの疑問に答えるまともなエビデンスが見つからない。

2017年11月4日

脳卒中後の疲労 うつ アパシーの関係


Temporal Associations between Fatigue, Depression, and Apathy after Stroke: Results of the Cognition and Affect after Stroke, a Prospective Evaluation of Risks Study.
2017  10月  オランダ

脳卒中のあと 体の疲れとは関係なく病的な疲労感を訴える患者の割合が35-92%にのぼるという報告がある。

脳卒中後の疲労は精神的側面もつよく、脳卒中後のうつとの関連も指摘されている。

いっぽう脳卒中後の無気力無関心(アパシー)はうつ症状とも重なるところがおおきい。

そこで、これら疲労 うつ アパシーの時間的関連を長期にしらべてみたそうな。


脳卒中患者243人について、疲労 うつ アパシーの各評価を おのおの3、6、12ヶ月後に行い関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・患者の49%が脳卒中後疲労で、26%がうつ、9%がアパシーだった。

・疲労患者はうつレベルが高く かつ持続していた。

・うつ患者はもともと疲労度も高かった。

・当初のアパシースコアと疲労には関連はなかった。

・疲労スコアの12ヶ月間の変化はうつスコアとアパシースコアの変化と相関していた。

脳卒中後の疲労とうつは双方向関連にあった。アパシーは疲労度と時間的に相関していたがうつの影響がおおきいと考えられた、


というおはなし。
図:脳卒中後の疲労とうつの関連

感想:

疲労がおおくてアパシーが少ないってことはわかった。

脳卒中以来、興味のあることの他はいっさいやる気がなくなった。これははたしてアパシーなのか?

2017年11月3日

1回でBDNFが増える歩行強度がわかった


A single session of moderate intensity walking increases brain-derived neurotrophic factor (BDNF) in the chronic post-stroke patients.
2017  10月  ブラジル

脳由来神経栄養因子(BDNF)は神経細胞の可塑性をうながし運動学習やリハビリに不可欠なタンパク質である。

BDNFは脳卒中患者の長期の有酸素運動によって増加することがわかっているが 短い運動でも増える可能性はある。

そこで、1回でBDNFが増える運動の種類と強度をさぐるべく実験してみたそうな。

2017年11月2日

人間関係とBDNF そして脳卒中


Associations between social relationship measures, serum brain-derived neurotrophic factor, and risk of stroke and dementia.
2017  10月  アメリカ

人との社会的関係は心身の健康と密接な関連がある。

このメカニズムはよくわかっていないが、たとえば神経の維持 成長 分化を促進するタンパク質:脳由来神経栄養因子(BDNF)がこれを仲介するという説がある。
仲間の多い環境にいるとBDNFが増え これに関連して脳卒中や認知症リスクが低下することが動物実験で示されている。

人間ではどうか、フラミンガム心臓研究のデータを使ってしらべてみたそうな。


3294人の記録について人との社会的関係と血清BDNFおよび脳卒中や認知症との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・社会的孤立度が高いほどBDNFは少なかった。

・交友関係がおおいほど脳卒中や認知症リスクは低かった。

・話を聞いてくれる、アドバイスをくれる、愛情をしめしてくれる人以上に、感情的サポートを得られる人との関係を持つ者の脳卒中や認知症リスクが低く 特に喫煙者でこの関連がつよかった。

人から多くのサポートを得られる状況にある者ほどBDNFはおおく、脳卒中や認知症のリスクは低かった、


というおはなし。
図:人間関係と脳卒中 認知症リスク

感想:

こころから親身になって話を聞いてくれる人なんて何人もいないんだよふつう。そこを勘違いするとかえって孤独を感じるんじゃないかな。

2017年11月1日

くも膜下出血のあと禁煙するべきでない理由


Cigarette smoking and outcomes after aneurysmal subarachnoid hemorrhage: a nationwide analysis.
2017  10月  アメリカ

喫煙は脳卒中のもっとも大きなリスク要因の1つである。特に脳動脈瘤破裂のくも膜下出血には喫煙の影響がおおきいことがわかっている。

しかし くも膜下出血後の喫煙がその回復におよぼす影響については明らかでない。

くも膜下出血患者にニコチン代替療法を試みた2つの研究では むしろ回復が良くなったことから、くも膜下出血後の喫煙と回復度との関連をくわしくしらべてみたそうな。


国の患者データベースから くも膜下出血で手術を受けた患者5784人の記録を抽出して、喫煙状況別にその後の回復度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・37.1%が喫煙者だった。

・その内訳は、31.1%が現在喫煙者で、6.0%が喫煙経験者だった。

・喫煙者は非喫煙者にくらべ 若く、他の病気をもっている者がおおかったが、

・死亡率や合併症の数、神経症状に差はなかった。

・非喫煙者にくらべ喫煙者は、気管切開や胃ろう、介護施設への転院、回復不良の割合があきらかに少なかった。

・重症患者に限定してもこれらの関連が確認できた。

くも膜下出血を経験した喫煙者は若く他の病気をもつことがおおかったが、どういうわけか非喫煙者よりも回復が良かった、


というおはなし。
図:

感想:

どうやらニコチンには神経保護作用があるようだ。

くも膜下出血になっちゃったら開き直って喫煙を継続する勇気が必要。
脳卒中経験者は喫煙を控えなくてもいいのか?
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