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2017年9月30日

女性に不平等な国の脳卒中死亡率


Countries with women inequalities have higher stroke mortality.
2017  9月  韓国

脳卒中からの回復は男女でことなり、生活習慣のほか遺伝やホルモン 解剖生理学的ちがいにも影響を受ける。

さらに女性をとりまく社会環境や法的な不平等によって その回復がさまたげられる可能性もある。

そこで社会の男女格差が脳卒中死亡率におよぼす影響を世界の国別にしらべてみたそうな。


WHOのデータをもちいて176カ国の男女の脳卒中死亡率の比をもとめた。

女性の社会権利についての50項目からなる評価との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・46の国(26.1%)で女性の脳卒中死亡率が男性を上回っていた。

・このうちの29の国(63%)はアフリカのサハラ砂漠以南の地域にあった。

・脳卒中死亡率の男女比は 女性の権利のうちの14項目、たとえば就職、銀行口座の開設、家庭内暴力への罰則、資産保有の権利など と関連がつよかった。

・また、国連開発計画(UNDP)の提唱するジェンダー不平等指数(GII)との関連もつよかった。

世界的に 社会の男女格差が女性の脳卒中死亡率と関連していた、


というおはなし。

図:世界の国の女性の脳卒中死亡率の高さ

感想:

日本はもっとヒドイとおもってたけど、世界的には最良レベルだな。

2017年9月29日

脳卒中の幹細胞治療 フェーズⅡの成果


Phase I/II randomized controlled trial of autologous bone marrow-derived mesenchymal stem cell therapy for chronic stroke.
2017  8月  香港

脳卒中で脳が損傷すると脳室壁で新たに神経細胞が産生されて損傷部位に移動することが知られている。しかしその細胞の多くは数週間で死滅し、定着するものはわずかである。

いっぽう細胞治療では患者自身の骨髄から採取した幹細胞を用いる方法がもっとも期待されている。

今回、発症後1年経った脳卒中患者への細胞治療の安全性と有効性(フェーズⅠ,Ⅱ)についてランダム化比較試験をおこなってみたそうな。

2017年9月28日

nature.com 低周波電磁場で脳卒中治療


An open-label, one-arm, dose-escalation study to evaluate safety and tolerability of extremely low frequency magnetic fields in acute ischemic stroke.
2017  9月  イタリア
おおくの動物実験で 低周波電磁場刺激が虚血状態にある脳神経を保護し 梗塞や炎症 細胞死を抑える効果がしめされている。

脳卒中患者での実験はまだないので安全性確認をかねてやってみたそうな。


発症から48時間以内の脳卒中患者6人の虚血部位へ向けてコイルをあて、1日に1回45分間または120分間の低周波(75Hz)電磁場パルス照射を5日間つづけた。

その強度分布はコイルの形状と線量測定の手法にならって推定した。


次のようになった。

・有害事象はなかった。

・すべての患者で臨床症状が改善した。

・1ヶ月後、45分間刺激の3人のうち1人と120分間刺激の3人すべてで梗塞サイズが小さくなっていた。

・脳内の磁界強度は1mTと推定され、先行する研究から生物学的変化を起こすに足る強さと考えられた。

低周波電磁場療法は安全で実行可能なものだった。ランダム化比較試験が期待される、


というおはなし。
図:低周波電磁場の影響範囲

感想:

こっち↓のほうが一足早かったのかな。
低周波電磁界療法で脳卒中リハビリ

2017年9月27日

2年間の再発率と脳卒中の種類


Hospital-Based Study of the Frequency and Risk Factors of Stroke Recurrence in Two Years in China.
2017  9月  中国

脳卒中は死亡や障害のおおきな原因ではあるが、その再発はより重大な問題になりうる。

脳卒中後2年間の再発頻度と関連要因を種類別に大規模にしらべてみたそうな。


2007-2010、109の病院の脳卒中患者10万人あまりについてしらべたところ、


次のことがわかった。

・2年間の再発者の割合は、くも膜下出血3.80%、脳内出血5.31%、脳梗塞8.71% だった。

・再発者のうち、くも膜下出血の54.11%、脳内出血の60.42%、脳梗塞の92.92%は初回とおなじ種類の脳卒中だった。

・くも膜下出血でクリップやコイル手術をした者は再発しにくかったが、1度再発すると何度も再発した。また、高血圧は再発のリスク要因だった。

・脳内出血では心房細動があると再発しやすかった。

・脳梗塞では1度再発が起きると何度も再発した。

脳卒中の再発頻度や関連要因は種類によりことなっていた、


というおはなし。
図:再発と再入院

感想:

動脈にコブができやすい人の血管壁を少しつまんだくらいで「解決!」という考え方がとても21世紀とは思えない。

あと、心房細動に抗血栓薬あたえて脳出血そしてまた脳出血の連鎖も気になる。

2017年9月26日

パチンカーの脳卒中予後


Relationship between Stroke Events during Pachinko Play and Prognosis.
2017  9月  日本

パチンコをやってる最中に脳卒中になった患者の予後をしらべてみたそうな。


2003-2012の脳卒中患者2075人についてその記録から発症時にパチンコ中だった者を抽出した。

退院時のグラスゴー転帰尺度と死亡率を非パチンコプレイヤーとくらべたところ、


次のことがわかった。
・パチンコプレイヤーには高血圧と現在喫煙者がおおかった。

・しかし退院時の回復度に両グループで違いはなかった。

パチンコ中に脳卒中を発症した患者には高血圧や喫煙者が多かったが、パチンコそれ自体が予後決定要因とはいえなかった、


というおはなし。
図:パチンコで脳卒中

感想:

パチンコと病気の研究ってたくさんあるかとおもって検索したら、 ない。

パチンコはギャンブルかというとそうではないようだしぃ、、とらえどころがなくてテーマにしにくいんだろね。

2017年9月25日

メンタルプラクティスと脳卒中患者のQoL


The influences of the mental practice on the quality of life of the stroke patients.
2017  9月  韓国

実際の運動をせずにその動作を頭のなかだけで繰り返しイメージするメンタルプラクティスは 脳卒中患者への応用がおおく報告されている。しかし生活の質(QoL)への効果についてはくわしい研究がすくないので実験してみたそうな。


発症後6ヶ月以上経つ脳卒中片麻痺患者で、認知機能が正常で、イメージ明瞭性が標準的(Vividness of Movement Imagery Questionnaire ~2.26)な32人をつぎの2グループに分けた。

*作業療法20分+メンタルプラクティス10分
*作業療法30分のみ

これを週5日x4週間 継続した。

メンタルプラクティスは、静かな環境で、本のページめくり、豆つまみ、カップ積みの各動作をイメージさせた。

脳卒中患者の生活の質を12項目x各5段階のSS-QoL評価したところ、


次のようになった。

・生活の質SS-QoLはメンタルプラクティスグループで明らかにすぐれていた。

・項目別では身の回りの世話ができる能力と上肢機能の改善がいちじるしかった。

メンタルプラクティスが脳卒中患者の生活の質の改善につながることがわかった、


というおはなし。
図:メンタルプラクティスで脳卒中のQoL改善

感想:

たとえ想像の世界であっても繰り返し成功体験を積むと幸せになる。

その逆もしかりで、努力すれば治ると思い込み「できない体験」を重ねているとどんどん不幸になる。

2017年9月24日

脳卒中後の運動と認知機能


Effects of Physical Activity on Poststroke Cognitive Function.
2017  9月  オーストラリア

脳卒中後の身体活動トレーニングには 認知機能の維持 回復の効果が期待できる。実際 すくなからぬ数の研究がそれをサポートするデータを示している。

これらの研究をまとめて効果的なトレーニングの種類、期間、時期、認知機能的側面についてしらべてみたそうな。


関係するランダム化比較試験を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者736人を含む14の研究がみつかった。

・ぜんたいとして身体活動トレーニングは脳卒中患者の認知パフォーマンスに良い影響があった。

・エアロビック(有酸素運動)と筋力負荷トレーニングを組み合わせたときにもっとも認知ゲインが大きく、

・慢性期患者であっても認知パフォーマンスの改善が得られた。

・注意力と処理速度で強くはないが明らかな効果が見られたいっぽう、

・実行機能や作業記憶では有意な効果は確認できなかった。

脳卒中後の身体活動トレーニングで認知パフォーマンスが強化された。この効果は12週間ほどで現れ 複数トレーニングの組み合わせで最大化し、慢性期の患者にも効果的だった、


というおはなし。
図:脳卒中後の身体活動トレーニングの認知パフォーマンス効果

感想:

慢性期でもOKってところがやる気にさせる。

2017年9月23日

脳内出血をやったこどもの知能2年後


Cognitive functioning over 2 years after intracerebral hemorrhage in school-aged children.
2017  9月  アメリカ
脳内出血を経験したこどもの調査は感覚運動機能の回復にしぼったものがおおく 認知機能への長期の影響をしらべた研究はすくない。

通学年齢のこども脳内出血経験者を2年間フォローしてみたそうな。


6-16歳、中央値13歳の脳内出血経験の男女7人について3、12、24ヶ月後の神経的予後と認知機能(ウェクスラー式知能検査)を測定したところ、


次のことがわかった。

・感覚運動機能は順調に回復してほとんど障害のないレベルになった。

・言語理解と知覚推理能力は回復傾向にあったものの、

・処理速度と作業記憶のレベルは低く、

・特に作業記憶については同年齢の子供をあきらかに下回っていた。

脳内出血を経験した子供の認知機能は早くからフォローして適切なサポートが必要だろう、


というおはなし。
図:子供の脳内出血後の年齢調整作業記憶スコア

感想:

脳の可塑性あふれる子供ですら年々あたまのはたらきがトロくなってゆくのだとしたら、成人脳卒中経験者がどんなに見栄をはってもそれを隠し通せるものではないわな。

2017年9月22日

活動的だったひとの脳卒中予後は


Pre-stroke physical activity is associated with fewer post-stroke complications, lower mortality, and a better long-term outcome.
2017  9月  台湾

定期的で適度な運動は脳卒中予防になる。しかしそういった運動習慣が脳卒中のあとにおよぼす影響についての研究はすくない。

そこで、4万人ぶんの脳卒中患者データベースをつかって発症前の運動習慣と脳卒中後の合併症、長期的回復度との関連をしらべてみたそうな。


2006-2009の脳卒中患者39835人の記録を解析した。

仕事や家事 通勤をのぞいた余暇時間に、積極的な身体活動を 1回30分間x週3回x6ヶ月以上継続していた者を「活動的」と定義した。


次のことがわかった。

・活動的か否かで年齢や脳卒中の種類にかたよりはなかった。

・活動的だった患者は入院時の神経症状が軽く、

・合併症も少なく院内死亡率も低くかった。ただしICU滞在期間に差はなかった。

・1,3,6ヶ月後の機能的回復度も活動的だった患者があきらかに高かった。

脳卒中前に余暇時間を活動的に過ごしていた患者は性別によらず症状が軽く合併症も少なく、低死亡率で6ヶ月後の回復も良好だった、


というおはなし。
図:余暇時間を活動的にすごす

感想:

どうして労働時間の活動を含めないのかな?
仕事だけでクタクタなのにわざわざ運動しようと考える意識の高さが気持ちわるい。

出勤まえに皇居をジョギングするような人間にだけはなるまいと思っていたら脳が血を吹いてこのありさま。

2017年9月21日

足湯の慢性期脳卒中への心理生理学的効果


The effects of aroma massage and foot bath on psychophysiological response in stroke patients.
2017  9月  韓国

脳卒中を経験すると筋肉の麻痺や認知能力の低下から多くのストレスを受け 気分や感情の異常、睡眠の障害などがおきやすくなる。

これらの問題にたいしてマッサージや足湯の効果を検証してみたそうな。


発症から6ヶ月-2年の脳卒中患者14人をつぎの2グループに分けた。

*マッサージ+足湯+理学療法
*理学療法のみ

マッサージはアロマエッセンシャルオイルを使用して背中を揉む。足湯は40℃で足首まで30分間。

1週間後 各種ストレス度と体温や睡眠満足度を比較したところ、


次のようになった。

・身体的、心理的ストレスの度合いはマッサージ+足湯グループで明らかに低く、

・体温や睡眠満足度もはっきりと高かった。

慢性期脳卒中患者へのアロママッサージと足湯セラピーで おおくのストレスが癒され睡眠満足度も改善した、


というおはなし。
図:足湯する脳卒中経験者

感想:

こんな やらなくてもわかる実験をなぜ行ったのか?...考えた。

理学療法の専門誌なので、ストレス測定が主目的とは考えにくい。
じつは歩行機能や他の運動能力も測定したのだが アロママッサージ+足湯グループであまりにも改善度が高すぎた。そのまま発表してしまうと理学療法の立場が危うくなると考えた。そして歩行機能測定は無かったことにしてストレスのはなしだけでまとめた。

そういうことかな。

2017年9月20日

熊本地震のあとの脳梗塞の特徴


Clinical characteristics of patients with ischemic stroke following the 2016 Kumamoto earthquake.
2017  9月  日本

おおきな震災のあとには深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症、脳卒中などが増加するという報告がすくなからずある。

2016年4月の熊本地震のあとの脳梗塞患者数と彼らの特徴についてしらべてみたそうな。


震災のあとに済生会熊本病院に入院した脳梗塞患者について、過去の同時期の患者と詳しく比べたところ、


次のことがわかった。

・熊本地震のあと12週間に入院した脳梗塞患者は194人で、過去3年間の同時期の平均は165人だった。

・震災前後で患者の病歴や身体的特徴、血液検査の結果に違いはなかった。

・避難所もしくは自家用車での寝泊まり経験のある患者はそれぞれ 13%と28%だった。

・27%の患者は震災直後の2週間を避難所でくらしていた。

熊本地震のあと脳梗塞患者が増加したが、それ以前の患者と臨床上あきらかな違いはみあたらなかった、


というおはなし。
図:熊本地震前後の脳梗塞件数

感想:

避難所や車中泊が原因って言いたかったみたいなんだけど、患者がすくなすぎてあきらめたようだ。

2017年9月19日

ブログから読み取る脳卒中後の人生


Using Blogs to explore the lived experience of life after Stroke: 'A journey of discovery I never wanted to take.
2017  9月  イギリス

脳卒中患者の生の体験談を収集する情報源のひとつとして「ブログ」が考えられる。

そこで語られる内容とブログの役割について実際に調査 分析してみたそうな。


2016時点で、脳卒中経験者が運営し、脳卒中に関連する内容で、1年以上の継続実績があって、現在もアクティブな、イギリスまたはアメリカの、英語の、会員制でない、日記形式 のブログを検索し厳選した。

内容を主題分析したところ、


次のことがわかった。
・8つのブログが分析対象となった。

・次の8つのサブテーマが見つかった。1)自己との対話、 2)感情、3)変化、4)脳卒中の影響、5)健康管理、6)世界の中で、7)人間関係、8)リハビリ

・そしてメインテーマが2つあって、*内面での自己との関係性と、*外の世界との関係性、これら2つの視点。

・彼らのおおくは 失った生活を嘆き、回復して自立を取り戻すために励んでいた。

脳卒中経験者がそれまでの生活からあらたな状況へ適応することは容易ではなく、内面的、外面的関係性を徐々に変化させてゆく必要がある。失った過去を嘆くよりも いまを生き生きと生活する重要性を他者と分かち合う手段が ブログにはある、


というおはなし。
図:脳卒中経験者のブログ

感想:

なるほど脳卒中やるとじぶんとの対話がとても増えて、どんどん内側に落ち込んでいってしまう。それがわるいこととは思わないけど、そとの世界とのバランスをとるためにブログが役に立っている実感がある。


それにしてもアメリカとイギリスあわせたら3億人くらいいるのに、まともな脳卒中ブログは8件って 選別基準厳しすぎやしないか?

日本の現在アクティブな脳卒中ブログは、多めに見積もってもせいぜい100。

通院中の脳卒中患者がおよそ100万人だから、1万人に1人がブログをやってることになる。

1万人に1人の変人が発信する情報が参考になるかは疑わしい。けれどブログの数は8年前に比べるとおおいに増えたので、気に入ったものだけ見ればいい。

2017年9月18日

脳卒中の回復に本当に適した運動強度とは


Effects of High- Versus Moderate-Intensity Training on Neuroplasticity and Functional Recovery After Focal Ischemia
2017  9月  フランス

脳卒中からの回復には中強度の有酸素運動(MOD)が適しているとおおくの実験が示しているいっぽう、その効果は今ひとつである。

高強度のインターバルトレーニング(HIT)がより効果的であるという報告があるので動物で実験してみたそうな。

2017年9月17日

血液サラサラのおくすりで脳内出血が急成長する


Ultra-early hematoma growth in antithrombotic pretreated patients with intracerebral hemorrhage.
2017  9月  スペイン

抗凝固薬が脳内出血の血腫増大におよぼす影響についてはよく研究されているいっぽう、抗血小板薬のそれについては じつはよくわかっていない。

そこで、抗血栓薬治療の有無と脳内出血の予後におおきく関係する「超早期の血腫増大」との関連をくわしくしらべてみたそうな。


発症時刻のあきらかな脳内出血患者について最初のCTまでの時間(h)で血腫体積(mL)を割った値を「超早期血腫増大(uHG)」と定義した。

発症前の抗血小板薬、抗凝固薬の使用の有無と、24時間、3ヶ月後の死亡率との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・197人の脳内出血患者のうち25.4%が抗血小板薬(おもにアスピリン)、18.8%が抗凝固薬を使用していた。

・uHGの中央値は、抗血小板薬使用者で19.7mL/h、抗凝固薬使用者では16.2mL/h、非使用者は8.4mL/h だった。

・uHGは 24時間死亡者では42.1mL/h 、3ヶ月死亡者は28.0mL/hで、生存者の3.9mL/hよりずっと高かった。

・脳内出血の重症度や元の状態を考慮に入れるとuHGは3ヶ月以内に死亡するあきらかな要因の1つだった。

抗血栓薬治療をうけていた脳内出血患者の超早期血腫増大スピードは非常におおきく、高死亡率の理由と考えられた、


というおはなし。
図:抗血栓療法の脳内出血の血腫増大スピードと死亡

感想:

上の表、脳内出血死亡患者にしめる「血液サラサラのおくすり」使用者が20/24=8割って高すぎね?
脳内出血の半数以上が抗血栓薬を使っていた

[抗血小板薬 脳内出血]の関連記事

2017年9月16日

脳卒中のあとのむずむず脚症候群と生活の質


Restless legs syndrome after high-risk TIA and minor stroke: association with reduced quality of life.
2017  9月  カナダ

むずむず脚症候群は西洋人の3.2-11.1%にみられ とくに女性と高齢者におおい。

脳卒中など心血管疾患との関連が数多く報告されており、大脳基底核や脳幹部の梗塞患者におきやすいとされる。

脳卒中後のむずむず脚症候群と生活の質(QoL)との関連についての研究はないので しらべてみたそうな。


軽い脳卒中またはTIAの発症から14日以内の患者94人について、むずむず脚症候群の有無およびQoLを6ヶ月間ほどフォローしたところ、


次のことがわかった。
・23人(24.4%)がむずむず脚症候群(RLS)と診断された。

・11人はあらたにRLSになり、12人は脳卒中まえからRLSだった。

・RLSの脳卒中患者はフォロー期間とおしてQoLが低く、うつ症状もみられた。

・この傾向は機能回復度やうつ症状に依らなかった。

脳卒中後のむずむず脚症候群はめずらしくなく、機能回復度によらず生活の質を低下させた、


というおはなし。
図:脳卒中後のむずむず脚症候群と生活の質

感想:

名前のひびきがおもしろいだけでチヤホヤされている病気だと思う。1日24時間つづく左手足のしびれ感とはきっと比べ物にならないだろう。

[むずむず脚症候群]の関連記事

2017年9月15日

HDLコレステロールが高いと脳内出血


Association of high-density lipoprotein cholesterol concentration with different types of stroke and coronary heart disease: The Japan Public Health Center-based prospective (JPHC) study.
2017  9月  日本

HDLコレステロールはアテローム性動脈硬化を防ぐとされていて、実際 HDLコレステロール値が高いと冠動脈疾患がすくなくなることがわかっている。

しかし脳卒中との関連はあきらかになっていないので、特にアジア人についてしらべてみたそうな。


40-69歳の日本人30736人を15年間ほどフォローした結果、


次のことがわかった。

・この間に296の冠動脈疾患と1712の脳卒中が起きた。

・HDLコレステロール値が低いと男女ともに冠動脈疾患になりやすかった。

・同様に HDLコレステロール値が低い男性は脳卒中リスクがやや上昇し、

・特にラクナ梗塞ではこの傾向が顕著で、男女ともにそのリスクは2倍ちかくになった。

・しかし女性の脳内出血リスクはHDLが高いほど高かった。

HDLコレステロールが高いと冠動脈疾患やラクナ梗塞は減るいっぽう、女性の脳内出血は増えた。HDLコレステロールにはアテローム性動脈硬化を防ぐ以外の働きがあるようだ、


というおはなし。
図:善玉悪玉コレステロール

感想:

HDLって善人のふりした悪者なんだよね、、
悪玉善玉比 L/Hが低いと脳内出血で死ぬことが明らかに

2017年9月14日

脳梗塞につよくなるTIAの条件とは


Prior transient ischemic attacks may have a neuroprotective effect in patients with ischemic stroke.
2017  9月  中国

一過性脳虚血発作(TIA)のあとは脳梗塞がおきやすく、脳梗塞患者の15%は直前の1ヶ月にTIAを経験しているという。

いっぽう動物実験では 脳梗塞まえのTIAで虚血耐性ができることがわかっていて、臨床の報告も増えてきている。

そこで、TIA経験とその後の脳梗塞との関連をくわしくしらべてみたそうな。


脳梗塞患者221人についてTIA経験の有無で2グループに分け、

TIAの長さ(10分未満、10-60分、60分より長)、
TIAの頻度(週に1回、2-3回、3回より多)、
TIAから脳卒中までの時間(1週間未満、1-4週間、4週間より長)

と入院時の重症度および3ヶ月後の回復度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・59.7%の脳梗塞患者が発症前にTIAを経験していた。

・入院時の神経症状の重さは両グループで差はなかった。

・回復良好患者の割合は、59.09% vs. 43.82% でTIA経験ありグループがおおかった。

・特にTIAが持続時間60分未満で週に3回未満、4週間以内の脳梗塞のときにあきらかに回復がよかった。

TIA経験にはその後の脳梗塞から神経を護る効果があるようだ。とくにTIAが低頻度、短時間、脳梗塞まで間もない場合にその効果がつよかった、


というおはなし。
図:TIA経験ありの脳卒中患者の回復

感想:

病院にきたTIA患者に
『よかったね、もうすぐ脳梗塞になるかもしれないけど このおかげで回復しやすくなったはずだよ』って励ましてあげられる。
TIAのあとの脳梗塞は軽い はほんとうか?

2017年9月13日

禁煙が脳卒中の再発を予防するはほんとう?


Smoking cessation and outcome after ischemic stroke or TIA
2017  9月  アメリカ

脳卒中による死亡はアメリカで5番目、世界では2番目におおく その12-37%にたばこの喫煙が関係している。

いちど脳卒中を経験した再発リスクの高い患者は禁煙することが望ましいと考えられており、アメリカ心臓協会のガイドラインでは推奨度トップの「ClassⅠ」に分類されている。

しかしそのエビデンスレベルは「C」であり、じつは明らかな根拠がない。

そこで禁煙による脳卒中の再発予防効果を 多くの被験者で確かめてみたそうな。


脳梗塞やTIAを経験した男女3876人について、喫煙状況、脳卒中や心筋梗塞の再発、死亡を約5年間フォローしたところ、


次のことがわかった。

・発症時、28%が現在喫煙者だった。

・その後 42%が禁煙した。

・禁煙者のうち5年間に再発または死亡したケースは15.7%で、禁煙しなかった場合は22.6%だった。

5年間のランダム化比較試験により脳梗塞やTIAの後の禁煙で 再発リスクがあきらかに下がることがわかった、


というおはなし。
図:禁煙の脳卒中再発予防効果

感想:

喫煙の影響って、脳梗塞とくも膜下出血でちがうのかな。
禁煙で脳動脈瘤の破裂を防げるのか?

2017年9月12日

脳卒中が回復する食塩の条件がわかった!


Intake of potassium- and magnesium-enriched salt improves functional outcome after stroke: a randomized, multicenter, double-blind controlled trial.
2017  9月  台湾

ナトリウムをカリウムで置き換えた食塩の使用で脳血管疾患リスクが50%以上低下したという報告がある。

いっぽう、動物実験でマグネシウムの神経保護効果が確認されている。

台湾人のカリウムとマグネシウムの摂取量は基準をおおきく下回っていることから、これらの比率を高めた食塩を使用することで脳卒中患者の回復をうながすことができるかもしれないと考え、ランダム化比較試験をおこなったそうな。


脳卒中患者291人について、

*通常のナトリウム食塩
*カリウム強化食塩
*カリウム+マグネシウム強化食塩

の3グループに分けて、3ヶ月後、6ヶ月後の神経症状と生活自立度を複数の指標で測定した。

カリウムとマグネシウムの強化割合は台湾人の平均摂取量と食事基準量のギャップが埋まるよう設計した。


次のようになった。

・6ヶ月後、完全回復した患者の割合はカリウム+マグネシウム強化食塩のグループで明らかにおおかった。

・そのオッズ比は、ナトリウム食塩1とすると、カリウム強化食塩1.58、カリウム+マグネシウム強化食塩2.25 だった。

食事基準量を満たすようにカリウムとマグネシウムを強化した食塩の使用で脳卒中の回復をおおいに促すことができる


というおはなし。
図:マグネシウム強化食塩の脳卒中治療効果

感想:

読むとマグネシウムはもっと強化する余地があるみたいで、

成分比的にまさにぴったりな商品をみつけた。
↓↓↓
まぐねしお(沖縄県の会社)

2017年9月11日

くも膜下出血の5年後


Life situation 5 years after subarachnoid haemorrhage.
2017  9月  スウェーデン

くも膜下出血は初月の死亡率が30-60%と高く、2年経っても認知 記憶障害 うつ 不安の問題が残るという。

そこで 5年後の状態についてしらべてみたそうな。


発症から5年経ったくも膜下出血経験者42人にアンケートを送付したところ、


次のことがわかった。

・26人(62%:平均年齢59)から回答を得た。

・全体的に健康関連QoLが低く、不安うつスコアがよくなかった。

・多くが感情、疲労、記憶、実行機能に問題を抱えているいっぽう、身体機能上の問題はほとんどなかった。

・ほぼすべての回答者が社会参加度におおむねまんぞくしていて、64%は日常生活が自立できていた。

くも膜下出血から5年後、彼らは身体機能上の問題よりも 見た目ではわからない障害をかかえていた。しかし社会参加にかんしては不満はないようだった、


というおはなし。
図:くも膜下出血5年後の社会参加

感想:

くも膜下出血って激しい頭痛と高い死亡率のイメージだけで、脳梗塞や脳内出血にありがちな身体障害のはなしをあまりきかない。
生き残ったくも膜下出血はハンパなく回復する

2017年9月10日

カイロプラティックが原因の頸部動脈解離


Cervical artery dissection related to chiropractic manipulation: One institution's experience.
2017  9月  アメリカ

2012のランダム化比較試験では頸部の痛みにたいするカイロプラティックの効果は理学療法を上回るものではなかった。

さらに 画像診断の進歩により カイロプラティックの頚椎操作と動脈解離の関連がつよく疑われるようになってきた。

カイロプラティックが関係する頸部動脈解離がどのくらいの割合で起きているものかしらべてみたそうな。


聖フランシス医療センターの2008-2012の頸部動脈解離患者141人の記録を見直したところ、


次のことがわかった。

・12人が発症直前にカイロプラティックを受けていた。

・この12人は計16箇所の頸部動脈解離を生じており、全員が急性脳卒中の症状を呈していた。

・このうち9人をフォローしたところ、8人は後遺症があり 1人はこれが原因で死亡していた。

頸部動脈解離の患者141人のうち12人が直前にカイロプラティックを受けていた、


というおはなし。

図:カイロプラティックの頚椎操作で頸部動脈解離

感想:

首の痛みを訴えカイロプラクターを訪ねる

翌日に脳卒中で入院

首の痛みなどというささいな問題から解放される、、

そういうことかな。
カイロプラクティックで脳卒中の件 Twitterでの評判は...

[動画]カイロプラクティックに行って脳梗塞で死んでしまった若者にまつわるストーリー

カイロや整体院で首をボキボキッってやるやつ あれ脳卒中のもとかもよ

2017年9月9日

失語症に良いツボと刺激の条件とは


An fMRI study of the effects on normal language areas when acupuncturing the Tongli (HT5) and Xuanzhong (GB39) acupoints.
2017  9月  中国

伝統中国医学では脳卒中で失語になった患者への鍼治療が試みられている。

しかし脳の言語野を活性化するためにはどのツボが適しているのか、左右のどちらのツボを刺激するべきかを明らかにした研究はまだない。

そこで 失語症治療によく使われる2つのツボ、通里(つうり:HT5)と懸鐘(けんしょう:DB39)についてその組み合わせと脳皮質の反応をしらべてみたそうな。


右利きの10人の健常者について鍼刺激中の脳の活動状態をfMRIで観察した。

ツボ HT5とGB39の組み合わせと、右または左のみの鍼刺激をおこなった。

次のようになった。

・GB39を組み合わせずに、右のHT5を刺激したときにのみ、

・両側の言語関連の皮質が複数箇所 活発になった。

・このとき左脳側の活動範囲がやや広かった。

右のツボ通里HT5への鍼刺激は 言語関連の両側の脳皮質をひろく活性化した。失語症治療につかえるかも、


というおはなし。
図:ツボHT5の刺激で左右の言語野が活性化
図:失語に効くツボHT5

感想:

これ↓も似たような位置にあるね。
失語症に効くツボを刺激したら本当に脳が反応した

2017年9月8日

短下肢装具はやっぱり特注品がいいの?


Bespoke versus off-the-shelf ankle-foot orthosis for people with stroke: randomized controlled trial.
2017  8月  イギリス

脳卒中経験者が使う「短下肢装具」について、個人にあわせてあつらえた特注品(ビスポーク)と既製品のどちらが快適かつ安全で効果的なのかについての研究はほとんどないのでしらべてみたそうな。


脳卒中経験者139人について特注品グループ69人と既製品グループ70人にわけて
6週間後、12週間後の満足度、有害事象、移動能力、転倒恐怖心、歩行スピード、歩幅などを評価し 比較したところ、


次のことがわかった。

・長期的満足度は 72% vs. 64%で特注品グループが高かったが統計的有意な違いではなかった。

・短期的な転倒恐怖心が既製品グループで低かったことを除くと、

・両グループで各評価項目の明らかな差はなかった。

短下肢装具を選ぶに際し、まずは既製品をつかってみてどうしても合わない場合にのみ特注品をつかうべきだろう、


というおはなし。

図:短下肢装具は既製品か特注品か?

感想:

「できるやつはオーダースーツ、吊るしはダメ」って はなしをよく聞くけど、がんばるとこそこじゃないよねと思う。

2017年9月7日

脳卒中後のがんは6ヶ月以内にみつかりすでに手遅れ


ESMO 2017 Press Release: Some Stroke Survivors May Have Underlying Cancer
2017  9月  スペイン

脳卒中患者の検死解剖からがんがみつかることがあり その関連が指摘されている。

そこで 脳卒中とがんの関連をしらべてみたそうな。
今週の欧州臨床腫瘍学会でのプレスリリースから。


脳卒中患者381人についてがんの発生を18ヶ月間フォローしたところ、


次のことがわかった。
・脳卒中患者の7.6%が がんと診断され そのおおくが大腸がん、肺がん、前立腺がんで、一般人のがん発生率4.5%よりも高かった。

・がんが見つかるまでの平均期間は6ヶ月で、がんがみつかったうちの62%の患者は転移もしくは進行した状態だった。

・76歳より高齢、フィブリノゲンが高い、ヘモグロビンが低い、が がんと関連していた。

脳卒中経験者のがん発生率は一般人のおよそ2倍で、6ヶ月以内に進行した状態で発見されることがおおかった。脳卒中がおきた時点で無症候性のがんがすでに存在していたのかも、



というおはなし。
図:がんの告知

感想:

おもに脳梗塞のばあいなんだよね。
がんの宣告を受けると脳梗塞になる

軽い脳梗塞とホッとしていたのも束の間 実はガンでしたと告げられる患者の割合と見分け方

若い脳梗塞患者でガンで亡くなってしまう人の特徴

なぜ脳梗塞患者はガンになりやすいのか

2017年9月6日

禁煙で脳動脈瘤の破裂を防げるのか?


Association of intracranial aneurysm rupture with smoking duration, intensity, and cessation
2017  8月  アメリカ

脳動脈瘤破裂のくも膜下出血は死亡率が45%にものぼる。

脳動脈瘤が破裂するもっともおおきな要因の1つとして喫煙が考えられており、実際 くも膜下出血患者の喫煙率は一般人の2倍以上という報告もある。

そこで脳動脈瘤の破裂と喫煙習慣との関連について大規模にしらべてみたそうな。


1990-2016の脳動脈瘤を計6411個もつ4701人の患者の記録を解析したところ、


次のことがわかった。
・現在喫煙者>喫煙経験者>非喫煙者の順に脳動脈瘤が破裂しやすかった。

・喫煙年数が長く1日の喫煙量がおおいほど破裂しやすかった。

・しかし禁煙期間との関連は確認できなかった。

たばこの喫煙習慣と量、期間が脳動脈瘤の破裂とあきらかに関連していた。しかも禁煙したからといってそのリスクが低下するわけでもなかった、


というおはなし。
図:1日のたばこ量と脳動脈瘤破裂率

感想:

半端な禁煙は効果ないみたいだから、最後まで吸い続けてもらいたい。

[くも膜下出血 喫煙]の関連記事

2017年9月5日

トイレで起きやすい脳卒中の種類と頻度


Clinical characteristics of stroke occurring in the toilet: Are older adults more vulnerable?
2017  8月  日本

排便や排尿は 交感神経と副交感神経の通常とは異なるバランスのうえで行われるため血流動態におおきな変化をもたらし肺塞栓症などの血管イベントのきっかけになると言われている。

いっぽう脳卒中との関連はよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2011-2015の脳卒中患者1939人ぶんの記録から、発症時にトイレ中だったものを抽出し、入院に至った経緯を調査したところ、


次のことがわかった。
・108人(脳梗塞41、脳内出血37、くも膜下出血30)が脳卒中発症時にトイレ中だった。

・発症時のトイレ中率は、くも膜下出血が14.3%で最も高く、次いで脳内出血が7.3%だった。

・トイレ中脳梗塞は夜間に多かった。

・トイレ中脳梗塞の種類では 心原性タイプがあきらかに多かった。

・発症時、トイレから助けを呼ぶことができたのは40%未満だった。

・高齢者のトイレ中では 脳出血よりも脳梗塞があきらかに多かった。

トイレ中に脳卒中をおこす患者の割合は全体の5.6%で、特にくも膜下出血がおきやすかった。心房細動がある高齢者はトイレ中の心原性脳梗塞にも注意が必要だろう、


というおはなし。
図:トイレ中の脳卒中で助けを呼べた割合

感想:

他人がとなりに立つとおしっこが出なくなる。これも交感神経がどうのこうのなのかな。

2017年9月4日

アスピリンの重大出血リスクはワルファリンと同じ


Bleeding risk of antiplatelet drugs compared with oral anticoagulants in older patients with atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis.
2017  7月  フランス

一般に抗血小板薬の出血リスクは抗凝固薬よりも低いと考えられている。

そのため心房細動の高齢者や抗凝固薬の禁忌になる患者への代替薬として抗血小板薬が長期に使用されることがよくある。

ところが命にかかわるような重大出血事象の頻度は抗血小板薬と抗凝固薬とで同じであるとする報告がいくつか現れてきている。

そこで、これまでの研究をまとめて65歳以上の高齢者についてこのあたりを確かめてみたそうな。


関係する過去の研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・ランダム化比較試験7件を含む11の研究が見つかった。

・アスピリンやクロピドグレルの重大出血のリスクはワルファリンのそれと明らかな差がなかった、

・ただし頭蓋内出血の頻度は低かった。

・総死亡率も差がなかった。

アスピリンやクロピドグレルを飲んでいる高齢者の 命にかかわるような重大出血のリスクはワルファリンと同程度だった、


というおはなし。
図:アスピリン、クロピドグレル vs ワルファリン

感想:

なるほど↓、、
アスピリンを長く使うとワルファリンよりも出血する

抗血小板薬を複数使っていると脳内出血で死ぬ

2017年9月3日

運転中に脳卒中になり事故に至る頻度


Stroke while driving: Frequency and association with automobile accidents.
2017  8月  日本

自動車の運転中に脳卒中を起こす頻度と、それに関連した事故をくわしくしらべてみたそうな。


2011-2016の脳卒中患者2145人(脳梗塞1301、脳内出血585、くも膜下出血259)について発症時の自動車運転状況と その後の対応について調査したところ、


次のことがわかった。

・85人(脳梗塞63、脳内出血20、くも膜下出血2)が運転中に脳卒中をおこした。

・運転中に脳卒中を起こす率は、脳梗塞4.8%、脳内出血3.4%、くも膜下出血0.8%だった。

・運転者のおおくはそのまま運転を続けるか路肩に停車した。

・しかし14人(16%)は自動車事故に至った。

・彼らのおおくは重度の脳卒中により精神状態に変調をきたしていたと考えられた。

脳卒中患者の4.0%は自動車運転中に脳卒中を経験しており、そのうち16%が交通事故に至っていた、


というおはなし。
図:自動車運転中の脳卒中と事故

感想:

退院から1年後、十分に回復したとおもっていたがクラッチ操作ができなかった。しかたなく愛車を手放した。

マニュアル車はいまでも運転できる気がしない。

2017年9月2日

クルクミンが虚血から脳をまもるメカニズム


Curcumin prevents reperfusion injury following ischemic stroke in rats via inhibition of NF‑κB, ICAM-1, MMP-9 and caspase-3 expression.
2017  8月  タイ

脳梗塞の治療で詰まった血液を再還流すると炎症反応が生じて脳のダメージがおおきくなるといわれている。

ウコン(ターメリック)に含まれる黄色の成分クルクミンには抗炎症、抗酸化作用があり 脳卒中の梗塞体積や浮腫、血液脳関門の損傷を減少させるという報告がある。

このメカニズムをしらべてみたそうな。


人為的に脳虚血状態にしたネズミに1時間後、腹腔内にクルクミンを注射して血液を再還流した。

クルクミンの比較にコーン油のグループをつくり、脳組織の炎症関連、細胞死関連たんぱく質の発現を測定したところ、


次のようになった。

・クルクミングループで、炎症関連たんぱく質の NF‑κB, ICAM‑1,MMP‑9 が減少し、

・細胞死関連たんぱく質の caspase‑3 も減少していた。

・さらに梗塞のサイズ、浮腫、神経症状も小さかった。

クルクミンには脳を虚血→再還流時の損傷からまもるはたらきがある、


というおはなし。
図:クルクミンの脳梗塞治療効果

感想:

カレーがたべたくなってきたぞ。
クルクミンのクモ膜下出血治療効果について

2017年9月1日

アスピリンを長く使うとワルファリンよりも出血する


Long-term aspirin does not lower risk of stroke and increases bleeding risk in low risk atrial fibrillation ablation patients.
2017  8月  アメリカ

心房細動があると脳梗塞をおこしやすくなる。

カテーテルアブレーションで心房細動治療をすると脳梗塞を起こすリスクが大いにさがるため、血栓予防のためのワルファリンをやめて代わりにアスピリンを長期にわたり使用する習慣がある。
しかしこれにはあまり根拠がない。

そこでカテーテルアブレーションで心房細動を治療した患者へのアスピリン長期使用の影響をしらべてみたそうな。


心房細動でカテーテルアブレーション治療を行った患者4124人の記録から、
1年後、3年後の脳卒中、腸管出血、泌尿器出血とアスピリンやワルファリン使用との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・3年後、全体の5.9%はワルファリンを、18.6%がアスピリンを使用し、75.5%はどの薬も使用していなかった。

・脳卒中発生率は、ワルファリン 1.4%、アスピリン 3.0%、薬なし3.9%だった。

・腸管出血発生率は順に、0.8%、1.9%、1.1% だった。

・泌尿器出血は順に、1.7%、2.8%、2.1% だった。

・アスピリン使用グループではワルファリンや薬なしグループにくらべ明らかに脳卒中リスクが高かった。

カテーテルアブレーションで心房細動を治療した患者の長期アスピリン使用は、脳卒中予防になんの役にも立たないばかりかワルファリンよりも出血のリスクが高かった、


というおはなし。
図:AF治療患者へのアスピリンと腸管出血

感想:

ワルファリンは殺鼠剤にも使われるから出血力はアスピリンの比ではないとおもっていた。でも 何年も使うとアスピリンのほうが効いてくるんだな、、
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